シンガポール・ナショナルスタジアムで行われたレギュラーシーズン最終ラウンドは最後の最後まで熱戦が繰り広げられた。
男子はアルゼンチンがシンガポール大会優勝は逃したものの、5位に入って総合順位トップを確定して初のリーグ制覇を達成し、大会はニュージーランドが優勝。女子はニュージーランドが総合勝ち点で並んでいたオーストラリアとの決勝を31-21で制して、大会優勝でリーグタイトルを獲得した。
かつてない激戦となった女子の今季タイトル争いは、決勝戦までもつれる展開となり、決勝の舞台にはシリーズ総合勝ち点で106と並んでいた2チームの対戦となった。
ニュージーランド女子ブラックファーンズは今季開幕のドバイ大会を2位でスタートし、ケープタウン3位、パース5位と苦しんだが、バンクーバー大会以降はロサンゼルス、香港と3大会連続優勝で総合順位トップに浮上。右肩上がりの好調を維持してシンガポールでもプール戦を3戦全勝で突破して、準々決勝で英国を24-5、準決勝でフィジーを33-22で退けて4大会連続で決勝に進出した。
一方、オーストラリアはドバイ、ケープタウンと2大会連勝の後に2位、4位、2位、3位と優勝から遠ざかり、ニュージーランドに勝ち点106で並ばれて大会を迎えたが、プール戦を3戦全勝で切り抜けると、準々決勝でアイルランドに24-14、準決勝でフランスに19-12と競り勝って決勝に駒を進めていた。
ライバル同士の顔合わせとなった決勝ではしかし、ニュージーランドが試合開始から勢いと勝利への執念を見せて、Michaela Blydeがキックオフ早々に先制。オーストラリアにMaddison Levi とIsabella Nasserの2連続トライを許したが、前半終了間際にBlydeが2本目を決めて12-14で後半に入ると、Jorja Millerらの力強いタックルとキャリーを活かして攻め、後半早々にBlydeが3本目を決めてハットトリックで逆転。さらにPortia Woodman-Wickliffe とStacey Waakaの連続トライで突き放した。
ハットトリックで勝利に貢献したBlydeは、「(リーグ制覇の)意味は大きい。シーズン序盤は不安定だったので、あまり先を考えたくなかったが、シンガポールは素晴らしい雰囲気で、この大会を勝ち取ってリーグ優勝を決めることができたのは本当に特別だ」とコメント。
「私たちは一試合ずつ取り組んで、すべてが最後の試合のように捉えて戦いたかったし、そうすることができた。不安定なところもあったが勢いを取り戻してここで6勝できた。本当に誇りに思う」と語った。
シンガポール大会3位にはフィジーに29-7と勝利したフランスが入り、5位は日本に19-17と競り勝ったアイルランド。7位は英国を17-5で破ったカナダ、9位は南アフリカとの接戦を5-0で制したアメリカで、11位にはブラジルに24-19で勝ったスペインが入った。
今シーズンの年間最終順位も確定。3位にはフランス(勝ち点104)が入り、アメリカ(85)、カナダ(80)、フィジー(68)、アイルランド(66)と続き、8位には英国(39)が入った。英国はプールC3位で準々決勝に進み、そこでニュージーランドに5-24で敗れたが、8位以内を確定させて、5月31日-6月2日にマドリードで開催されるグランドファイナル進出を決めた。
9位には、今大会6位に入った日本(34)が10位から1つ順位を上げ、以下10位ブラジル(32)、11位南アフリカ(23)、12位スペイン(17)で、9位以下の4チームは5月31日からのマドリードでのプレーオフに臨み、ワールドラグビーセブンズチャレンジャー2024上位4チームとともに来季の出場権をかけて戦う。
男子アルゼンチン、大会5位でリーグ初制覇
男子は、アルゼンチンが今季序盤から4大会連続決勝進出で3度優勝と好調な戦いを見せてきたが、後半戦に入ってロサンゼルスで5位、香港では9位と失速。シリーズ総合順位2位のアイルランドに勝ち点8差に詰められながらも総合首位を維持して最終ラウンドを迎えていた。
今回のシンガポール大会ではプールを2勝1敗で勝ち抜いて準々決勝でリーグ優勝ライバルのアイルランドに5-21で敗れて5位決定戦へ回った。そこで南アフリカと対戦。Tiaan PretoriusとSiviwe Soyizwapiに連続トライを許してハーフタイムで0-10と苦しい展開となったが、後半巻き返した。
