7月28日から30日までパリ郊外のサン・ドニのスタッド・ド・フランスで行われたパリオリンピック女子ラグビーで、初のメダル獲得に挑んだサクラセブンズ女子7人制日本代表は、2連敗の後に3連勝で巻き返し、9位に入った。

プール戦では、最終的に銅メダリストとなったアメリカ、5位に入った開催国フランス、ブラジルと同じC組で、いずれもHSBC SVNSで何度も対戦してきた相手だったが、初戦でアメリカに7-36、第2戦でフランスに0-49と敗れる厳しいスタートだった。

大会記録となる6万6千人の観客が声高に声援を送る独特な雰囲気は、「ワールドシリーズとは違った空気感」(鈴木ヘッドコーチ)を生み出し、それに後押しされるようにパワーと強い意気込みを前面に臨んできたアメリカとフランスに日本は苦戦。どちらの試合でも「キックオフで苦戦し、フィジカルで負けて、アタックの時間が短かった」(平野優芽キャプテン)と、自分たちの良さを出せないまま終わった。

だが、日本は2日目に入ると、プール最終戦でブラジルに堤ほの花と梶木真凛が2トライずつを決めるなど7トライを挙げて39-12で勝利。8強入りの条件である各組上位2チームか3位の中の上位2チーム入りは得失点差で逃したが、9位決定準決勝の南アフリカ戦ではリードを許す展開も梶木の後半2トライで15-12と逆転勝ちを収めた。

そして最終日、9位決定戦ではブラジルと再戦。試合開始直後の梶木のトライを皮切りに、内海春菜子、大谷芽生、平野、松田凛日、田中笑伊がテンポよくトライを決め、躍動感のあるプレーを披露。日本が38-7でモノにした。セブンズがオリンピック競技となった2016年リオデジャネイロ大会での10位、コロナ禍で1年遅れて無観客で開催された2020東京大会での12位を上回る成績だった。

 

3連勝巻き返しのカギは切り替え

平野キャプテンは、目標としていたメダルを手にできずに終わったことに、「メダル獲得はまだ遠く、望んでいた結果を残すことができず、とても悔しい」と話したが、初日の連敗後の立て直しを、「敗戦からしっかりと気持ちを切り替えて、サクラセブンズのやりたいアタックとディフェンスをしっかり体現した結果。この3年間のサクラセブンズの成長」とプラスに受け止めた。

原わか花も、「東京オリンピックの敗戦から、サクラセブンズ全員が歩みを止めずに前に進み続けた結果が、(今回の)オリンピック過去最高順位につながった」と話した。また、堤ほのかは「自分たちが目標としていた結果ではなかったが、次につながるスタートが切れた」と言い、梶木も「課題は明確なので、必ず次のオリンピックでは結果につなげていく」と次へ決意を新たにしていた。

今大会のサクラセブンズで最年長ながら要所を抑える力強いプレーを披露し、ピッチ内外のリーダーの一人としてチームをけん引した中村知春は、リオ大会以来2大会ぶりのオリンピックを終えて、「オリンピックは最高の舞台だとやっと心から思うことができた。これまでの道のり、自分のやれることはすべてやり切った」と振り返り、9位という結果にも「すがすがしい気持ち」と言った。

代表選手として臨んだ最後の舞台を終えて、中村は「自分たちの実力にプラスアルファの力を発揮できるか。それがオリンピックという大舞台で勝ち上がることができるかどうかの差だと思う」と指摘。仲間と後輩に今後を託した。

今大会で退任する鈴木ヘッドコーチは、「自分たちのラグビーを出して最後に勝ち、3勝2敗と勝ち越して大会を追われた。これまでの成長を感じるとともに、これからサクラセブンズがさらに成長できるきっかけになった」と、今大会の意義を強調した。

 

女子ニュージーランドが2連覇

女子の優勝は、ニュージーランドがカナダに19-12で振り切ってオリンピック2連覇を達成した。

Risi Pouri-Laneが開始早々に先制トライを決め、5分にPortia Woodman-Wickliffeがイエローカードを受けて一時退場となると、カナダが反撃。Chloe DanielsとAlysha Corriganの連続トライで12⁻7と逆転を許した。

しかし、ニュージーランドは数的不利が解消されると、8分にMichaela BlydeのトライとTyla Kingのコンバージョンで逆転に成功。終盤にはStacey Waakaがトライを奪ってカナダを突き放した。

3位はアメリカで、オーストラリアに試合終了直前のトライで14-12と競り勝ち、初のオリンピックメダル獲得となった。アメリカは7-12と5点差を追う終了間際、Alex Sedrickが同点トライを決め、自らコンバージョンも成功させての逆転勝利だった。

