「若手にチャンスを与える」(エディー・ジョーンズヘッドコーチ)として、10-36で敗れた6月29日の第1戦から先発メンバーをほとんど変えずに臨んだ試合で、チームは一週間前とから攻守にプレーを改善し、粘りのディフェンスとキックを効果的に織り交ぜたプレーでペースをつかんだ。

先発の入れ替えは前節リザーブ出場だったSH斎藤直人と14番に追加招集のWTB高橋汰地を起用するのみに留めたが、「80分間全員がオンでいられた」(斎藤)という粘り強い守備が機能。試合開始からプレッシャーをかけて、マオリ・オールブラックスのミスを誘って思うような攻撃をさせず、前半を無失点で折り返した。

得点は前半⒑分、イングランド戦から3戦連続先発出場のFB矢崎由高の相手の背後へのキックを起点に22メートル内に攻め込み、相手のペナルティを得ると、素早いリスタートからショートサイドでパスを受けたCTBサミソニ・トゥアが飛び込んで先制トライをマーク。前半22分にはSO山沢拓也のPGで3点を加えた。

ジャパンXVは前半途中出場のPR竹内柊平が前半36分にイエローカードを受けて数的不利になり、相手に攻め込まれたが、PR為房慶次朗らが身体を張って相手のノックオンを誘って切り抜け、8⁻0リードで前半を折り返した。

後半、マオリ・オールブラックスが盛り返し、開始5分でラインアウトからのモール攻撃でHOカート・エクランドがトライ。CTBラメカ・ポイヒピのコンバージョンも決まって1点差に詰められたが、後半10分に山沢がPGを決め、その3分後には竹内がゴール前のラックから持ち出して5点を加え、山沢のコンバージョンも成功して得点を畳みかけた。

後半27分、マオリ・オールブラックスにラインアウトから後半出場のHOタイロン・トンプソンのトライとコンバージョンで18-14とされたが、直後にPRベネット・クメロアにイエローカードが出ると、ジャパンXVは矢崎のPGと、途中出場のHO佐藤健次のトライで加点して振り切った。

「勝つために準備してきた。勝ててよかった」と話し、チャンスにしっかり得点でき、我慢強い守備で相手に簡単に得点を許さず、最後まで全員が集中を切らさず「オン」でいられた点を手ごたえに挙げた。

山沢は「キックでも相手にプレッシャーをかけることを意識していた」と明かし、「個人的にはミスもありましたが、チームとしてのディフェンスがすごくよかった。それが結果的に相手の好きなアタックをうまく止められた部分もあった」と振り返り、「どんな相手でも、強いプレッシャーがある中でもしっかりプレーができるようにしていきたい」と述べた。

日本ラグビーにとって大きなステートメント

先週までの試合で「よい時間帯が増えている」と手ごたえを示していたジョーンズヘッドコーチは、「1勝1敗だが質の高い相手との対戦でとても良い2試合になった。2戦とも非常に良いスピリットと質を提供してくれたマオリ・オールブラックスに感謝したい」と述べた。

「今日の試合は先発の15人中13人が日本人選手だった。外国籍選手を差別するつもりなど毛頭ないが、日本ラグビーの強みを見たいと思っていたのでうれしく思う。日本ラグビーにとって大きなステートメント、大きな意味を持つものだ。相手に良いスピリットで戦い、我々にとって良いステップになった」と高く評価した。

特にスタートして3戦目で若手も多いチームにとって、勝利の意味は大きいと指揮官は言う。

「勝てば自信になるし、さらにハードワークできる。若手が多いチームは、こういう勝利で培われる自信は必要だし大切だ。これまで勝てていなかったマオリ・オールブラックスに勝てたことは、日本ラグビーにとって画期的な出来事だ」と語った。

