仙台でのナイトゲームに15,903人の観客を集めた試合で、日本代表がいくつかの表情を見せた。

日本代表のスタートは悪くなかった。新たに超速ラグビーの確立を目指すジョーンズ指揮官が「これ以上ない」と評価した立ち上がりを見せた。キックオフから速いペースで攻撃を畳みかけて相手を圧倒。試合開始3分でWTBジョネ・ナイカブラが先制トライを奪い、SO李承信が2点を加えた。

その後、ジョージアがPG2本、日本がPG1本を決めて、前半半ばまでに日本が10-6とリードしたが、状況が変わったのは前半25分。日本は22メートル内に攻め込まれた場面で守備に懸命のFL下川甲嗣が、今月から厳しい取り締まりの対象となったクロコダイル・ロールによる危険なファウルでイエローカードを受けて一時退場。検証の結果、その数分後にレッドカードの判定となり、日本は残り60分を14人で戦うことになった。

しかし、日本は数的不利になりながらも、強力なFWを中心に推進力を持って攻めるジョージアに対して食い下がろうとするが、ペナルティが増えて苦しい展開になる。

ヨーロッパ・チャンピオンシップで7連覇中のジョージアは、前半20分にペナルティで得たラインアウトからモールで押し込んでHOヴァノ・カルカゼがトライを決めて11-10と逆転する。

日本は直後に李のPGで13-11と再びリードを奪ったが、その3分後にジョージアに押し込まれ、SHミヘイル・アラニアのトライで13⁻18のビハインドとなった。

粘る日本は後半16分、李がこの日3本目のPGを決めて16-18と点差を詰めると、後半24分には相手ゴール前のペナルティからフェーズを重ねて攻め込み、最後にパスを受けたWTB長田智希が左サイドに飛び込んでトライを奪い、李が2点を加えて23-18と逆転に成功した。

その後も日本はベンチから山沢拓也、ティエナン・コストリー、坂手淳史、さらにテストマッチデビューとなった小山大輝らを送り込み、攻勢を強めたが、後半途中出場のサナイラ・ワクァが後半32分に不当なプレーでイエローカードを受け、日本はFWを2人欠き、残り時間を13人で戦うことになった。

この状況をフルに活かしたジョージアは後半34分、FWを中心に攻め込むと、ゴール前のラックからLOギオルギ・ジャヴァヒアがインゴールで押さえて23-23の同点に。そして、SOルカ・マトカヴァがコンバージョンを決めて2点を加え、25-23で振り切った。

ジョーンズHC、「実力不足」

 先発で9番を務めたSH斎藤直人は、「結果を残せなかったのは本当に残念。(先制の)トライをした後に自分たちのペナルティからPGで6点を失ったし、人が少なくなったあたりから、少しずつ規律の乱れが出て勢いが相手に渡ってしまった」と振り返った。

斎藤とハーフでペアを組んだ李は、「先制トライでいい入りができたが、80分間、一貫性を持って自分たちがコントロールできていなかった。それがスコアに現れた」と、ゲームマネジメントやエリアコントロールの不備を悔やんだ。

だが、その一方で、ペナルティのチャンスにクイックで積極的に攻撃を仕掛けてトライできた点は、ポジティブな点だと語った。

日本代表LOリーチマイケルも、「満足な結果ではない」と厳しい表情を崩さなかったが、「日本代表らしい戦いも見せた」と部分的には良い面もあったと受け止めた。

そして、日本代表キャプテンは「チームは成長している。反省点をクリアして次へ向けて準備したい。このチームは4年後に必ず結果を出す」と前を向いた。

ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは、「ジョージアにはおめでとうと言いたい。彼らはやるべきことをやって勝利を手にした。我々も勝つチャンスはあったが、その状況をうまく使うことができなかった。実力不足」と言った。

日本代表指揮官は、「選手の努力は誇りに思う」としながら、「一人少ない状況で60分を戦うのは難しいが、それが最後の10分にもう一人いなくなれば、かなり難しい。我々にそれを打開するだけの力はなかった」と述べた。

さらに、「レッドカードで退場者を出して落ち着きを失い、守備が崩れたのが敗因。その間に相手に得点を稼がれたところもあった」と指摘して、「我々にとっては今後の糧になる、大きな学びとなった」と語った。

