最新の世界ランキングで8位に上昇のイタリアがキックを効果的に織り交ぜたパフォーマンスを披露。3度のイエローカードで数的不利に陥りながらも安定した守備で不利な時間帯を切り抜けるなど、世界トップ10入りの力量を示したが、日本はハンドリングエラーやラインアウトでのミスが多発。安定性を欠いて得点機を作りながらも決めることができず、苦しい戦いとなった。
日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチは、「残念ながら、これが我々の現状」と受け止め、イタリアへの称賛を惜しまなかった。
「イタリアは試合を通して規律の統制が良く、一貫した安定性があり、その点では我々よりも何枚も上手だった。我々もところどころで本当に良いプレーもあったが、まずいハンドリングミスやラインアウトで勝てないなど安定性を欠いた」と振り返った。
イタリアは試合開始3分にSHマルティン・バジェレロがハーフウェイライン付近からのロングレンジのPGを成功させて先制すると、8分にはFBアンジェ・カプオッツォェレロのコンバージョンも決まって10-0。さらに13分には日本のラインアウトのミスからFLロス・ヴィンセントがキックで抜け出し、パジェレロがトライを決め、SOパオロ・ガルビージが2点を加えて20分を前に17-0とリードした。
イタリアはその後、前半31分にヴィンセントがイエローカードを受けてシンビンとなり、日本はそのペナルティからゴール前まで押し込んで得点チャンスを得るが、パスが乱れて得点には至らない。
イタリアは35分にFBカプオッツォが抜け出し、最後はLOアンドレア・ザンボニンがインゴールで押さえ、コンバージョンも決まって24-0と着々と点差を広げた。
日本はハーフタイム直前に、自陣でのターンオーバーを起点にCTBディラン・ライリーが抜け出してトライ。SO松田力也のコンバージョンも決まってようやく7点を返して前半を折り返した。
ライリーは後半開始早々にも自陣でのインターセプトからフィールドを走り抜けて2連続トライをマーク。松田が2点を加えて14-24と点差を詰めた。
後半は、SH藤原忍、SO李承信をベンチから送り込んだことでプレーのテンポが改善されて、後半8分頃からは相手ゴール前まで攻め込んでフェーズを重ねてトライチャンスを迎える。後半13分にはイタリアWTBヤコポ・トゥルッラが繰り返しの反則でイエローカードを受け、数的優位も手にした。ところが、直後のラインアウトを失敗。流れを手放し、得点機を逃した。
一方のイタリアは一人少なくなりながらも守備が崩れることもなく、後半7分に続いて16分にもパジェレロがロングレンジのPGを決め、後半32分には途中出場のSHアレッサンドロ・ガルビージがトライを奪い、37-14とリードを広げた。
その後、後半34分に交代出場したHOジャンマルコ・ルッケージが危険なプレーでイエローカードを受けてイタリアは三度、14人でのプレーを余儀なくされ、その間に日本がペナルティで得たラインアウトから途中出場のテビタ・タタフがインゴールに飛び込んでトライを奪ったかと思われたが、TMOでノートライとなる。
イタリアは試合終了直前にもゴール前のスクラムからヴィンセントが抜け出し、チーム5本目のトライで試合終了。日本との通算対戦成績を8勝2敗とし、7月5日のツアー初戦でサモア戦には敗れたが、12日のトンガ戦続いての勝利で今夏のツアーを1敗後の2連勝で締めくくった。
イタリア、1敗後に2連勝
「勝って良い形で今シーズンを終えたい」と試合前に話していたイタリア代表のゴンサロ・ケサダヘッドコーチは、「日本にボールを持たせるとスピードを生かしてきて危険なので、ボールキープをして、プレッシャーを与えて相手のプレーをスローダウンさせようとした。うまくいったと思う」と明かした。
イタリア代表のミケーレ・ラマロ主将も「日本にフィジカルで食い込まれないことを念頭に、選手同士のコネクションを強固にして、相手に自分たちのプレーをさせないようにした」と指摘。「前半はうまくいって、後半日本が修正してきたので対応が必要になったが、自分たちのプレーをすることで相手にプレッシャーをかけることを心掛けた」と語り、スクラムで主導権を握り優勢に進めたFWの前5枚の働きを称賛した。
近年の試行錯誤を経て目覚ましい成長を遂げているイタリア代表のキャプテンは、速さを活かしたプレースタイルの構築を試みている日本代表について、「ラグビーには見て楽しい要素が必要だが、時には速さが裏目に出ることもある。特に強い相手と戦う時には、どこに攻撃の起点を置くか、どうプレーするのかの判断が大切だし、バランスが大事。正しいタイミングで正しい攻撃をしなくてはならない」と“アドバイス”を送り、「日本が目指している速いラグビーが完成したら、見て楽しい、どんなチームにも勝てるようになるのでは」と私見を披露した。
日本代表選手、次々と反省点
今夏のシリーズで、日本代表はマオリ・オールブラックスとの2連戦で1勝を挙げたものの、テストマッチでは6月22日のイングランド代表戦、7月13日のジョージア代表戦に続く黒星で3連敗。
ジョーンズヘッドコーチは、「後半は修正して淀みなく良いアタックができて、相手をゴール前に押し込んでプレッシャーを与えることができた」と手ごたえのあった点も挙げたが、反省点や課題についての言葉が多く並んだ。
