日本代表はテストマッチ4戦目となるカナダ戦で、エディ―・ジョーンズヘッドコーチの下で取り組んでいる「超速ラグビー」を試合開始から相手を圧倒し、速いテンポの攻撃で前半のうちにLOワーナー・ディアンズの2トライなどで5トライを奪い、優勢に試合を進めた。

日本は速い球出しとパス―ワークで攻め込み、前半4分、WTBマロ・ツイタマが代表デビュー戦で先制トライをマーク。3分後にもテンポよくボールをキープして、最後はゴール前のラックからパスを受けたディアンズが持ち込んで5点を加え、早々に14-0と先行した。

前半22分にはFB矢崎由高のラインブレークからパスを受けたFL下川甲嗣がインゴールで抑え、26分にSO李承信がPGで3点を加えた後、その2分後にはディアンズがこの日2本目のトライ。30分にはラインアウトを起点にパスを受けたCTBディラン・ライリーが一気に加速してゴールまで走り抜き、得点リストに名を連ねた。李もすべてのコンバージョンを成功させて、日本は前半30分過ぎまでに38-0とリードを広げた。

しかし、カナダも集中を切らさずに粘り強いプレーを続け、前半終了直前に、日本のパスの乱れを突いてキックで攻め込み、最後はWTBアンドリュー・コーが自らインゴールで抑えてトライを決め、SOピーター・ネルソンのコンバージョンも決まって7点を返した。

前半を38-7で折り返した日本は、後半開始3分、下川の突破からフォローした李がポストの間で押さえ、コンバージョンも成功させて7点を追加した。

しかし、そこから後半はフィジカルの強さを前面に押し出すカナダに、日本はミスやペナルティが目立つようになり、流れが変わる。

パワーと推進力のあるカナダは後半5分にペナルティで得たラインアウトモールを起点に、CTBタレン・マクマリンが日本のギャップをついてインゴールに右に飛び込み、コンバージョンも成功して21⁻45と点差を縮めた。

勢いを得て攻勢に出るカナダに対して、日本はミスやペナルティが増えて、苦しい時間帯が続く。後半28分に、途中出場の立川理道からパスを受けたWTBジョネ・ナイカブラがハーフウェイライン付近から走り抜いてトライを決めた。

だが、後半40分にカナダはネルソンのキックパスをタコダ・マクマリンがインゴールで押さえて、ネルソンのこの日4本目のコンバージョンを決めて28-50とした。

日本は試合終了直前に、途中出場の長田智希が相手のパスをインターセプト。そのままトライに持ち込んで5点を加えて55-28で終了。エディー・ジョーンズ現体制でのテストマッチ初勝利を手にしたが、前後半で手ごたえと課題を得た試合となった。

日本代表HC、アウェイでの勝利と前半を評価

試合後、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは、カナダに対してホームとアウェイで勝率に4割の違いがあった点に言及して、「日本にとってバンクーバーで歴史的な勝利になった」とアウェイでの勝利を喜んだ。

5月の本格始動後、チームにとってテストマッチ4戦目での初勝利にも、「結果がついて来ないことで信念が揺らぐことは時として起こり得るが、この勝利で自分たちのやり方を確認してさらに改善することができる」と述べた。

その一方で、日本代表指揮官は「前半はとてもよかったが、後半は残念だった」と後半の戦い方には不満を示した。

「前半は目指しているラグビーがうまくできていた。フィジカル面でも、ボールを動かし続けることもうまくいっていた。だが若いチームにありがちだが、コントロールすべきところで前のめりになりすぎて、後半はプレー精度でもフィジカルでも望んでいたレベルではなかった」と指摘した。

テストマッチ3戦目で9番で好プレーを見せたSH藤原忍は、「フォワードが前に出てくれたことで、自分の持ち味のスピードを出せた。10番の李承信ともうまくコミュニケーションを取れた」と話したが、「前半の後半、疲れてきたころに集中が切れてミスが多くなった」と反省も忘れなかった。

キャプテンの立川理道は、「前半は一人ひとりの役割も明確で、相手にフィジカリティに対してもスピードとスキルでしっかりと前に出て、自分たちのやりたいようなラグビーをできたかと思う」と手ごたえを示しつつ、後半については「修正しないといけない部分はあった。この学びを活かして、次に80分間通してできるようにしていきたい」と話した。

