大会には男女ともそれぞれ12チームずつが出場。HSBC SVNSシリーズや地域予選大会、ワールドラグビー敗者復活大会のいずれかを経てパリ行きを決めたチームで、ワールドラグビー加盟全6地域をカバーしている。そのうち、オリンピック初出場は3チームで、男子のウルグアイとサモア、女子のアイルランドだ。

男子の初日はオーストラリアとサモアによる開幕戦でスタート。その後、5月のSVNSグランドファイナルを制して弾みをつけた開催国フランスが登場し、アメリカと対戦。また、前回の金メダリストで大会2連覇中のフィジーはオリンピック初出場のウルグアイと対戦する。

一方、女子は28日に初日を迎え、アイルランドと英国が初戦に登場。前回東京大会を制したニュージーランドは敗者復活大会に優勝して出場権を獲得した中国と金メダル獲得への戦いを始める。

7人制ラグビーがオリンピック競技としてデビューした2016年のリオデジャネイロ大会、そして、コロナ禍の影響で1年遅れて無観客で開催された東京2020大会を経て、今回のパリ大会はオリンピック3大会目。そこで7人制ラグビーは新たな記録が期待されている。

昨年のラグビーワールドカップ決勝の舞台でもあったスタッド・ド・フランスに毎試合、満員の69,000人が来場する記録的な観客動員が見込まれており、7人制競技全体では550,000人のファンがスタジアムに足を運び、世界中で数百万の人々がテレビを通じて観戦すると予想されている。

大会では男女とも4チームずつ3グループに分かれて1回戦総当たりでプール戦を実施。上位8チームが2日目に行われる準々決勝へ進出し、3日目に準決勝とメダルマッチが開催される。

 

開催国フランス、フィジーの男子連覇阻止なるか

プール分けは、男子はプールAにアイルランド、日本、ニュージーランド、南アフリカが入り、プールBにはアルゼンチン、オーストラリア、ケニア、サモアの組み合わせで、プールCにはフィジー、フランス、ウルグアイ、アメリカという顔ぶれが揃った。

男子はフィジーが2016年リオ大会から2大会を制してきているが、今回はどうか。同じ2016年以降のSVNSワールドシリーズの勝者を見てみると、異なる5か国が相次いで優勝している。大会システムが変わった直近の2024シーズンにはレギュラーシーズンをアルゼンチンが制し、マドリードで6月に開催されたSVNSグランドファイナルではフランスが頂点に立った。群雄割拠、競争の激化がうかがえる。

男子フランス代表のPaulin Riva主将は、「僕らは今大会でメダルを取りたい。素晴らしいシーズンを過ごして、アルゼンチンやフィジー、ニュージーランドのようなビッグチームとの対戦を経て、多くの自信と経験を得ている。気分は良い」と語り、準備状態は良さそうだ。

自国開催の今大会での金メダル獲得を目指して、今年1月からはフランス15人制代表で主将を務めるAntoine Dupontが合流。Rivaキャプテンは、「僕らはAntoineが世界最高の選手だと信じている。彼がピッチにいると大きな自信を感じるし、それはチームにとって非常に良いことだ」と語っている。

大会3連覇へ意欲を見せる男子フィジー代表のJerry Tuwaiキャプテンは、「僕らの目標は金メダル防衛だ。僕自身はセブンズシリーズの数試合に出場できなかったので、大会を迎えて感情の高ぶりを覚えている。また金メダルを獲得したい」と意気込む。

同組で対戦するフランスについては、「フランス戦での観客の声援は僕らにとってプラスに働くだろう。Dupontは非常に優れた選手で影響力がある。ほかの選手同様、僕は尊敬している」と述べている。

また、開幕戦に登場する男子アイルランド代表のHarru McNultyは、「僕らの試合で大会をスタートできるなんて、すごいことだ」と話し、「どのチームにも勝つチャンスがある。自分の目標はチームを自信のあるパフォーマンスに導いて競争力を高めることだ」と語る。

アイルランドの主将はさらに言葉を続けて、「セブンズは世界中に広まる素晴らしい競技で、多くのスリルに満ちたエキサイティングなスポーツだ。大会開幕が待ちきれない」と語った。

 一方、男子日本代表の石田吉平キャプテンは、12チーム中11位に終わった東京大会からメンバー入りした唯一の選手。前回大会の悔しさと、サイモン・エイモー元英国代表ヘッドコーチの下で積み上げた3年間のハードワークを糧に、パリ大会で初のメダル獲得に挑む。

 「東京大会が終わったときに次のパリでは自分が核になって結果を残そうと決めていた。一番走って一番ディフェンスしてというところをフランスで出したい。ハードワークしてチームを鼓舞したい」と石田は語る。