日本代表は、6月22日のイングランド代表戦に続いてテストマッチは2連敗。次戦、7月21日に札幌でイタリア代表と対戦する。

斎藤は、「イングランド戦に比べれば、間違いなくチームとして成長しているが、結果がすべて。次のイタリア戦で必ず勝ちたい」と次戦へ向けて意気込んだ。

ジョージアは日本から2014年以来の白星

 日本に2015年以降3連敗中のジョージアは、伝統的に強さを誇るFWのみならず、選手個々がフィジカリティの高さと推進力のあるパワーを発揮。特に敵陣22メートル内に入れば、ペナルティで得たラインアウトからモールで押し込む形で着実に得点に結びつけた。

2014年11月のトリビシでの白星以来10年ぶりに日本から勝利を奪ったジョージアの選手たちは、喜びを爆発させた。

ジョージア代表キャプテンのNO8ベカ・ゴルガゼは「勝因はセットプレー、特に前半からラインアウトのモールドライブがうまくいった」と満面の笑みを見せた。

今年からチームを率いる元イングランド代表のリチャード・コクリルヘッドコーチは、「勝ててうれしい。日本はほとんどの時間、一人少ない状態で戦ってとても良いパフォーマンスを見せたと思う。だが、我々のチームは難しい状況にも勝つための方法を見つけて戦った。評価したい」と語った。

ジョージアは来日前の今月5日にホームで敗れたフィジー代表戦後に手にした日本代表からの勝利で、今夏のテストマッチの成績を1勝1敗として、7月20日にシドニーにて行われるオーストラリア代表との次の対戦へ向かう。

日本代表試合メンバー:

1 茂原隆由(静岡ブルーレヴズ)

 →17 岡部崇人(横浜キヤノンイーグルス)、後半8分

2 原田 衛(東芝ブレイブブルーパス)

 →16 坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、後半25分

3 竹内柊平(浦安D-Rocks)

 →18 為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半35分

4 リーチ マイケル*(東芝ブレイブルーパス東京)

5 ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)

6 ファウルア・マキシ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

7 下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス)

8 テビタ・タタフ(ユニオン・ボルドー・ペグル)

 →19 サナイラ・ワクァ(花園近鉄ライナーズ)、後半8分

9 斎藤直人(スタッド・トゥールーザン)

 →21 小山大輝(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、後半28分

10 李 承信(コベルコ神戸スティーラーズ)

 →22 山沢拓也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、後半25分

11 長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

12 サミソニ・トゥア(浦安D-Rocks)

13 ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

14 ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)

 →23 根塚洸雅(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半28分

15 矢崎由高(早稲田大学)

注意: * はキャプテン

ジョージア代表試合メンバー:

1 ゴオルギ・アハラゼ (ASM Clermont)

 →17 ルカ・ゴギナヴァ (Mont de Marsan)、後半10分

2 ヴァノ・カルカゼ (Montpellier)

 →16 ルカ・ニオラゼ (Aurillac)、後半16分

3 イラクリ・アプツィアウリ (Lyon)

 →18 ギオルギ・ジマナシュビリ (ASM Clermont)、後半29分

4 ヴラディメリ・チャチャニゼ (Black Lion)

 →19 ミヘイル・バブナシュヴィリ (Black Lion)、後半16分

5 ギオルギ・ジャヴァヒア (Grenoble)

6 ギオルギ・ツツキリゼ (Black Lion)

 →20 ルカ・イヴァニシュヴィリ (Black Lion)、後半7分

7 ベカ・サギナゼ (Lyon)

 →21 トルニケ・ジャラゴニア (Provence)、後半25分

8 ベカ・ゴルガゼ* (PAU)

9 ミヘイル・アラニア (Aurillac)

 →22 ヴァシル・ロブジャニゼ (Oyonnax)、後半7分

10 ルカ・マトカヴァ (Black Lion)

11 アレクサンデル・トドゥア (Black Lion)

12 ゴイルギ・クヴェセラゼ (Grenoble)

13 デムリ・タプラゼ (Black Lion)

14 アカキ・タブツァゼ (Black Lion)

15 タヴィト・ニニアシュヴィリ (Lyon)

注意:* はキャプテン