今秋の欧州遠征第3戦で今季のテストマッチの最終戦となるイングランドとの対戦は、日本代表にとっては興味深い意味合いを持つ。

 今年、2027年ラグビーワールドカップへ向けてエディー・ジョーンズ体制が始動し、6月のテストマッチ第1戦で対戦したのがイングランドだった。新たに導入された『超速ラグビー』のコンセプトとともに若手中心のメンバー編成に切り替えて臨んだが、東京の国立競技場で行われた対戦では日本は17⁻52で敗れた。

 その試合を含めて、夏のアサヒスーパードライ・パシフィックネーションズカップなど、日本はここまでテストマッチ10戦を戦って4勝6敗。今季を締めくくる白星も望んでいるが、今季のここまでの成長を確認するには最適な相手だ。

SH斎藤直人は、「6月のイングランド戦から始まって10試合以上を重ねてきた。このチームが最初に戦った相手と戦えることで、この1年の成長がわかる」と話し、「どれだけ速くアタックを仕掛けられるか」「自分たちでモメンタムをいかに生み出すか」など、ここまでの積み上げを発揮したいと語った。

 今回の対戦へ、日本代表は36-20で勝利を収めた16日のウルグアイ戦から5人を変更。ウルグアイ戦ではメンバー外だった3選手のWTB長田智希、PR竹内柊平、NO8ファウルア・マキシが2試合ぶりに先発に戻った。

ツアー途中にSO立川理道(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)を負傷で欠き、本職不在のなかで10番はニコラス・マクカランが務める。CTBでのプレーが多い28歳は、ウルグアイ戦で後半半ばから出場してSOを務めた。ゲームキャプテンの斎藤とハーフでコンビを組み、チームを引っ張る。ウルグアイ戦で10番を務めた松永拓朗は15番に入る。

LOサナイラ・ワクァも前節のリザーブから今回は先発に加わり、5番に定着していたLOワーナー・ディアンズがウルグアイ戦後半のレッドカードで出場停止処分になった影響で、LOエピネリ・ウルイヴァイティが4番から5番にシフト。FL姫野和樹ら5人のポジションを変えた。

リザーブにはHO坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)の負傷で追加招集されたHO李承爀が入り、初キャップ獲得の機会を待つ。また、12日に追加招集された、バックローのベン・ガンターもリザーブに名を連ね、出場すれば昨年9月のイタリア戦以来となる。

ジョーンズ日本代表ヘッドコーチにとっては、かつて指揮を執った古巣の対戦となるが、試合へ向けて調整中の22日の練習を体調不良で遠巻きから長めるにとどめ、同日のメンバー発表会見を大事をとって欠席した。チーム関係者によると、試合での指揮には影響はないという。

会見に代わって登壇したニール・ハットリー日本代表コーチングコーディネーターは、試合メンバーについて「ベストな23人を選んだ。準備はできている。イングランドに勝っていけるチームだと信じている」と語った。

マクカランの10番での起用についても、ハットリーコーディネーターは練習でのパフォーマンスを反映させたと話して、「(マクカランは)ラグビーを良く理解して、斎藤との連携も良い」と評価した。

 日本とイングランドとの通算対戦成績は日本の12戦全敗。昨年9月のラグビーワールドカップでは12-34で敗れた。今回は今年6月の対戦以来の顔合わせだが、日本の先発の顔ぶれはその対戦から約半数が入れ替わった。

 一方のイングランドは、ここまでのオータムネーションズシリーズ3試合を本拠地のアリアンツスタジアムで戦い、11月2日のニュージーランド戦を22-24、同9日のオーストラリア戦を37-42、同16日の南アフリカ戦を20-29で落として、連敗は5となっている。連敗ストップへ日本戦での勝利が望まれている。

 日本も今遠征2戦目の16日のウルグアイ戦の勝利で、連勝での今季締めくくりを目指している。

齋藤は、「チームの雰囲気はポジティブ」と言い、「イングランドはセットピースとハイポールを中心に来ると思う。チームとして重視していて、大事な部分。対策している」と語った。

 ハットリー日本代表コーチングコーディネーターは、「イングランドは結果つながっていないが、良いチーム。良いラグビーをして接戦を演じている」と指摘。「我々は自分たちのアイデンティティを構築している最中だが、この試合でもそういうプレーを出して、日本らしくプレーしたい」と語った。

 イングランドは20-29で敗れた南アフリカ戦から先発2人を変更。オーストラリア戦で頭を負傷したために前節の南アフリカ戦を見送ったFLトム・カリーが戻り、FBジョージ・ファーバンクも15番で復帰した。また、リザーブには20歳のPR アッシャー・オポク=フォージュアが名を連ね、代表デビューを待つ。キャプテンはHO ジェイミー・ジョージが務める。

 日本はどんな戦いを見せるのか、注目だ。

日本代表イングランド代表戦試合登録メンバー:

1岡部崇人(横浜キヤノンイーグルス、7キャップ)
2原田 衛*(東芝ブレイブルーパス東京、10)
3竹内柊平(浦安D-Rocks、12)
4サナイラ・ワクァ(花園近鉄ライナーズ、9)
5エピネリ・ウルイヴァイティ(三菱重工相模原ダイナボアーズ、5)
6下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス、13)
7姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ、35)
8ファウルア・マキシ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、14)
9斎藤直人**(スタッド・トゥールーザン、23)
10 ニコラス・マクカラン(トヨタヴェルブリッツ、6)
11 ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京、16)
12シオサイア・フィフィタ(トヨタヴェルブリッツ、15)
13ディラン・ライリー*(埼玉パナソニックワイルドナイツ、27)
14長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ、16)
15松永拓朗(東芝ブレイブルーパス東京、3)
16李 承爀(三菱重工相模原ダイナボアーズ、0)
17森川由起乙(東京サントリーサンゴリアス、4)
18為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、9)
19秋山大地(トヨタヴェルブリッツ、1)
20テビタ・タタフ(ユニオン・ボルドー・ベグル、19)
21ベン・ガンター(埼玉パナソニックワイルドナイツ、8)
22藤原 忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、9)
23梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス、6)

注:**はゲームキャプテン、*は副キャプテン、所属のあとの数字はキャップ数

イングランド代表試合登録メンバー:

1エリス・ゲンジ
2ジェイミー・ジョージ*
3ウィル・スチュアート
4マロ・イトジェ
5ジョージ・マーティン
6トム・カリー
7サム・アンダーヒル
8ベン・アール
9ジャック・ヴァンポートヴリート
10マーカス・スミス
11オリー・スライとホーム
12ヘンリー・スレード
13オリー・ローレンス
14トミー・フリーマン
15ジョージ・ファーバンク
16ルーク・カーワン=ディっキー
17フィン・バクスター
18アッシャー・オポク=フォージュア
19ニック・イシークウェ
20チャンドラー・カニンガム=サウス
21ハリー・ランドール
22フィン・スミス
23トム・ローバック

注:* 印はキャプテン