エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチが5月30日、6月の合宿に参加する日本代表メンバーを発表。2027年ラグビーワールドカップでのトップ4入りを目標に、代表チーム再構築に乗り出す指揮官の意気込みが凝縮した編成となった。
ジョーンズヘッドコーチは就任発表からの約半年間にリーグワンの試合はもちろん、高校や大学の試合やU20日本代表の合宿や遠征など、トップから若い年齢層まで幅広く勢力的に視察した。
2012年から2015年まで日本代表を率いた指揮官は、その前から大学ラグビーやサントリーサンゴリアスの指導に関わるなど日本とのつながりは深い。その深い理解を基に、将来の日本代表を支える新たな戦力として若手に注目。4月には将来の日本代表選手を育てるために「ジャパン・タレント・スコッド・プログラム」で代表候補となる大学生を集めた活動もスタートさせている。
今回もスコッド発表前日までの10日間には、代表候補選手を招集して菅平合宿も実施。これらの活動を経て招集されたのが今回のメンバーだ。
「2023年ラグビーワールドカップを経て、日本代表にはチームの再構築、2027年ワールドカップでトップ4に入るための土台作りを始める必要がある。それが今日から始まる」とジョーンズヘッドコーチはスコッド発表後の会見で言った。
今回のスコッド35人のうち、ラグビーワールドカップ経験者は15人。それに対してノンキャップの選手は12人を数える。
ノンキャップ組にはPR森山飛翔選手(帝京大学)とHO佐藤健次選手(早稲田大学)の二人の大学生がフロントローに入り、招集された3人のSHのうち小山大輝選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)と藤原忍選手(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)の二人は今回代表デビューを待つ。
代表戦5キャップ未満という選手もWTB根塚洸雅選手(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)やLOサナイラ・ワクァ選手(花園近鉄ライナーズ)ら6人で、若手主体のフレッシュな編成となった。
ワールドカップ経験者では、2015年から3大会に出場しているFLリーチマイケル選手(東芝ブレイブルーパス東京)が今回のメンバーで最多の84キャップを保持する。そのほか、HO坂手淳史選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、SO松田力也選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、CTBディラン・ライリー選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、フランスでプレーするNO8テビタ・タタフ選手(ユニオン・ボルドー・ベグル)ら、若手の多いチームで彼らの存在と経験値は重要になる。
また、LO本橋拓馬(帝京大学)選手と弟のSO本橋尭也(帝京大学)、尭也選手とU20日本代表で同僚の FB矢野由高(早稲田大学)は練習生として合宿に参加。そのほか、バックアップメンバー33人(フォワード14人、バックス19人)も発表し、チームの底上げと、負傷者などが出た場合に速やかに対応できる体制も整えた。
一方、PR稲垣啓太選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、FB松島幸太朗選手(東京サントリーサンゴリアス)、SH福田健太選手(トヨタヴェルブリッツ)らは怪我の影響で、LOジャック・コーネルセン選手は家族の事情で招集が見送られた。
ジョーンズヘッドコーチは、2023年ワールドカップで日本代表の年齢層が出場チームの中でも高かったことに言及。「若手を入れる必要がある。U20年代からチェックしてきていて、トレーニングキャンプでも良い印象を残した若手がいた。彼らが日本代表として成長してくれると信じている」と説いた。
指揮官は、日本代表が世界で成功を収めるために新たなプレースタイルとして『超速ラグビー』の導入を掲げている。日本人の特性を活かして、どのチームよりも素早く動いて相手を圧倒するプレースタイルだ。
「ここから2027年ワールドカップへ向けてチーム構築をはじめて、今回の選手たちは日本の人々に誇らしく感じてもらえるプレーをする最初の機会を得ることになる」
「これまでと異なるスタイルの『超速ラグビー』の構築に初日から取り組む。超速ラグビーを習得するのは大変だが、まずは(6月22日の)イングランド戦でその兆候を見たいと考えている」と語った。
