HSBCセブンズチャレンジャー2024はHSBC SVNS 2025への昇格につながるプレーオフ出場権をかけた大会で、5月18-19日に男子はドイツのミュンヘンで行われる第3戦が最終戦となる。そこでトップ4に入れば今季のSVNSシリーズで9~12位となったチームとともに5月31日-6月2日にマドリードで行われるプレーオフ大会へ出場できる。

男子セブンズ日本代表にとっては、1シーズンでのワールドシリーズのコアチーム復帰がかかるチャレンジャーシリーズだが、ドバイでの第1戦で5位、モンテビデオでの第2戦で10位と振るわず、現状は2戦を終えて総合ランキング7位と苦しいポジションにある。総合ランキング4位と5位は同じ勝ち点で並ぶドイツとホンコン・チャイナで、日本とは勝ち点11差。日本が4位プレーオフ圏に入るには、ミュンヘンで大幅な巻き返しが不可欠という状況だ。

だが、日本チームには悲観も動揺も感じられない。チームが目指すのはオリンピック。その最大目標へ向けた照準にはブレがなく、今回のミュンヘン大会も今夏のパリでの4年に一度の大会へ向けてチェックポイントとしてフル活用するつもりだ。

7人制日本代表の林大成選手は、「オリンピックでメダルを獲るという目標に向けた、新しいスタイルのラグビーが徐々にでき上がって来ていて、いいシーンが増えてきている。スタイルの完成はまだ先だが、自分たちがいま取り組んでいるところにどれだけ積極的にチャレンジして見せられるか。自分たちでも楽しみ」と言う。

7人制代表として47キャップを保持する林選手は、「(チャレンジャーシリーズは)代表戦として戦う公式戦なので、もちろん全試合で勝つつもりでいくし、優勝という目標はあるが、一番得たいものはオリンピックでメダルを獲るための自分たちの成長」と明かす。

昨年11月にアジア最終予選で優勝して今年7月のパリ・オリンピック出場を決めた日本は、その後、新たな取り組みに乗り出している。オリンピック予選突破のためのアジアでの戦いから、世界トップが集結するオリンピックの舞台でメダルを獲得するための戦いへ、プレースタイルのバージョンアップを図ってきた。

その影響で、1月のチャレンジャー第1戦ドバイ大会や3月の第2戦ウルグアイ大会では「形がしっかり出来上がっていなかった」と林選手は振り返り、チームの成績も伸び悩んだ。だがその後、日本チームは4月のフィジー遠征でフィジーセブンズとの練習試合3戦などを行い、「今は自信がある」と、新たなスタイルでのプレーに手ごたえを覚えている。

それだけに、今回のミュンヘンで何をどこまでできるか。チームにとっては重要なチェックポイントになる。

林選手は、「チャレンジせずに優勝してもオリンピックにはつながらない。思い切りチャレンジして、その上で優勝したい。失敗もオリンピックにつながる」と話す。

現在の代表メンバーには海外出身選手が不在という歴代セブンズ日本代表でも珍しい状況だが、今大会でキャプテンを務める石田吉平選手は、「日本人ならではの強さをしっかり出して、日本人でも世界で活躍できることを知らしめたい。そこを目標に頑張りたい」と言う。

石田選手もフィジー遠征での手ごたえに言及。「ほかの国と比べてもちょっと独特なフィジーに対して、通用したところがいっぱいあった。それが一番の収穫」と表情は明るい。

ミュンヘンのプール戦では、日本はシリーズ首位のウルグアイと同勝ち点ながら得失点差で2位につけるケニアと、3位で彼らを勝ち点4差で追うチリ、10位ポルトガルと同組で、日本にはプール戦から上位陣との厳しい戦いが待ち受ける。

各プール上位2位までか3位の中で上位2チームに入れば8強進出。大会はオリンピックと同じ方式で、その後、準決勝、3位決定戦、決勝が行われる。

パリ・オリンピックのセブンズ競技は7月24日に男子の戦いで幕を開ける。

その舞台へ腕を磨きたい日本にとって、ミュンヘンでの巻き返しで上位4チームに入り、5月31日からの来季SVNS昇格をかけたプレーオフに出られれば、さらに経験を重ねることができる。

東京オリンピックも経験している石田選手は、「チャレンジャーシリーズで今まで自分たちがやっていることを出して、出た課題を修正してオリンピックに臨みたい。チャレンジングな大会になると感じている」と語る。

男子セブンズ日本代表は、あらゆる機会をフル活用して今夏の大一番への準備を着々と進めている。