日本代表がスピード感溢れる攻撃を畳みかけて、世界ランキングで1つ上の13位に位置するサモアから7トライの勝利を手にし、5年ぶりの大会優勝へ前進した。

 真夏と変わらない高温多湿の気候に加えて、日本には強い向かい風の中での前半となったが、チームは序盤からSH藤原忍が速いテンポでボールを裁き、「狙いだった」という縦に速い攻撃で前半6分のCTBディラン・ライリーの先制トライにつなげた。

 その4分後にも早い仕掛けで相手ゴール前に迫り、ペナルティトライを獲得。サモアはこのプレーでイエローカードを受けて一人少ない中でWTBツナ・ツイタマが1トライを返したが、日本は16分にFB李承信からボールを受けたWTB長田智希が右サイドに飛び込んで21-7とリードを広げた。

 風上に立つサモアは距離のあるPGを2本決めて7点差に詰めたが、日本は前半終了直前にSO立川理道のパスを受けた李がトライ。日本が28-13として前半を折り返した。

 日本はキャプテンの立川が9年ぶりの10番での先発で冷静な試合コントロールを披露し、先週のアメリカ戦では10番で先発した李が15番に移って、のびのびとプレー。李は相手の裏を突くキックパスも効果的に使ってチャンスを作り、後半4分にはFL下川甲嗣のトライをお膳立てした。

後半12分にサモアのSHメラニ・マタヴァオにトライを許したが、その6分後には日本はゴール前のラックから藤原が持ち込んで40-20と突き放し、試合終了直前にも途中出場の高橋汰地が5点を加えた。李は6本のコンバージョンすべてを成功させてチームの勝利に大きく貢献した。

所属の神戸で15番も経験している李は、サモアを相手に藤原、立川との試合中のコミュニケーションもうまくいったと手ごたえを示し、「自分のスキルがプレーの幅がスコアにつながるきっかけとなった。自信の持てるゲームだった」と話した。

 一方、この日の試合で59キャップ目を獲得した立川は、「9年ぶりということもあって最初は少し緊張したが、試合に入ればチームのやるべきこと、自分のやるべきことを明確にシンプルに」と取り組んだと明かし、前半は風の影響を考えてボールを保持しての試合運びを意識していたと話した。

 7トライを奪ってサモア戦過去最多得点での勝利に、日本代表キャプテンは「点差や結果は後からついてくるものだが、いい準備が結果に表れるという経験は今のチームには大事。チームにはいい自信になる」と述べて、決勝へも良い準備をしたいと話した。

日本代表指揮官、選手を評価

 ジョーンズヘッドコーチは、「チームにとっていいステップアップだ。サモアはこれまでのアメリカやカナダより強い相手だったが、特にこの強い向かい風の中で非常によい試合の入りをした」と話した。

 司令塔を務めた立川については、「落ち着きのあるプレーで良い判断をして、体を張った守備も見せた。とても良い仕事をした」と評価。「彼はチームに付加価値をもたらし、チームをより強くしてくれる。2015年ワールドカップへ向けて4年間一緒に仕事をしたが、常にチームのために全力を尽くしてくれる。彼には全幅の信頼を置いている」と、34歳キャプテンへの称賛を惜しまなかった。

 今年から始まったジョーンズ現体制で、初めてFBで先発した李についても、「とてもうまく適応していた。ラインでもいい形で仕掛けていたし、ゴールキックの確率もよかった。今後も期待したい」とコメント。李と立川の組み合わせはチームのバランスを見て決めたと説明した。

決勝進出を決めた日本代表指揮官は、「選手たちは今日の試合へ良いアプローチをした。だが次のフィジーは高いクオリティのあるチームだ」と指摘した。

フィジーは世界ランク10位。14日の準決勝でアメリカに22-3で勝って決勝進出を決めている。

ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは、勝てば2019年大会以来の優勝となる次戦へ、「我々はしっかり準備をして、特にラック周辺の守備を改善しなくてはならないし、キックチェイスでもより良い連係が必要だ。相手に勢いを与えてはならない」と語った。