ニュージーランドと南アフリカの代表レジェンドがコーチ入り
コーチングスタッフには、元ニュージーランド代表PRのオーウェン・フランクスと元南アフリカ代表LOヴィクター・マットフィールドというワールドカップ優勝経験者が加わった。
2011年と2015年ワールドカップ優勝のフランクスは、ラグビーリーグの元ニュージーランド代表でアルゼンチン代表ディフェンスコーチも務めたディビッド・キッドウェル、東芝ブレイブルーパス東京のリーグワン初優勝を支えたダン・ボーデンの二人とともにアシスタントコーチを務め、2007年ワールドカップ優勝のマットフィールドはテクニカルアドバイザーに就いた。
ジョーンズ指揮官は、フランクスとマットフィールドコーチについて「彼らの選手としての経験を若手選手に伝えることは非常に重要」と指摘する。
また、イングランド代表やオーストラリア代表でジョーンズヘッドコーチと仕事を共にしたニール・ハットリーがコーチングコーディネーターとして加わり、ジョーンズヘッドコーチが前回日本代表を率いた2012-2015年にもチームを組んだジョン・プライヤーも、ハイパフォーマンスコーディネーターとして入閣した。
ジョーンズ指揮官は、「南アフリカ、ニュージーランド、ラグビーリーグ、イングランドからそれぞれの良い点を集約することは、日本ラグビーのアイデンティティと超速ラグビーの構築にプラスになると思う」と語る。
日本代表は6月6日から宮崎で合宿をスタート。初戦は6月22日に東京の国立競技場で行う「リポビタンDチャレンジカップ2024」イングランド代表戦となる。
その後、6月29日に東京の秩父宮、7月6日には豊田でジャパンXVとしてマオリ・オールブラックスと2連戦を行い、日本代表として7月13日に仙台でジョージア代表、21日に札幌でイタリア代表と対戦する。
イングランド戦へ向けてジョーンズヘッドコーチは、「そこまで多くの時間はないが、十分な時間はあると思っている。日本人選手は世界でもっともタフで、ハードな練習に慣れている。今後はそれを賢くできるようにしたい」と言う。
目指すラグビーの遂行にはチーム全体で同じ絵を描いていることが不可欠と指摘し、「菅平合宿はすばらしかった。宮崎でも今まで以上の姿勢で臨んでくれることを期待している」と語った。
日本代表宮崎合宿参加メンバー:
フォワード
岡部崇人 (横浜キヤノンイーグルス、- caps)
竹内柊平 (浦安D-Rocks、3)
為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、-)
三浦昌悟 (トヨタヴェルブリッツ、9)
茂原隆由 (静岡ブルーレヴズ、-)
森山飛翔 (帝京大学、-)
坂手淳史 (埼玉パナソニックワイルドナイツ、41)
佐藤健次 (早稲田大学、-)
原田 衛 (東芝ブレイブルーパス東京、-)
下川甲嗣 (東京サントリーサンゴリアス、5)
ワーナー・ディアンズ (東芝ブレイブルーパス東京、11)
リーチ マイケル (東芝ブレイブルーパス東京、84)
サナイラ・ワクァ (花園近鉄ライナーズ、2)
ベン・ガンター (埼玉パナソニックワイルドナイツ、8)
サウマキ アマナキ (コベルコ神戸スティーラーズ、3)
アマト・ファカタヴァ (リコーブラックラムズ東京、7)
福井翔大 (埼玉パナソニックワイルドナイツ、3)
山本 凱 (東京サントリーサンゴリアス、-)
ティエナン・コストリー (コベルコ神戸スティーラーズ、-)
テビタ・タタフ(ユニオン・ボルドー・ベグル、16)
ファウルア・マキシ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、5)
バックス
小山大輝 (埼玉パナソニックワイルドナイツ、-)
齋藤直人 (東京サントリーサンゴリアス、19)
藤原 忍 (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、-)
松田力也 (埼玉パナソニックワイルドナイツ、37)
李 承信 (コベルコ神戸スティーラーズ、11)
髙橋汰地 (トヨタヴェルブリッツ、1)
ヴァリアメ・ツイドラキ (トヨタヴェルブリッツ、-)
ジョネ・ナイカブラ (東芝ブレイブルーパス東京、8)
根塚洸雅 (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、1)
長田智希 (埼玉パナソニックワイルドナイツ、7)
尾崎泰雅 (東京サントリーサンゴリアス、-)
シオサイア・フィフィタ (トヨタヴェルブリッツ、13)
ディラン・ライリー (埼玉パナソニックワイルドナイツ、18)
山沢拓也 (埼玉パナソニックワイルドナイツ、6)
注:所属のあとの数字はキャップ数