Agustin Fragaがトライを決め、Tobias Wade のコンバージョンも決まって3点差に詰める。その後も南アフリカの圧力を受けてロングパスをインターセプトされるなど苦しみながらも粘り強くプレー。最後は相手陣内でプレッシャーをかけて相手がこぼしたボールをWadeが拾ってポスト下に持ち込んでトライ。コンバージョンも成功させて土壇場で逆転して14-10で勝利。5位確定でレギュラーシーズン初優勝を手にした。
「とても長かったし、いいことも悪いこともたくさんあった」と2009年に代表デビューしたアルゼンチンのGaston Revolは感慨深げに言った。
「タイトル獲得はとても難しい道のりだったが、このチームを信じて練習を続けて挑み続けてきた。僕らはこのタイトルに値すると思う。苦しい時もみんなが一つになって試合に勝つ。今日のハーフタイムの円陣でも、『互いを信頼して戦おう』という声が出ていた。これが僕らのチームだ」と明かし、「こうしてこの瞬間を迎えられて、素晴らしい。僕は今37歳だが、素晴らしい選手たちと一緒に今ここにいる」と語った。
男子の大会優勝はニュージーランドで、決勝でアイルランドに17-14で勝って、昨年のシンガポール大会に続いての優勝で今季最後の2ラウンドを連勝で終えた。
Leroy CarterとFehi Fineanganofoの連続トライで12-0とリードを奪い、前半終了間際にGavin Mullinに1トライを返され、コンバージョンも決まって5点差にされたが、後半に入ってDylan Collierが5点を加えて17-7と再びリードを広げた。
タイトル獲得を目指すアイルランドはHarry McNultyがトライを決め、Mark Rocheがコンバージョンを成功させて3点差に詰め、最後まで相手ゴールに迫ったがブレークダウンでペナルティを取られて万事休した。
英国がグランドファイナルへ
グランドファイナル出場1枠は、英国が3位決定戦でオーストラリアに26-7と勝利して、女子に続いて男子も8位に入って獲得した。
準決勝でアイルランドに12-15と惜敗して3位決定戦に回った英国だったが、勝たなければグランドファイナル進出を逃してプレーオフに回る厳しい状況だった。
試合序盤からMax McFarland、Robbie Fergussonが決めて前半を14-0で折り返すと、後半にはWill Homer、Kaleem Barretoが5点ずつ決めて、Barretoはコンバージョンを3本成功させて26-0と圧倒。終盤にイエローカードが出て一人少ない状況となったが、オーストラリアの反撃を1トライ1コンバージョンに抑えて勝利した。
この結果、大会を3位で終えた英国は勝ち点を53として、7位決定戦でフランスに19-17で勝利したアメリカを勝ち点1差で上回り、総合順位を9位から8位に順位を上げてグランドファイナル入りを決めた。
英国のFergusson主将は、「誰もが僕らのことは見捨てていたと思うが、選手はみんなが素晴らしい特長を出して挽回し、ここでの6試合を全力で戦い抜いた。グループとして一丸になれた。グランドファイナル出場でモナコでのオリンピック予選に向けていい位置につけることができた」と述べた。
なお、シンガポール大会9位はスペインに21-12で勝利したフィジー、11位はカナダに17-12と競り勝ったサモアだった。
この結果、シーズン総合順位ではアルゼンチン(勝ち点106)、アイルランド(104)に続いてニュージーランド(93)が5位から3位に、また、オーストラリア(83)が6位から4位に浮上。最終ラウンド前に3位につけていたフィジー(80)と4位だったフランス(80)はそれぞれ5位と6位となり、南アフリカ(68)が7位、英国(53)が8位で終了した。
9位となったアメリカ(52)はスペイン(36)、サモア(29)、カナダ(14)とともに5月31日から3日間マドリードで行われるプレーオフに出場し、ワールドラグビーセブンズチャレンジャー2024シリーズの上位4チームと来季の出場枠を懸けて対戦する。