今夏のパリオリンピックの盛り上がりを受けてドバイでスタートしたSVSN 2025新シーズンは開幕戦から熱戦となった。

女子決勝ではオーストラリアがオリンピック金メダリストのニュージーランドとの接戦を28-24で制し、Maddison Leviが大会のトライ記録を更新する活躍でチームをけん引し、ドバイ大会5連覇を達成した。

オーストラリアはプールAを3戦全勝で抜け、準々決勝ではオリンピック銀メダル獲得のカナダに39-0と圧勝。準決勝では英国を35-7で下して決勝へ進出していた。一方、プールCを3戦全勝トップで抜けたニュージーランドは、準々決勝でアイルランドに33-12で勝利。準決勝でフランスを28-14で下して決勝に駒を進めていた。

攻守にクオリティの高い戦いとなった決勝で、オーストラリアが開始4分までに2トライをマーク。Faith Nathanが試合開始早々にニュージーランドの守備を切り裂いて今週末で7本目のトライを決めると、直後にTeagan Leviがチーム2本目を決めてリードを奪った。

ニュージーランドもJorja MillerとRisi Pouri-Laneがインゴールに持ち込んで2点差に迫ったが、ハーフタイムを前にオーストラリアが新キャプテンIsabella Nasserのトライで21-12で折り返した。

後半が始まって間もなく、ニュージーランドはTheresa SetefanoとManaia Nukuの連続トライで24-21と逆転に成功したが、オーストラリアはMaddison Leviがラインブレーク。試合を決めるトライを決め、Tia Hindsが3本目のコンバージョンを成功させて、オーストラリアが勝利を手にした。

Isabella Nasserは、「言葉にならない。チームのみんなを誇りに思う。我々のチームは結びつきが強いが、今日は若手が力を見せてくれた。今季はこれからの試合でもそうしてくれると思う。ベストはこれからだ」と話した。

Maddison Leviが記録

今大会では女子の記録更新もあり、一週間前のアウォーズでHSBCワールドラグビー最優秀セブンズ選手賞を獲得したオーストラリアのMaddison Leviは、今回のドバイでの開幕ラウンドで6試合15トライと圧巻のパフォーマンスを披露。SVNSシリーズ単独大会でのトライ記録を樹立した。

また、アイルランドのAimee Leigh Murpy CroweはSVNSシリーズ200トライ目を刻み、オーストラリアのFaith Nathan はドバイ大会初日に100トライ目を挙げた。

女子3位はフランスで、英国を相手に後半選手2人がシンビンになる苦しい時間帯をしのいで15-12で勝利。ドバイ大会2連連続で3位に入った。

女子フランス主将のAnne-Cecile Ciofaniがトライ2本を決め、ハーフタイムを前に英国のGrace Cromptonに1本返されたが、後半早々にHawa Tounkaraが決めてフランスがリードを広げた。その後、2選手を欠くとLauren Torleyのトライで英国に3点差に詰め寄られたが、粘り強く逃げ切った。

5位はアイルランドに17-7で勝ったアメリカで、7位にはカナダに24-22で競り勝った日本が入った。9位は中国を24-17で下したブラジルで、スペインはフィジーに22-5で勝利して11位だった。

サクラセブンズ新体制で好スタート

 パリオリンピック後に新体制となったサクラセブンズ女子日本代表は、ワールドシリーズ初戦で好スタートを切った。

プールCでカナダに40-5、ニュージーランドに12-36で1勝1敗とした後、3戦目でブラジルに14⁻17と競り負けた。1勝2敗でカナダ、ブラジルと並んだが、ボーナスポイント1がモノを言い、2位で準々決勝に進出した。しかし、そこでプールBを2勝1敗の2位で突破した英国に0-26と完敗。7位決定戦へまわると、カナダと対戦した。

今大会2度目の対戦となったカナダには2度先行を許す苦しい展開となったが、内海春菜子がトライを決めて12-12とすると、前半終了直前に三枝千晃が5点を加えてコンバージョンも決まって19-12とリード。さらに後半、高橋夏未がラインを越えて24-12とした。日本はこの後、カナダにトライ2本を許して追い上げられたが2点差で逃げ切り、7位となった。

