2015年ワールドカップ以来8年ぶりに指揮を執るエディー・ジョーンズヘッドコーチを迎えての初陣で、日本代表は昨年のワールドカップで4位に入ったイングランド代表に対して、先発とリザーブ各4人の8人が代表デビューという若いチームで臨み、8トライを許して敗れたが、チームの現在地を確認。新たに取り組んでいる「超速ラグビー」の片鱗を披露した。

日本は試合開始直後に得たPGをSO李承信選手が決めて3点を先制。勢いと速さのある攻撃を仕掛け、スクラムやラインアウトなどのセットピースでも健闘したが、攻め込んだところでハンドリングミスが多発。チャンスを作りながら得点に結びつけられなかった。

イングランドは前半15分頃から圧力をかけて試合を進め、前後半それぞれ4本のトライを獲得。後半は2度にわたってイエローカードが出る時間帯がありながら、数的不利を感じさせないパワーと圧力で加点。SOマーカス・スミス選手は、トライ1本とコンバージョン4本を決めたほか、前半にはWTBイマニュエル・フェイワボソ選手とCTBヘンリー・スレード選手へキックパスを通して彼らのトライをお膳立てした。スレード選手も1トライと2コンバージョンを決めた。

序盤の攻勢に続いて日本が再び良さを見せたのは後半15分過ぎからだった。

後半途中からHO坂手淳史選手、SO松田力也選手、LOサウマキアマナキ選手、FB山沢拓也選手らテストマッチ経験者らが次々と出場して勢いのある攻撃を展開。後半26分、22メートルライン付近のラインアウトから左サイドへ展開し、WTB根塚洸雅選手が左隅に飛び込んでトライを奪った。

さらに、その3分後にはLOワーナー・ディアンズが抜け出し、最後はパスを受けたFB山沢選手が5点を加えた。松田選手が2本ともコンバージョンを決めて17⁻45と点差を詰めた。2連続トライを奪って国立競技場に駆け付けた44,029人のファンを沸かせた。

だが、勝利には至らず、イングランドとの通算対戦成績は12戦全敗となった。

リーチ選手、新スタイルに好感触

 FLリーチマイケル選手は、「自分たちが目指している超速ラグビーができたところもあった」と、10日間の宮崎合宿で取り組んだ新しいプレースタイルに好感触を示し、「良い時間をどんどん伸ばしていきたい」と言った。

だが同時に、この試合で85キャップ目を獲得した日本代表キャプテンは、「フィジカルの差を感じた。ディフェンスに自分たちのエネルギーを使う部分がたくさんあった。反省点は多い。学んだことを次へ活かしたい」と話した。

ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは、「結果は残念だがポジティブな要素が多かった」と話し、「セットピースがよかったので、強くタフでパワフルなイングランドを相手にファイトすることができた。ただ、作ったチャンスをフィニッシュに持ち込むところは課題」と指摘した。

指揮官は8人の選手が初キャップを獲得したことに言及して、「日本の未来にとって素晴らしいこと。可能性を見せた」と評価した。

日本代表は、次戦はジャパンXVとしてマオリ・オールブラックスとの2連戦に臨み、6月29日に東京の秩父宮、7月6日に愛知県の豊田スタジアムで対戦。その後は7月13日に仙台でジョージア代表、21日に札幌でイタリア代表とのテストマッチ2試合を戦う。

ジョーンズヘッドコーチはマオリ・オールブラックス戦へ向けて、「勝利と選手層を上げたい。2027年ワールドカップでトップ4に入るには、各ポジションに3人は必要。そのプロセスを始める」と語った。

イングランド代表、8トライの勝利

7月上旬にニュージーランドとの2連戦を控えるイングランドは、序盤は日本に押されたが、前半14分にゴール前のラックからFWが持ち込み、最後はFLチャンドラー・カニンガムサウス選手がトライ。SOマーカス・スミス選手のコンバージョンも決まって7-3と逆転すると、地力を発揮した。

前半24分には中盤でのラインアウトからパスを受けたスミス選手が抜け出してインゴールへ走り込み、その5分後にはスミス選手の右アウトサイドへのキックパスをWTBイマニュエル・フェイワボソ選手が受けてインゴールに持ち込み、2連続トライで21⁻3とリードを広げ、ペースをつかんだ。

