日本代表の世代交代を念頭に、若手主体の編成で臨んだマオリ・オールブラックスとの対戦で、ジャパンXVは試合開始から積極的に仕掛ける意識を前面に臨み、試合開始6分でHO原田衛選手(東芝ブレイブルーパス東京)のトライで先制した。しかし、敵陣22メートル内へ何度も攻め込む場面を作りながらミスを連発。得点に結びつけることができなかった。
トライ場面以外で13,565人の観客を沸かせたのは、5-5の同点で迎えた前半18分。自陣スクラムから左サイドをFB矢崎由高選手(早稲田大学)が抜け出し、WTB根塚洸雅選手(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)がフォロー。SO山沢拓也選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)がキックパスで右オープンに展開し、これを受けたWTBヴィリアメ・ツイドラキ選手(トヨタヴェルブリッツ)が右隅に飛び込んだが、最後の瞬間にWTBベイリン・サリヴァン選手(ハリケーンズ)のタックルを受けてボールを落下。トライにはならなかった。
マオリ・オールブラックスは、試合3日前の来日で短い準備期間ながらもスーパーラグビーシーズン直後のフィットネスを活かし、切り替えの速さと連携したアタックを披露。22メートル内に進んだ回数はジャパンXVよりも少ないながらも、チャンスを得点に結びつける手堅さを披露。前半半ばとハーフタイム直前と2度のイエローカードを受ける時間帯もあったが、数的不利を感じさせないプレーでトライを重ねて勝利した。
先制を許した3分後にFLキャメロン・スアフォア選手(ブルーズ)のトライで同点にして、SOリヴェス・レイハナ選手(クルセイダーズ)のコンバージョンで均衡を破ると、28分にHOカート・エクランド選手(ブルーズ)、36分にFLビリー・ハーモン選手(ハイランダーズ)が5点ずつ決めて前半を5-17で終了。後半も開始3分でWTBベイリン・サリヴァン選手(ハリケーンズ)がトライを奪って優勢を維持すると、その後も途中出場のラメカ・ポイヒピ選手(チーフス)が2連続トライをマークして、36-5とリードしていた。
ジャパンXVは試合終了間際に根塚選手が、22日のイングランド戦に続く2戦連続トライで10⁻36としたが、そこまでだった。
ジョーンズHC、チーム努力を評価
「負けるのは大嫌い」というジャパンXVを率いるエディ―・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは、「結果に対しては怒りを感じている」としながらも、「アタックの仕方には感心したし、チームの努力は素晴らしかった。学びの多い試合になった」と評価した。
指揮官によれば、敵陣22メートル内に入ったのは相手の7回に対してジャパンXVは11回で、「チャンスを作れていたがフィニッシュに至らなかった」と振り返り、連発したミスについては「基礎的なスキルが足りない。ミスから学んで練習の質を上げていくしかない」と厳しかった。
共同キャプテンを務めて後半途中から出場したSH斎藤直人選手も、「ブレークしたあとのミスが本当に多かった。チャンスを作れたところで(得点を)取れないと勝てない」と話し、根塚選手は「22メートルに入ってから取り急いでいる。もう少し練習で突き詰めていかないといけない。22に入ってから自分たちのラグビーができるようにするのが、これからの課題」と指摘した。
一方、ジョーンズヘッドコーチは、イングランド代表戦で代表デビューした早稲田大学の矢崎選手を2戦連続で先発起用。さらに後半にはHO佐藤健次選手(早稲田大学)、PR森山飛翔選手(帝京大学)、FL本橋拓馬選手(帝京大学)と3人の大学生選手をベンチスタートで送り出した。
ジャパンXV指揮官は、「アマチュアの選手がプロの試合に出た。すごいこと」と話し、矢崎選手についても、「プライドと情熱、フィジカルの高い相手に対して、恐れずにプレーしてイングランド戦より良いところが多く見られた。このまま成長すれば、良い選手になる」と高い期待を示した。
矢崎選手は、「スペースがあったら仕掛けることが、少しは形になったかと思う。FWとコミュニケーションとって、改善できた部分も多くあった」と振り返り、佐藤選手も、「今回1試合を経験したことで、少しずつゆとりが出てくると思う。もっともっとやらなくてはいけないことも分かった。焦らずしっかりとやっていきたい」と話した。
マオリ・オールブラックスHC、選手を誇りに
マオリ・オールブラックス主将のハーモン選手は、「日本が速いスピードで仕掛けてくることは分かっていたので、こちらがボール速度を落としてプレーすることでチャンスを作れると思っていたし、実際にそうなった」と振り返り、22メートル内の攻防についても「プレッシャーを与えてうまく守ることができた」と話した。
一方で、日本が試みているプレーについて、ハーモン主将は「着実に進んでいるし、今後どんどん良くなって行くだろう」と言葉を続けた。
マオリ・オールブラックスのロス・フィリッポヘッドコーチは、6月17日に急逝したコナー・ガーデンバショップ選手(ハイランダーズ)に言及し、「親しい友人が亡くなり、この一週間は本当に大変だったが、選手たちは、このジャージを着てプレーする意義を心から理解しているし、チームには成熟した選手が多く、経験を活かすことができている。そのおかげで、短い準備期間でもこの結果を残すことができた。選手たちがやるべきことを忘れずにしっかりプレーしてくれたことは誇りに思う」と語った。
ジャパンXVとマオリ・オールブラックスの第2戦は7月6日、愛知県の豊田スタジアムにて行われる。