サモア主将、ミスの多さを嘆く

 日本に敗れたサモアのマホンリ・シュワルガーヘッドコーチは、「とてもタフな試合だった。日本は高いスタンダードを示した。テクニカルでもあり、前半多くのプレッシャーをかけてきた。我々は重要なエリアでのエラーも多く、立て直せなかった」と話した。

キャプテンのFLテオドール・マクファーランドは、「フラストレーションの溜まる試合だった。結果にはとてもがっかりしている。日本がスピードとキックを使ったスタイルで来ることは予想していた通りだったが、我々はミスが多くてモメンタムを失ってしまった」と落胆を隠さなかった。それでも、「今日の試合を振り返って次の試合に臨みたい」と話した。

サモアは21日に大阪の花園ラグビー場で行われる3位決定戦でアメリカと対戦する。

日本代表サモア戦試合登録メンバー:

1三浦昌悟 (トヨタヴェルブリッツ)

 →17岡部崇人(横浜キヤノンイーグルス)、後半12分

2原田 衛 (東芝ブレイブルーパス東京)

 →16松岡賢太(コベルコ神戸スティーラーズ)、後半35分

3竹内柊平 (浦安D-Rocks)

 →18為房慶次朗 (クボタスピアーズ船橋東京ベイ)、後半21分

4エピネリ・ウルイヴァイティ(三菱重工相模原ダイナボアーズ)

 →19アイザイア・マプスマ (トヨタヴェルブリッツ)、後半21分

5ワーナー・ディアンズ (東芝ブレイブルーパス東京)

6ファカタヴァ アマト (トヨタヴェルブリッツ)

7下川甲嗣 (東京サントリーサンゴリアス)

8ファウルア・マキシ (クボタスピアーズ船橋東京ベイ)

 →20ティエナン・コストリー (コベルコ神戸スティーラーズ)、後半22分

9藤原 忍 (クボタスピアーズ船橋東京ベイ)

 →21小山大輝 (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半27分

10立川理道* (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

 →23高橋汰地 (トヨタヴェルブリッツ)、後半22分

11マロ・ツイタマ (静岡ブルーレヴズ)

12ニコラス・マクカラン (トヨタヴェルブリッツ)

 →22梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス)、後半30分

13ディラン・ライリー (埼玉パナソニックワイルドナイツ)

14長田智希 (埼玉パナソニックワイルドナイツ)

15李 承信 (コベルコ神戸スティーラーズ)

(注:* はチームキャプテン)

 

サモア代表試合登録メンバー:

1アキ・セーイウリ (Dragons)

 →17アンドリュー・ツアラ  (Houston SaberCats)、後半24分

2サマ・マロロ  (Moana Pasifika)

 →16ルテール・トライ  (Biarritz)、後半19分

3マルコ・ヴェププレアイ  (Colomiers Rugby)

 →18ブルック・トゥーマラタイ  (Canterbury)、後半22分

4ベンジャミン・ニーニー  (Nippon Steel Kamaishi Seawaves)

5サミュエル・スレード  (Moana Pacifika)

 →19マイケル・カリー  (Moana Pasifika)、前半29分→41分(HIA)

6テオドール・マクファーランド*  (Saracens)

7イザイハア・モーレ=アイオノ  (London Irish)

 →20マーフィー・タラマイ  (Shizuoka Blue Sharks)、後半7分

8イアコポ・マップ  (Moana Pasifika)

9メラニ・マタヴァオ  (Moana Pasifika)

 →21ダニー・ツシタラ  (Old Glory DC, USA)、後半19分

10ロドニー・アイオナ  (Nola Gold, USA)

11エリザペタ・アフォフィポ  (Tama Uli Salelologa)

12アラパティ・レイウア  (Shizuoka Blue Revs)

 →23メラニ・ナナイ  (Vancouver Highlanders)、後半19分

13ラロミロ・ラロミロ  (Moana Pacifika)

14ツナ・ツイタマ  (Moana Pasifika)

15トマシ・アロシオ  (Anthem Rugby, USA)

リザーブ:(出場なし)

22アファ・モレリ  (Auckland University)

(注:はキャプテン)