ジャパンXVとしての試合はこれで終了。来週からは日本代表としてテストマッチ2連戦に臨み、7月13日に仙台でジョージア代表、21日に札幌でイタリア代表と対戦する。

山沢は、「ジャパンXVとして結構ハードなスケジュールで練習を積んで結果として勝てたことは次につながる。やろうとしてきたことは間違っていないと思うし、みんなも、もっとよくなると思う」と語った。

マオリAB、来年の再戦を熱望

 試合後、マオリ・オールブラックスのポイヒピ主将は、「ジャパンXVはプレッシャーをかけてきて、我々はミスが増えてしまった」と振り返り、不慣れな高温多湿の中でのプレーにも、「双方とも同じ条件。その中で日本の方がより良い試合をした」と述べた。

マオリ・オールブラックスのロス・フィリポヘッドコーチは、「ジャパンXVは先週よりも競争力が上がって、プレーが改善されていた。我々は前半ミスが多く、後半は良くなったが、40分間でプランを実行することはできなかった」と話した。

今回の遠征は1勝1敗に終わったが、来年の再戦の意向を訊かれると、「ぜひやりたい。1戦目をジャパンXVとやって、2戦目にブレイブブロッサムズとやれたらうれしい」と語った。

ジャパンXVマオリ・オールブラックス第2戦

1 三浦昌悟(トヨタヴェルブリッツ)

 →17 岡部崇人(横浜キヤノンイーグルス)、後半19分

2 原田 衛*(東芝ブレイブルーパス東京)

 →16 佐藤健次(早稲田大学)、後半26分

3 為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋東京ベイ)

 →18 竹内柊平(浦安D-Rocks)、前半34分

4 桑野詠真(静岡ブルーレブズ)

5 小瀧尚弘(コベルコ神戸スティーラーズ)

 →19 サナイラ・ワクァ(花園近鉄ライナーズ)、後半7分

6 下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス)

7 山本 凱(東京サントリーサンゴリアス)

8 サウマキアマナキ(コベルコ神戸スティーラーズ)

 →20 ティエナン・コストリー(コベルコ神戸スティーラーズ)、後半11分

9 斎藤直人*(―)

 →21 小山大輝(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、後半19分

10 山沢拓也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

 →22 立川理道(クボタスピアーズ船橋東京ベイ)、後半30分

11 根塚洸雅(クボタスピアーズ船橋東京ベイ)

12 サミソニ・トゥア(浦安D-Rocks)

13 長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

14 高橋汰地(トヨタヴェルブリッツ)

 →23 ニコラス・マクカラン(トヨタヴェルブリッツ)、後半22分

15 矢崎由高(早稲田大学)

注意:* はキャプテン

 

マオリ・オールブラックス第2戦メンバー

1 ポウリ・ラケテストーンズ (Hurricanes)

 →17 オリー・ノリス (Chiefs)、後半14分

2 カート・エクランド (Blues)

 →16 タイロン・トンプソン (Chiefs)、後半14分

3 マルセル・レナタ (Blues)

 →18 ベネット・クメロア (Hurricanes)、後半28分

4 アイザイア・ウォーカーレアウェレ (Hurricanes)

5 ラグラン・マックワンネル (Blues)

 →19 マックス・ヒックス (Highlanders)、後半18分

6 テカマカ・ハウデン (Hurricanes)

 →20 ニコラ・ブロートン (Highlanders)、後半26分

7 ビリー・ハーモン* (Highlanders)

8 キャメロン・スアフォア (Blues)

9 サム・ノック (Blues)

 →21 テトイロア・タフリオランギ (Chiefs)、後半14分

10 リヴェス・レイハナ (Crusaders)

 →22 タハ・ケマラ (Crusaders)、後半0分

11 ベイリン・サリヴァン (Hurricanes)

 →23 コーリー・エヴァンズ (Blues)、後半19分

12 クイン・トゥパエア (Chiefs)

13 ラメカ・ポイヒピ* (Chiefs)

14 ジョシュア・モービー (Hurricanes)

15 コール・フォーブス (Blues)

注意:* はキャプテン