カナダ、後半のプレーに手ごたえ

この試合の黒星で日本に対する連敗が9となったカナダだが、21⁻17と日本を上回った後半の戦いには希望を抱いている。

後半トライも決めたキャプテンのNO8ルーカス・ランボールは、「結果は残念だし、みんなショックを受けているが、選手はみんなよく反応した。今後へ期待が持てると思う」と振り返った。

カナダ代表ヘッドコーチのキングスレー・ジョーンズは、「試合の最初の15分から20分で苦戦したが、日本を評価しなくてはならない。彼らがスピードを生かして出てくることは分かっていたし、話もしていたが、実際の対応となると勝手が違う」と話した。

しかし、カナダ指揮官は「我々の選手たちも後半は個性を見せていた」として、若手主体のチームをけん引した経験値のあるルーカス・ランボールとWTBアンドリュー・コーをはじめ、LOアイザック・ケリー、トライを挙げたタレンとタコダのマクマリン兄弟らのプレーを称賛。チームの成長に「我々には今日のような経験が必要だ」と話した。

今大会では6チームが2グループに分かれてプール戦を行い、成績に応じて9月14日から日本で開催されるファイナルシリーズを戦う。

プールBでは次戦、8月31日にカナダがアウェイでアメリカと対戦し、日本は9月7日に熊谷でアメリカと対戦する。

プールAでは8月23日にフィジーがサモアに42⁻16で勝利。30日に初勝利を目指すサモアがホームでトンガと対戦し、9月6日にトンガがホームにフィジーを迎える。

日本代表、PNCカナダ戦メンバー

1三浦昌悟 (トヨタヴェルブリッツ)

 →17茂原隆由 (静岡ブルーレヴズ)、後半7分

2坂手淳史** (埼玉パナソニックワイルドナイツ)

 →16原田 衛 (東芝ブレイブルーパス東京)、後半7分

3為房慶次朗 (クボタスピアーズ船橋東京ベイ)

 →18竹内柊平 (浦安D-Rocks)、後半7分

4サナイラ・ワクァ (花園近鉄ライナーズ)

 →19桑野詠真 (静岡ブルーレヴズ)、後半25分

5ワーナー・ディアンズ (東芝ブレイブルーパス東京)

6ティエナン・コストリー (コベルコ神戸スティーラーズ)

7下川甲嗣 (東京サントリーサンゴリアス)

8ファウルア・マキシ (クボタスピアーズ船橋東京ベイ)

 →20アイザイア・マプスマ (トヨタヴェルブリッツ)、後半14分

9藤原 忍 (クボタスピアーズ船橋東京ベイ)

 →21小山大輝 (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半23分

10李 承信 (コベルコ神戸スティーラーズ)

 →22立川理道* (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半23分

11マロ・ツイタマ (静岡ブルーレヴズ)

 →23長田智希 (埼玉パナソニックワイルドナイツ)、後半23分

12ニコラス・マクカラン (トヨタヴェルブリッツ)

13ディラン・ライリー (埼玉パナソニックワイルドナイツ)

14ジョネ・ナイカブラ (東芝ブレイブルーパス東京)

15矢崎由高 (早稲田大学)

(注:* はチームキャプテン、** はゲームキャプテン)

カナダ代表 日本戦メンバー

1カリクスト・マルティネズ (Old Glory DC)

 →17ジャスティス・シアーズードゥル (San Diego Legion)、後半17分

2アンドリュー・クァトリン (New England Free Jacks)

 →16ドゥワルド・コーツ (Dallas Jackals)、後半17分

3コーナー・ヤング (RFC LA)

 →18コール・キース (New England Free Jacks)、後半17分

4アイザック・ケリー (Cottesloe Rugby Club)

 →19ジェームズ・ストックウッド (Pacific Pride)、後半23分

5ケーディン・ドゥーグッド (Vancouver Highlanders)

6メイソン・フレッシュ (Chicago Hounds)

7イーサン・フライヤー (New England Free Jacks)

 →20マシュー・オウォル (Pacific Pride)、後半25分

8ルーカス・ランポール* (Chicago Hounds)

9ジェイソン・ヒギンズ (Chicago Hounds)

10ピーター・ネルソン (Dungannon RFC)

11ニック・ベン (Dallas Jackals)

12タレン・マクマリン (Vancouver Highlanders)

 →21ブロック・ギャラガー (Dallas Jackals)、後半31分

13ベン・レサーズ (New England Free Jacks)

14アンドリュー・コー (N/A)

 →22マーク・バラスキー (Pacific Pride)、後半29分

15クーパー・コーツ (Halifax Tars)

 →23タコダ・マクマリン (Vancouver Highlanders)、後半20分

(注:* はキャプテン)