6~7月のテストシリーズでイングランド、ジョージア、イタリアと欧州勢との対戦で勝ち星を挙げられなかった日本代表が新たな戦いに臨む。8~9月のPNCでカナダ、アメリカと同プールで対戦。ファイナルシリーズではフィジー、サモア、トンガと対戦する機会がある。
エディー・ジョーンズヘッドコーチは日本代表指揮官復帰後の初勝利もかかるが、「いい対戦相手が揃っている」という今大会の初戦を前に「これ以上ないほどの良いトレーニングができている」と準備に手ごたえを示し、「(試合会場が)人工芝なので、プレースピードが上がって、我々の得意とする超速ラグビーを表現するチャンスが多く生まれると思う」と抱負を述べた。
日本代表のカナダ戦メンバーには、9番にはSH藤原忍(クボタスピアーズ船橋東京ベイ)が代表3戦目で初先発し、SO李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)とコンビを組む。また、夏のシリーズで代表デビューを遂げたFB矢崎由高(早稲田大学)がテストマッチ4戦連続で15番に入った。
FW陣にはLOワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)をはじめ、イングランド戦とジョージア戦に続いて代表3キャップ目となるFLティエナン・コストリー(コベルコ神戸スティーラーズ)、NO8ファウルア・マキシ(クボタスピアーズ船橋東京ベイ)が名を連ねた。
代表デビューとなるのは、昨季リーグワンで最多トライゲッターを獲得したWTBマロ・ツイタマ(静岡ブルーレヴズ)とCTBニコラス・マクカラン(トヨタヴェルブリッツ)、リザーブで出番を待つLOアイザイア・マプスア(トヨタヴェルブリッツ)の3選手だ。
ゲームキャプテンは44キャップのHO坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)が務め、今回のメンバーで最多キャップ(56)のチームキャプテンCTB立川理道はリザーブから出番を待つ。
今大会、日本はFLリーチマイケル(東芝ブレイブルーパス東京)、SH斎藤直人(スタッド・トゥールーザン)らがコンディションやクラブ事情で不在の中、先発総キャップ数142という若いチームになった。
フィジカル対超速
カナダは2017年から指揮を執る元ウェールズ代表のKingsley Jonesヘッドコーチの下、昨年のラグビーワールドカップの出場は逃したが、現在2027年大会へ向けてチーム作りの過程にある。今年7月のテストシリーズでは、6日のスコットランド戦には敗れたが、12日のルーマニア戦には35-22で勝利を収めている。
日本戦の先発には、経験値のあるNO8 Lucas RumballキャプテンとCTB Ben LeSage副キャプテンを中心に、夏のシリーズで初キャップを獲得したPR Calixto Martinez、FL Etha Fryer、WTB Nic Bennの3選手や今回が代表デビューとなるLO Kaden Duguidら若手が起用された。
日本代表のジョーンズヘッドコーチは、チームの経験値という点ではカナダも日本も「似ている」としたが、プレースタイルに関しては、カナダは「フィジカルの強さが武器」として、スピードの日本とは「フィジカル対超速」という戦いになると指摘。「我々としては、スピードだけでなくフィジカル面でカナダに優ること」が試合のポイントの一つになるという見方を示した。
SO李、「同じ絵を見て動けるか」
両チームの通算対戦成績では日本が15勝8敗とリード。ここ8戦でも日本が6勝2分けと負けなしで、世界ランキングではカナダの21位に対して、日本は14位につけている。
だが、司令塔のSO李は「ランキングは関係ない。今回の日本は代表チームが始まって以来と言っていいくらい若いチーム。アドバンテージがあるわけではない」と楽観論を牽制。「チャレンジ精神を持つことが、特にアウェイの試合では大事になる」と気を引き締める。
日本代表は6~7月のテストシリーズでは欧州勢を相手ゴールライン目前まで攻め込み、作ったトライチャンスも少なくなかったが、モノにできずに苦戦することが多かった。
李は「ゴール前で焦って個人で取ろうとしていた」と振り返り、「チームのシステムの中で組織として動けるか、チームとして同じ絵を見て動けるかが大事になる」と話す。
昨年のラグビーワールドカップも経験した李は、今回が代表戦15キャップ目。今回は7月13日のジョージア戦以来の先発となる。
「80分通してのゲームマネジメントが大事になる。このPNCで経験を得て勝利したい」と意気込んでいる。
PNCファイナルシリーズは日本で
今年から毎年開催されることになったPNCは、全6チームが2グループに分かれてプール戦を行い、各組上位2チームがファイナルシリーズで準決勝へ進出し、3位チームは5位決定戦に臨む。
今年のファイナルシリーズは9月14、15日に東京の秩父宮ラグビー場で準決勝と5位決定戦、21日に大阪の花園ラグビー場で決勝と3位決定戦が行われる。
プールAは8月23日にスタートし、スヴァで行われた開幕戦で過去5大会優勝のフィジーが2022年大会優勝のサモアに42-16で勝利した。30日にはサモア対トンガ戦、9月6日にトンガ対フィジー戦が行われる。プールBはカナダ対日本戦を皮切りに、9月1日にアメリカ対カナダ、7日に日本対アメリカ戦が行われる。
なお、来年の大会は2027年ワールドカップの予選を兼ねることが決まっている。
日本代表、PNCカナダ戦登録メンバー
1三浦昌悟 (トヨタヴェルブリッツ、10キャップ)
2坂手淳史** (埼玉パナソニックワイルドナイツ、44)
3為房慶次朗 (クボタスピアーズ船橋東京ベイ、3)
4サナイラ・ワクァ (花園近鉄ライナーズ、5)
5ワーナー・ディアンズ (東芝ブレイブルーパス東京、14)
6ティエナン・コストリー (コベルコ神戸スティーラーズ、2)
7下川甲嗣 (東京サントリーサンゴリアス、6)
8ファウルア・マキシ (クボタスピアーズ船橋東京ベイ、8)
9藤原 忍 (クボタスピアーズ船橋東京ベイ、2)
10李 承信 (コベルコ神戸スティーラーズ、14)
11マロ・ツイタマ (静岡ブルーレヴズ、0)
12ニコラス・マクカラン (トヨタヴェルブリッツ、0)
13ディラン・ライリー (埼玉パナソニックワイルドナイツ、20)
14ジョネ・ナイカブラ (東芝ブレイブルーパス東京、11)
15矢崎由高 (早稲田大学、3)
16原田 衛 (東芝ブレイブルーパス東京、3)
17茂原隆由 (静岡ブルーレヴズ、3)
18竹内柊平 (浦安D-Rocks、6)
19桑野詠真 (静岡ブルーレヴズ、1)
20アイザイア・マプスマ (トヨタヴェルブリッツ、0)
21小山大輝 (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、2)
22立川理道* (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、56)
23長田智希 (埼玉パナソニックワイルドナイツ、10)
(注:* はチームキャプテン、** はゲームキャプテン、所属のあとの数字はキャップ数)