ハーフタイムを前後でさらに3トライを獲得。前半終了間、スミス選手の右大外へのキックパスを受けたCTBヘンリー・スレード選手がインゴールへ駈け込んで5点を加え、26⁻3で前半を終了。ハーフタイム直後にもSHアレックス・ミッチェル選手、NO8ベン・アール選手が次々と決めて、優勢に試合を進めた。

イングランドは後半15分にスミス選手が不当なプレーでイエローカードを受けて数的不利になるが、その間にもベンチスタートのSHハリー・ランドール選手が5点を決め、CTBヘンリー・スレード選手がコンバージョンを成功させて45⁻3と点差を広げた。

日本に2連続トライを許し、試合終盤にはチャーリー・ユールズ選手が危険なプレーでイエローカードでピッチを去り、その後レッドカードの処分となったが、試合終了直前にFLサム・アンダーヒル選手のトライとスレード選手のコンバージョンを決めて、52⁻17で勝利した。

キャプテンのHOジェイミー・ジョージ選手は、「厳しいコンディションの中で難しい試合になったが、結果を得られたことはうれしい。コンディションに慣れるまで時間がかかったが、慣れてからは効率よくボールを動かしてスペースを突いて、バックスを活かして戦えた」と話した。

スティーブ・ボーズウィックヘッドコーチは、「日本はボールの動かし方がとてもよく、特に試合の立ち上がりはしっかり守備をしないとならなかった」と振り返り、「短い準備期間でここまでできている。これから練習を重ねればもっと良くなるはずだ。可能性は素晴らしい」と述べた。

イングランドは7月6日、13日にオールブラックスと対戦する。

ボーズウィックヘッドコーチは、「2週間後へパフォーマンスを上げる必要がある」としたが、日本戦へ向けて2度のセッションで得た結果を評価。「チームできちんと合わせたのは出発前と来日後に1回ずつのみだったが、選手たちのゲームの応用はとても良かった。調子はこれから上がっていくだろう」と話した。

日本代表試合メンバー:

1 茂原隆由 (静岡ブルーレヴズ)

 →17 三浦昌悟(トヨタヴェルブリッツ)、後半23分

2 原田 衛 (東芝ブレイブルーパス東京)

 →16 坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、後半9分

3 竹内柊平 (浦安D-Rocks)

 →18 為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半7分

4 サナイラ・ワクァ (花園近鉄ライナーズ)

 →19 サウマキ アマナキ(東京サントリーサンゴリアス)、後半15分

5 ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス)

6 リーチ マイケル*(東芝ブレイブルーパス東京)

7 ティエナン・コストリー(コベルコ神戸スティーラーズ)

 →20 山本 凱(東京サントリーサンゴリアス)、後半20分

8 ファウルア・マキシ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

9 斎藤直人(東京サントリーサンゴリアス)

 →21 藤原 忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半15分

⒑ 李 承信(コベルコ神戸スティーラーズ)

 →22 松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、後半15分

11 根塚洸雅(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

12 長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

13 サミソニ・トゥア(浦安D-Rocks)

14 ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)

15 矢崎由高(早稲田大学)

 →23 山沢拓也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、後半15分

注意:* はキャプテン

イングランド代表試合メンバー:

1 べヴァン・ロッド (Sale Sharks,)

 →17 ジョー・マーラー (Harlequins)、後半4分

2 ジェイミー・ジョージ* (Saracens)

 →16 セオ・ダン (Saracens)、後半4分

3 ダン・コール (Leicester Tigers)

 →18 ウィル・スチュアート (Barth Rugby)、後半17分

4 マロ・イトジェ (Saracens)

5 ジョージ・マーティン (Leicester Tigers)

6 チャンドラー・カニンガムサウス (Harlequins)

 →20 トム・カリー (Sale Sharks)、後半17分

7 サム・アンダーヒル (Bath Rugby)

8 ベン・アール (Saracens)

9 アレックス・ミッチェル (Northampton Saints)

 →21 ハリー・ランドール (Bristol Bears)、後半9分

⒑ マーカス・スミス (Harlequins)

 →22 フィン・スミス (Northampton Saints)、後半25分

11 トミー・フリーマン (Northampton Saints)

 →19 チャーリー・ユールズ (Bath Rugby)、後半25分

12 オリー・ローレンス (Barth Rugby)

13 ヘンリー・スレード (Exeter Chiefs)

14 イマニュエル・フェイワボソ (Exeter Chiefs)

 →23 トム・ローバック (Sales Sharks)、後半20分

15 ジョージ・ファーバンク (Northampton Saints)

注意:* はキャプテン