レギュラーシーズン最終日の5月5日、2大会連続での8強入りとなったサクラセブンズがシンガポール・ナショナル・スタジアムの観客を沸かせた。
今大会、3日のプール戦からタフでアグレッシブな守備とミスの少ないパフォーマンスを披露。初戦はフランスに7-41と落としたものの、第2戦では大谷芽生選手の2トライなどでアメリカに22-12と勝利。2日目に南アフリカと対戦した第3戦では、辻崎由希乃選手が後半だけでハットトリックをマークするなど34-7で勝って、2勝1敗でプールBを2位に入り、香港大会に続いて2ラウンド連続で8強に進出した。
初の4強入りをかけた準々決勝では今季総合6位のフィジーと対戦。プールCを2勝1敗の2位で通過したフィジーに対して、守備で相手を押さえて前半終盤まで得点を許さなかったが、6分にAna Maria Naimasi選手にトライとコンバージョンで均衡を破られ、0-7でハーフタイムを迎えた。
サクラセブンズは後半開始から反撃を試みるが、細かなミスが重なり、10分にボールを奪われてAdi Vani Buleki選手に5点を加えられた。
しかし、日本は相手のスクラムでのハンドリングミスをついてボールを奪い、パスをつなぐと、今大会好調の平野優芽選手が走り抜けて5点を返した。さらに、残り時間2分を切って、スクラムから展開。最後は後半途中出場の西亜利沙選手がインゴールに持ち込んで10-12と2点差に迫った。
残り時間がない中で、サクラセブンズは相手のリスタートキャッチミスをついてボールを奪い、22 メートル内でボールを保持すると、矢崎桜子選手が抜け出してインゴールに迫った。スタジアムで大歓声が上がる中、しかし、ゴールライン手前でトライを狙うも、相手のタックルを受けてボールを落下。わずかに届かず、最後の笛となり、スタジアムの観客のため息を誘った。
終盤反撃もあと一歩
大会最終日に5位決定戦に臨んだ日本はアイルランドと対戦。1月下旬のオーストラリアのパース大会で初優勝を達成したアイルランドは、プールAをニュージーランドに次ぐ2勝1敗の2位で勝ち抜き、準々決勝で最終的に決勝に進んだオーストラリアに14-24で敗れて5位決定戦に回っていた。
その相手に、サクラセブンズは試合開始から積極的に攻め、開始早々に中村知春選手がパスを受けて抜け出し、クロスバーの下に先制トライ。内海春菜子選手がコンバージョンを決めて7-0のリードを奪った。
アイルランドもプレッシャーをかけ、敵陣22メートル内で日本のボールロストを誘い、これをAmee Leigh Murphy Crowe選手がインゴールに持ち込んで、Stacey Flood選手のコンバージョンも決まって同点にすると、前半終了間際には攻め込んだ日本のボールロストをついて、Murphy Crowe選手が回収して自陣から走り切って5点を加え、アイルランドが12-7と逆転した。
Murphy Crowe選手は後半開始早々にも自陣でパスを受けてインゴールまで走り抜けて、アイルランドが19-7とリードを広げた。
しかし、そこから日本は粘りを見せて直後に得たペナルティから西選手が持ち出し、パスを受けた中村選手が飛び込んでこの日2本目のトライで12-19とする。
さらに、残り1分を切って得たスクラムを起点に攻撃を展開し、最後は松田凛日選手がダミーパスで相手を欺いてインゴールに飛び込み、17-19とした。しかし、西選手のコンバージョンはわずかにポスト左に反れて同点には届かず、試合終了となった。
サクラセブンズは、細かなミスが響いて初の4強入りをあと一歩のところで逃し、最終ラウンドのシンガポール大会を今季最高の6位で終了。この結果、シーズン総合勝ち点を34として最後に順位を1つ上げ、9位でレギュラーシーズンを終えた。
グランドファイナルにはシーズン総合上位8チームが進出できるが、今大会で8位を確定させた英国と日本は勝ち点5差だった。
ミスを反省もプレーに手ごたえ
2大会連続での8強入りに、中村選手はキックオフでのボール獲得で保持率を上げるようにプレー改善を図ったと大会中に明かしていたが、「トップ4の機会を手にするには、全体的にまだミスが多かった」と反省点を挙げた。
一方で、チーム最多の68キャップを保持する中村選手は、「チームとしてチャレンジした証を課題として持って帰れることは、非常にありがたい。この舞台に立ち続け、少しだけ見えたトップ4への道をメンバー全員で死ぬ気で切り拓いていけるように、残りの時間を大切にしたい」と語った。
今夏のオリンピック出場も決めているサクラセブンズにとって、5月31日から6月2日にマドリードで行われるプレーオフは、来季のSVNS出場権獲得だけでなく、パリオリンピックへ向けた貴重な実戦の場でもある。
シンガポール大会で躍動感のあるプレーを見せた内海選手は、「チームとしてレベルの上がった反省ができることをプラスに捉えて、決して下を向かずに進んでいきたい」とポジティブな受け止めを示した。
約5年ぶりのワールドシリーズ参戦となった、15人制日本代表でもプレーする松田選手も、「ベスト4まで、あと一歩というところまで行けた。次の大会ではさらに上の順位を目指して、チーム全員で良い準備をしたい」と述べて、今後へ手ごたえを口にした。
マドリードでのプレーオフには、日本同様に今季シリーズで下位4チームとなったブラジル、南アフリカ、スペインと、ワールドラグビーセブンズチャレンジャー2024シリーズの上位4位までが参戦する。後者の顔ぶれは、5月18-19日にポーランドで行われるチャレンジャーシリーズ最終の第3戦で決定。現在のところ、中国が勝ち点40でトップに立ち、アルゼンチン(34)、ベルギーとウガンダが勝ち点28で並び、ケニアが24で5位につけている。
なお、男子のプレーオフとドイツで行われるチャレンジャーシリーズ最終戦も、女子と同時期に開催される。現在、男子チャレンジャーシリーズの上位には、ウルグアイとケニアが36で並び、得失点差でウルグアイが1位に立つ。以下、チリが勝ち点32で3位につけ、ドイツとホンコン・チャイナが26で並び、得失点差でドイツが4位、ホンコン・チャイナが5位で追っている。男子日本は勝ち点15で7位。