オーストラリアのMaddison Leviは今大会14トライを挙げてオリンピックでの最多トライ記録を塗り替えたが、メダル獲得には及ばなかった。

開催国フランスは中国に21-7で勝利し5位に入り、7位はアイルランドを28-12で下した英国だった。9位に日本、11位にはフィジーを21-15で退けた南アフリカが入った。

 

男子日本は12位、世界トップとの差が露呈

 一方、男子7人制日本代表は、女子に先立って7月24~27日に行われた3日間の競技で5試合を戦ったが、1勝が遠く、最下位の12位で終了した。

プールA初戦でニュージーランドと対戦。前半序盤に、津岡翔太郎がトライを決めて一時は7-7と追いついたが、その後は加速した相手の攻撃に守備を崩されて12-40で敗れた。第2戦はアイルランドに5-40と敗れ、2日目のプール最終戦でも南アフリカに5-49と3連敗を喫してプール4位で終了。9~12位順位決定戦準決勝にまわると、そこでもサモアに7-42と敗れて11位決定戦に回った。

雨が降る中で迎えた最終戦で、なんとか1勝を挙げたい日本だったが、ウルグアイに序盤から3トライと3コンバージョンを決められて苦戦。0-21 を追う前半6分、キャプテンの石田吉平がゴール前のペナルティから素早く攻めてトライを決めて、ようやく5点を返した。しかしその直後、ケレビ ジョシュアに危険なプレーがあったとしてイエローカードを受けて、日本は数的不利に陥った。

5-21で迎えた後半開始早々に、ウルグアイのDiego Ardaoにイエローカードが出て6対6となると、津岡がトライを決めて10-21と点差を詰めた。しかし、反撃もそこまで。2016年大会では4位に入った日本だったが、今大会は12位となり、前回東京大会の11位から順位を上げることはできなかった。

パリオリンピックを見据えて2022年9月末からチームを率いてきたサイモン・エイモー男子7人制日本代表ヘッドコーチは、2年弱の強化期間に見せたチームの成長には「大きな進歩があった」としたが、「世界のトップチームと互角に戦うには十分ではなく、運動能力の面で相手に及ばなかった」と話した。

それでも、「素晴らしいアタックシーンを作ることができた」と部分的ながらも良いプレーを示した点は評価。「それが、子どもたちがセブンズラグビーをして、日本代表としてオリンピックでプレーしたいという野心を持つきっかけになってくれれば」とコメント。次世代の選手への期待を示した。

石田吉平キャプテンは「結果が出ず、悔しい。主将として(チームを)勝たすことができず、申し訳ない気持ちでいっぱい」と無念さを滲ませたが、「これまで一緒にやってきたメンバーやスタッフを誇りに思う」と語った。

 

男子はフランスが初のオリンピック金メダルを獲得

 男子の優勝は開催国のフランスだった。

スタッド・ド・フランスを埋めた地元ファンの声援を受けて、大会2連覇中のフィジーと対戦。試合開始早々に先制を許したが、5分にJefferson-Lee Josephのトライで前半のうちに追いついて7-7で折り返すと、後半はAntoine Dupontがベンチから登場してパワーアップ。15人制代表でも活躍するDupontは8分に左タッチラインを駆け抜けてAaron Grandidier Nkanangのトライをお膳立てし、フランスが14-7と均衡を破った。

チームに活力と勢いを与えたDupontは13分と15分には自ら持ち込んで2連続トライをマーク。フランスが28-7でフィジーをねじ伏せ、自国開催のオリンピックで初の金メダルを獲得した。

3位に入って銅メダルを獲得したのは南アフリカ。Zain Davidsが2トライ、Selvyn DavidsとShaun Williamsが1トライずつを決めるなどでオーストラリアに26-19で勝利した。

5位はニュージーランドで、アイルランドに17-7で勝利。HSBC SVNS 2024のレギュラーシーズンを制していたアルゼンチンは、アメリカに19-0で勝って7位に入った。9位はケニアで、サモアとの接戦を10-5で制した。

 

6日間で50万人以上を動員

2016年リオデジャネイロ大会でオリンピック競技となった7人制ラグビーは、コロナ禍の影響で1年遅れて無観客で開催された東京2020大会を経て、今大会はサン・ドニのスタッド・ド・フランスで行われた6日間で50万人を超える観客を集め、セブンズでの新たなオリンピック記録となった。

ワールドラグビーのビル・ボーモント会長は、「オリンピックのセブンズ競技は成熟の時を迎えた。フィールド内外でラグビーがより多くの人とより多くの国々へ届いた」と述べ、女子競技の初日に6万6千人を集めたことに、「女子競技に確かな土台を築くことができた。今後も発展を続けていくことに疑念はない」とコメントした。

次回は2028年ロサンゼルス大会。年末に始まるSVNSシリーズで4年後のオリンピックへ向けた新たなサイクルが始まる。