 他競技に先駆けてのスタートになるが、「“ファースター&ブレイバー(より速くより勇敢に)”という自分たちのスタイルを貫いて、強豪に勝利したい。体が小さくても勇敢に立ち向かう姿をみせたい。強豪に勝って結果を出せば、日本選手団も勢いづく。勝ちにこだわってやりたい」と意気込む。

 

女子も激戦必至、サクラセブンズはSVNS積み重ねが糧

 女子はリオデジャネイロ大会で初代王者にオーストラリアが就き、次の東京大会はニュージーランドが金メダリストになった。今回開催国のフランスは東京2020大会で銀メダルを獲得しており、ホームの地の利を生かして力量をフルに発揮すると見られている。

サクラセブンズ女子日本代表もSVNSシリーズの終盤にはベスト4入り目前に迫るなど、シーズンの戦いを経て徐々に調子を上げてきた。それをバネに前回の最下位から一気にメダル獲得を目指す。

女子日本代表の平野優芽キャプテンは、「ワールドシリーズで経験を積み重ねてきたことは東京大会ではなかった。その意味では本当に世界と戦える選手が増えたと思う。チームとして、自分たちのラグビーをこうやれば戦えるという手ごたえは、東京のときより自信はある」と語っている。

女子のプールステージの組み合わせはカナダ、中国、フィジー、ニュージーランドがプールA、プールBにはオーストラリア、英国、アイルランド、南アフリカが入り、プールCではブラジル、フランス、日本、アメリカが対戦する。

女子ニュージーランド代表共同キャプテンのSarah Hiriniは、「最高峰のイベントに戻ってくることができて本当にうれしい。私たちはこれまでやったことのないことに挑戦して、今を楽しみながら歴史を作ろうとしている。大観衆の前でプレーできることをとても誇りに思う。セブンズ競技にとって最も重要なことだ」と話している。

女子オーストラリア代表主将のCharlotte Caslickは、「私たちはとても興奮している。モンペリエで素晴らしい合宿を行って良い形でセブンズシーズンを終えて、今は大会の開幕が待ち遠しい。多くのことに取り組んできて、どのチームも金メダルを狙っているが、チームにはレジェンドのShami Smaleがいる」と述べた。

 

観客の前でのプレーは2大会ぶり

今回、コロナ禍を経て2大会ぶりに観客の前でプレーすることになるが、女子アメリカ代表のNaya Taperは「スタジアムにたくさんのファンが入ることはとてもエキサイティングで、でも、私にとってはどこか怖さもある。東京2020は素晴らしかったけれど、スタジアムに声援やブーイングをするファンの姿はなかった。今回のこの状況に対応できるように準備しているし、開幕を楽しみにしている」と話している。

またTaper主将は、「昨シーズンのチームの実績には満足しているが、それは過去の話。昨シーズンから得た学びと自信をこの大会に活かしたい。簡単な試合はないが、友人や家族に誇らしく思ってもらえる戦いをして、表彰台で銀でも銅でもなく金メダルを掲げたい」と意気込でいる。

「大きな舞台でのプレーは刺激になるし、少年少女やファン、新しい観客など見ている人にインスピレーションを与えるという私たちのフィロソフィーにもつながる。見ている人たちにとってフォローしたいと思えるような、フィールド内外でロールモデルになれればいい」と語った。

ワールドラグビーのビル・ボーモント会長は、「セブンズ競技はパリ・オリンピックで“機が熟した”イベントになると我々は考えている。パリ大会は史上最大のセブンズシーズンを飾る宝石だ」と称え、「息をのむような最高の祭典となる舞台は整った。非常に競争力があり、魅力的なアクションに満ちた6日間だ。セブンズの選手たちは記録的動員が見込まれる観客の前で輝き、“広く開かれた大会”で我々の競技と価値、オリンピックの喜びを世界中の観客に伝えていくだろう。パリは準備完了。ラグビーも準備万端だ。スタイリッシュに大会を始めようじゃないか」とコメントした。

パリ2024のエグゼクティブスポーツディレクターのAurelie Merleは、「セブンズ競技とパリ2024にとって重要な日になる。今大会はラグビーとサッカーで幕を開けるが、我々はオリンピック3度目の登場となるセブンズ競技を、ほかに類を見ない、注目を集めるショーにして、セブンズ競技のお祭り文化に別の側面を加えたい。セブンズは、パリ大会をスペクタクルで人気のある祭典にするという我々のビジョンに完全にフィットしている」と話している。

なお、過去のメダリストは、2016年リオデジャネイロでは男子はフィジーが金、英国が銀、南アフリカが銅、女子はオーストラリアが金、ニュージーランドが銀、カナダが銅を獲得。2021年に行われた東京2020では、男子はフィジーが連覇し、ニュージーランドが銀、アルゼンチンが銅を手にし、女子ではニュージーランド、フランス、フィジーがそれぞれ金、銀、銅メダルを獲得した。