世界ランク11位のサクラフィフティーン女子日本代表が守備のハードワークで相手の攻撃を跳ね返し、世界ランク7位のアメリカと接戦を演じて勝利まであと一歩に迫った。

前半12分、左サイドのラインアウトからモールで攻めてPR北野和子が先制トライを決め、SO大塚朱紗がコンバージョンを成功させて7-0と先行した。

一方、5月のパシフィックフォー大会でオーストラリアに32-25で勝利するなど3位に入ってWXV1への出場を決めているアメリカも反撃。パワーと体格で上回り、日本が守備で抵抗を見せる中、アメリカは前半31分、ゴール前のラックからSHオリビア・オルティーズが持ち出してトライ。SOマッケンジー・ホーキンズが2点を加えて同点となった。

日本は36分、敵陣に攻め込んで22メートル内で得たペナルティから素早いパスワークでつなぎ、前半途中出場のCTB小林花奈子が左隅に飛び込んで均衡を破った。

アメリカもすぐに反応して、前半40分にラインアウトからFWで攻め込んでゴールに迫り、最後はWTBサマー・ハリスジョーンズがインゴールに飛び込んで再び同点。コンバージョンも決まってアメリカが14-12リードで前半を折り返した。

後半、開始早々に日本が攻め込み、ペナルティで得た左サイドでのラインアウトから、再びモールで攻め込み、FL川村雅未が押さえてト逆転。大塚のコンバージョンは左ポストに弾かれたが日本が17-14と逆転に成功した。

その後は互いに一歩も譲らない、激しい競り合いとなる。

50分過ぎに日本はWTB村松美咲の抜け出しを起点にスピード感のあるパスワークで攻め、60分前にも松村が滑らかなステップで相手をかわしてキックパスでの攻撃を見せるなど、相手ゴールに迫った。

アメリカも、後半半ばから日本のキックに再三のチャージで押し込む場面も作ったが、ハンドリングのミスが響いて決定機にできない。それでも75分過ぎには、ペナルティで得たラインアウトからFWを中心に攻め続け、78分にゴール正面でペナルティを得ると、「得点が大事」(テス・フュリー主将)とPGを選択。これをホーキンズがこれを沈めて同点。そのまま試合終了となった。

アメリカは苦しみながらも引き分けに持ち込んで黒星を回避。一方の日本は、相手の追い上げに終盤のペナルティが続いて初勝利のチャンスを逃したが、1994年のラグビーワールドカップでの初対戦では0-121と大敗し、前回2022年10月のワールドカップでは17-30と2連敗していた相手から初の引き分けとなり、通算対戦成績を1分け2敗とした。

 

FWの取り組みに手ごたえ

 日本は今年6月のフィジー遠征で対戦したフィジー代表戦では、フィジカルの強さを押し出す相手に苦戦して1勝1敗だったが、そこからフォワードを中心に強化を図ってきた成果が見られる試合となった。

ハードワークを続けたフォワードの一人、LO佐藤優奈は、「フォワードキャンプからずっと勝ち切るべく準備してきたので引き分けは悔しい」と、あと一歩で逃した勝利を残念がった。相手に通用していた部分もあったとして、「継続して次の試合では畳みかけて、絶対に勝ちたい」と、次戦へ意気込みを新たにしていた。

北九州市出身の長田いろはキャプテンは、「日本のホームでテストマッチができてうれしい。たくさんの人の応援が力になった」とファンに感謝。「フォワードとバックスそれぞれがユニットでやるべきことを出せて、つながるシーンもあった。攻守の切り換えで、チャンスにトライにつなげるところは成長したところ」と手ごたえを口にした。

レスリー・マッケンジー女子日本代表ヘッドコーチは、「今週一週間しっかりと準備ができたし、素晴らしい雰囲気の中での試合で、アメリカのような良いチームと戦えたことは良い機会で、素晴らしかった。

「アメリカは常にフィジカルな試合をしてくるが、そのアメリカから『日本は非常にフィジカルに戦っている』という言葉を引き出せたことは、自分たちの努力が出ていた」と評価した。