今大会4トライを挙げた三枝千晃は、「ベスト8を目標に戦い、7位で目標達成できてよかった。決勝トーナメントに進めたことは自信になった」と話したが、「ベスト4に行くためには、接点の激しさやチャンスをトライまでつなげる精度を上げることが必要」と指摘した。

チームは、パリ2024後にアシスタントコーチからヘッドコーチに昇格した兼松由香ヘッドコーチが指揮。シリーズ開幕から自分たちのラグビーを体現して勝ち、8強に入ることを主眼に準備してきたという指揮官は、「初めてワールドシリーズで戦う選手と、パリオリンピックまでいくつもの世界大会を経験してきた選手それぞれが、14分の1の責任を果たして目標を上回る順位で終えられた。感謝している」と話した。

また兼松ヘッドコーチは、「ワールドシリーズだからこその学びを得ることができた」と言い、「一つひとつの経験をサクラセブンズの財産にし、次の大会でさらに上位を目指して成長できるように準備したい」と話している。

男子決勝はフィジーがスペインに勝利

男子はオリンピック銀メダリストのフィジーがスペインに19-5で下して優勝し、2022年トゥールーズ大会以来22大会ぶりにタイトルを手にした。

フィジーはプールCを3戦3勝の1位で抜けると、準々決勝でオリンピック王者のフランスと対戦。緊迫感のある試合はフィジーが19-17で競り勝って4強へ進み、準決勝では昨季リーグステージ王者のアルゼンチンに43-21で勝利して決勝に進出していた。

スペインはフィジーと同プールを2勝1敗の2位で突破。準々決勝で英国に19-14、準決勝でニュージーランドに再び19-14で勝利して初の決勝に進出。2度の五輪金メダリストのフィジーには今大会プール戦で15-21と敗れていたが果敢に挑み、試合開始早々にPol Plaが先制トライをマーク。8分にFilipe Sauturagaが同点トライをマークするまで、フィジーにリードを奪っていた。

しかし、フィジーはSauturagaのトライ直後にJeremaia Matanaが5点、Sauturagaが2点を加えて均衡を破った。その後、試合終盤にもIlikimi Vunakigaがラインを越えて、Iowane Tebaがコンバージョンを成功させ、チームは試合終了直前にイエローカードも出されたが、14点リードを保って勝利した。

フィジーのOsea Kolinisau監督は、久しぶりのタイトル獲得に「長い間待っていた。これで肩の荷が下りる。選手にとってうれしいことだ」と喜んだ。

3位はアルゼンチンがニュージーランドに14-0の完封勝利。Matias OsadczukとAgustin Fragaがトライを決めた。 ニュージーランドは前半早々にイエローカードが出たのも響いた。

5位は、南アフリカに17-15で競り勝ったフランス、7位はオーストラリアが英国に17-12で勝利。9位は、ケニアを15-7で下したウルグアイで、11位はアメリカに19-12で肩アイルランド。いずれも僅差の試合だった。

シリーズ第2ラウンドはケープタウンで

SVNS 2025シーズン開幕戦では、男女各12チームで計91人がシリーズデビュー。 第2戦は12月7-8日に南アフリカのケープタウンで行われる。

ケープタウンでは新たな大会形式が導入され、12チームが3チームずつ4つのプールに分かれて対戦し、各プールの勝者が準決勝に進出する。プールの組み合わせは、ドバイ大会の順位によって振り分けられている。

男子はフィジー、英国、ウルグアイがプールA、スペイン、オーストラリア、ケニアがプールB、アルゼンチン、南アフリカ、アイルランドがプールC、ニュージーランド、フランス、雨エリカがプールDで対戦する。女子はオーストラリア、カナダ、ブラジルがプールA、ニュージーランド、日本、中国がプールB、フランス、アイルランド、スペインがプールC、英国、アメリカ、フィジーがプールDという組み合わせだ。

HSBC SVNS 2025シーズンは世界トップの男女各12チームがドバイ、ケープタウン、パース、バンクーバー、香港、シンガポールと転戦してHSBC SVNS リーグ勝者を決定し、全6戦を通じた総合順位の上位8位までが5月にロサンゼルスで開催されるHSBC SVNSワールドチャンピオンシップに進出。9位から12位までの4チームはセブンズチャレンジャーシリーズ上位4チームとの残留・昇格プレーオフに臨む。