「我々は多くのことをやらなければいけないが、より安定したチームになるには必要なステップだ。それにはテストマッチを経験して、これまでとは異なる状況に慣れることも含まれる。毎試合、プレーすることが良いレッスンになるが、学んだことを素早くフィールドでの実践に移すことはまだできていない。
「イタリアの守備は我々の予想と少し異なるところがあって、そこで適応するのに時間がかかっていた。だが、選手たちの努力、素晴らしいスピリットを誇らしく思う。後半のスタッツをみると、我々はテリトリーで76%、ポゼッションで74%はあったが、それを得点に反映させられていない。そこは変えなければならない」と日本代表指揮官は言った。
リーチマイケル主将も反省の弁が多く、「最初の20分で修正するところを修正しきれずに失点した。反省点はラック回り。セットプレーが安定しないと超速ラグビーはできない」と話した。
昨年のラグビーワールドカップ以来の10番での先発だったSO松田力也は、「セットプレーの最初のフェーズで相手に抱えられて、いい勢いでないと自分たちのアタックができないと改めて分かった。ピンチになることもあったし、ミスもあって返されることが多く、準備したことができなかった」と振り返り、「まだまだ若いチーム。負けを含めて財産になってくると思うし、僕の中でも改めて10番に対する思いを持つシリーズになった」と改めて気持ちを引き締めていた。
2トライを挙げた日本代表のCTBディラン・ライリーは、「試合中にいいところもあったが、スタートで後手を踏むとそこからリカバリーするのが大変になる。いいスタートを切って、それを80分プレーする必要がある」と指摘する。
後半のプレーについてライリーは、「後半はうまく適応して自分たちが先手を取って自分たちの試合展開に持ち込むことができた。まだ今年のテストマッチは数試合残っている。今日を大きな学びにして、レビューをして次につなげたい」と話した。
日本代表は次戦、8月下旬に始まるパシフィック・ネーションズ・カップに臨み、バンクーバーでのプールB初戦でカナダ代表戦と対戦する。
日本代表 イタリア戦試合登録メンバー:
1 茂原隆由 (静岡ブルーレヴズ)
→17 岡部崇人 (横浜キヤノンイーグルス)、前半37分
2 原田 衛 (東芝ブレイブブルーパス)
→16 坂手淳史 (埼玉パナソニックワイルドナイツ)、後半9分
3 竹内柊平 (浦安D-Rocks)
→18 為房慶次朗 (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半29分
4 桑野詠真 (静岡ブルーレヴズ)
→19 サナイラ・ワクァ (花園近鉄ライナーズ)、後半0分
5 ワーナー・ディアンズ (東芝ブレイブルーパス)
6 サウマキ アマナキ (コベルコ神戸スティーラーズ)
→20 テビタ・タタフ (ユニオン・ボルドー・ベグル)、後半9分
7 リーチ マイケル* (東芝ブレイブルーパス東京)
8 ファウルア・マキシ (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
9 小山大輝 (埼玉パナソニックワイルドナイツ)
→21 藤原 忍 (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半0分
10 松田力也 (トヨタヴェルブリッツ)
→22李 承信 (コベルコ神戸スティーラーズ)、後半8分
11 長田智希 (埼玉パナソニックワイルドナイツ)
12 サミソニ・トゥア (浦安D-Rocks)
13 ディラン・ライリー (埼玉パナソニックワイルドナイツ)
14 ジョネ・ナイカブラ (東芝ブレイブルーパス東京)
→23 山沢拓也 (埼玉パナソニックワイルドナイツ)、後半22分
15 矢崎由高 (早稲田大学)
注意: * はキャプテン
イタリア代表 試合登録メンバー:
1 ダニーロ・フィスケッティ (Zebre Parma)
→17 ミルコ・スパニョーロ (Benetton Rugby、後半8分
2 ジャコモ・ニコテラ (Stade Francas)
→16 ジャンマルコ・ルッケージ (Toulon)、後半8分
3 マルコ・リッチオーニ (Saracens)
→18 シモーネ・フェラーリ (Benetton Rugby)、後半8分
4 ニッコロ・カンノーネ (Benetton Rugby)
5 アンドレア・ザンボニン (Zebre Parma)
6 ロス・ヴィンセント (Exeter)
7ミケーレ・ラマロ* (Benetton Rugby)
→20 マヌエル・ズリアーニ (Benetton Rugby)、後半21分
8 ロレンツォ・カンノーネ (Benetton Rugby)
→19 フェデリコ・ルッツァ (Benetton Rugby)、後半35分HIA
9 マルティン・パジェレロ (Lyon)
→21 アレッサンドロ・ガルビージ (Benetton Rugby)、後半21分
10 パオロ・ガルビージ (Toulon)
→22 レオナルド・マリン (Benetton Rugby)、後半35分HIA
11 ヤコポ・トゥルッラ (Zebre Parma)
12 トンマーゾ・メノンチェッロ (Benetton Rugby)
13 ファン・イグナシオ・ブレックス (Benetton Rugby)
14 ルイス・ライナー (Benetton Rugby)
→23 マルコ・ザノン (Benetton Rugby)、後半5分
15 アンジェ・カプオッツォ (Stade Toulousain)
注意:*はキャプテン