 

アメリカ、次戦の巻き返しを誓う

 パシフィックフォー大会以来の活動で、来日後は慣れない暑さの中での4日間の準備で試合に臨んだというアメリカのシオネ・フコフカヘッドコーチは、「今回はインターナショナルシーズンへ向けてのリスタートで大事な試合」と位置づけに言及。この試合では、エマーソン・アレン、ソフィア・バーズ、サライア・イバラの初キャップ選手3人をベンチスタートで起用した。

その第1戦を終えて、「日本の努力をリスペクトする。わかっていたことだが、日本に非常に多くのプレッシャーをかけられて、ターンオーバーも取られた。シンプルなことができず、コンタクトで負けてしまい、強みのセットピースでもミスがあって得点を決めきれなかった」と振り返った。

女子アメリカ代表のキャプテン、テス・フュリーも、「日本は80分間、プレッシャーを与えてきて、ハードに戦ってきた。自分たちはやらなければいけないことを実行できず、自分たちの試合ができなかった」と残念がった。だが、「次の試合まで時間がある。一週間かけて立て直したい」と述べて、巻き返しを誓っていた。

第2戦は8月17日、静岡のエコパスタジアムにて行われる。

 

 

 

女子日本代表 第1戦メンバー

1峰 愛美 (日本体育大学ラグビー部女子)

 →16小牧日菜多 (東京山九フェニックス)、後半16分

2谷口琴美 (横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 →17公家明日香 (ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)、後半12分

3北野和子 (MIE PEARLS)

 →18永田虹歩 (MIE PEARLS)、後半24分

4佐藤優奈 (東京山九フェニックス)

5吉村乙華 (ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

 →19向來桜子 (日本体育大学ラグビー部女子)、後半10分

6川村雅未 (RKUグレース)

7長田いろは*(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

8永井彩乃 (YOKOHAMA TKM)

 →20齊藤聖菜 (MIE PEARLS)、後半7分

9津久井 萌 (横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 →21阿部 恵 (ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)、30分

10大塚朱紗 (ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

11今釘小町 (ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

12古田真菜 (東京山九フェニックス)

13畑田桜子 (日本体育大学ラグビー部女子)

 →22小林花奈子 (横河武蔵野アルテミ・スターズ)、前半7分

14松村美咲 (東京山九フェニックス)

15西村蒼空 (MIE PEARLS)

(注:* はキャプテン)

 

アメリカ代表 第1戦メンバー:

1アリビア・レザーマン (Notre Dame College)

 →17キャサリン・ベンソン (Sale Sharks)、後半0分

2キャサリン・トレーダー (Loughborough)

 →16ペイジ・スタサポレス (Beantown)、後半28分

3チャーリー・ジャコービー (Queensland Reds)

 →18マヤ・ラーナード (Colorado Grey Wolves)、後半5分

4エリカ・ジャレル (Sale Sharks)

 →19エマーソン・アレン (Life West/Rhinos Rugby Academy)、後半16分

5ハリー・タフオーウ (Loughborough)

6レイチェル・エレキ (Colorado Grey Wolves)

7タリア・ブロディ (Leicester Tigers)

8ブリーダ・タフーナ (Lindenwood)

 →20メイ・サガポールー (Leicester Tigers)、後半28分

9オリビア・オルティーズ (Sale Sharks)

 →21ソフィア・パーズ (Life West/Rhinos Rugby Academy)、後半24分

10マッケンジー・ホーキンズ (Colorado Grey Wolves)

11サマー・ハリスジョーンズ (USA 7s)

 →23サライア・イバラ (USA 7s)、後半16分

12ガビー・カントーナ (Exeter Chiefs)

 →22カターナ・ハワード (Sale Sharks)、後半24分

13マタ・ヒンガノ (Life West/USA 7s)

14エミリー・ヘンリッチ (Leicester)

15テス・フュリー* (Leicester)

(注:*はキャプテン)

(Photo credit: JRFU)