昨シーズンのリーグワン上位4チームとスーパーラグビー・パシフィック2023準優勝のギャラガー・チーフス、同ベスト4のブルーズの計6チームによる初の国際交流戦The Cross-Border Rugby 2024が2月3日から2週にわたって開催された。

選手とチームの競争力アップとファンへ魅力的な試合提供を目指すリーグが、リーグ発足当初から画策してきた海外強豪勢との交流戦だ。昨年5月に日本ラグビー協会がニュージーランド協会と締結したアジア太平洋地域発展のための覚書に基づいて、新リーグ発足3年目で実現に至った。

対戦結果は、4日の第2戦で昨季2位の埼玉パナソニックワイルドナイツがチーフスに38-14で勝利したものの、その前日の第1戦では東京サントリーサンゴリアス(昨季4位)がブルーズに7-43と敗れ、10日には横浜キヤノンイーグルス(同3位)がブルーズに22-57と黒星。その数時間後に東京・秩父宮ラグビー場で開催された最終戦に登場した昨季優勝のスピアーズはチーフスに、前半半ばに一時リードを奪う健闘を見せたが30-35と惜敗した。

スピアーズのフラン・ルディケヘッドコーチは、「選手の成長とファンを増やす機会として貴重な機会だ。多くのポジティブな要素があった。両チームともに攻撃的なマインドセットで、互いにいい戦いができた。互いに主力を欠いていたが、我々には必要な試合だったし、若手がしっかり立ち上がって戦ってくれた。この試合からリーグ戦へ活かせることを多く得た」と総括した。

また、スピアーズ指揮官は、「日本の選手とチームの成長には、こういう世界クラスの相手と対戦することが必要だし良い事だと思っている。今日の試合で、我々は日本のチームが戦えることを示した。それは日本と世界のラグビーにとっていいことだ」と語った。

ルディケヘッドコーチは、欧州のクラブでヨーロピアンカップなどがあることに言及してシーズン中の開催についても、チームが擁する選手数やコーチングプランなどがあれば大きな問題ではないとする考えを示し、試合数が増えれば日本ラグビーの発展につながるする見方を披露した。

前半25分にトライを決めて8-7としたスピアーズWTB根塚洸雅選手は、「小さい頃から見ていたチームとのプレーは嬉しい。全然届かない場所ではないとわかった」と手ごたえを口にした。

根塚選手に代わって前半29分から交代出場して後半2トライを決めたWTB山崎洋之選手も、「この1週間、みんなでベーシックスキルを確認してきた。僕のトライというより、みんなのおかげ。強い相手に自分や自分たちのパフォーマンスを出せることは自信につながる」と振り返り、「2トライやタックルでいいアピールになったと思うが、過信も慢心もせずにやっていきたい」と今後のリーグ戦へ活かしたいと話した。

また、今年1月に帝京大学主将として全国大学選手権3連覇に貢献したHO江良颯選手も、今春の加入予定者に適応されるアーリーエントリー制度で後半開始から出場。公式戦に先駆けての“デビュー”戦となったが、後半20分にはラインアウト後のモールでボールを持ち出し、PR才田智選手のトライをお膳立てした。若手がのびのびとプレーした。

ウェールズ代表89キャップを保持するスピアーズFBリアム・ウィリアムズ選手は、シーズン中の開催にも「いいブレークになるし、チーフスと対戦するというのは日本人選手にはいい機会だ。この試合から得たものを次の試合に活かせればいいし、来年もあるのなら、特に日本の選手にとってはいいチャレンジになると思う」と語った。

一方、ワイルドナイツに続いてスピアーズと対戦したチーフスのクレイトン・マクミランヘッドコーチは、「日本のレベルにとても感銘を受けている」とコメント。「我々が試されたところがあり、改善すべき部分が見えて、まさにプレシーズンに臨んでいた試合となった」と述べた。

今回のシーズン中の日本勢と2月下旬の開幕を控えたプレシーズン中のニュージーランド勢が対戦するという今回の大会形式について、チーフス指揮官は「今はユニークな形」と指摘する。「日本はシーズン中で我々はシーズン前で暑い気候から寒いところへ来ての対戦で、チャレンジングではあったが、この形をもっと進めていってほしい」と継続と改良を望んでいるとした。

また、チーフスでゲームキャプテンを務めたCTBアントン・レイナートブラウン選手は「二つの異なるタイプのチームと対戦できた。若手が学んだことをスーパーラグビーで活かすことができる。チームにとっていい学びの時間になった」と話した。

 

開催継続を模索

昨年12月に開幕したリーグワンではシーズン中にリーグ戦を中断して開催。今大会に出場した4チームはスーパーラグビー勢と強度の高い試合ができ、若手にプレー機会を与えることができた一方、負傷のリスクもある。また、この期間、大会に出場していない他の8チームは中断する1月28日から2月16日まで公式戦がなく調整期間となった。この両者の状況の違いがもたらす影響は、今後のリーグ戦を待つことになる。

集客面では、3日のサンゴリアス対ブルーズ戦の13,278人が最多で、4試合合計で36,224人。1試合平均で1万人には届かなかった。

だが、リーグワンの東海林一専務理事は、11月下旬の開催発表からあまりPR期間もないなかでの集客に、「これだけ多くのファンに見てもらえた」と前向きに受け止めている。

一方、出場の有無でチーム状況に差が生じる点などについては、「日本ラグビーのために負担してもらっている。2月開催は日本側の負担が大きいと認識している」として、シーズン半ばの開催の難しさも認めている。

東海林専務理事は、来年の開催については現時点では「白紙」としたが、将来的には「基本的には双方のシーズンが終わって、複数のチームが参加する」形を理想とし、ニュージーランドだけでなくオーストラリアのチームの参加など地域的な広がりも望んでいる。

スーパーラグビーにはかつて日本からサンウルブズが参戦(2016-2020年)し、日本代表候補選手らで編成したチームで強豪との対戦を重ねることで日本選手と代表チームの強化で効果を挙げ、2019年ラグビーワールドカップでの8強進出につなげていた。スーパーラグビー除外後は、スーパーラグビー参戦に代わってクラブレベルで国際経験を積める機会の模索が続いている。リーグワンの国際交流戦は、その流れを汲んだ一つの試みだ。

東海林専務理事は、「リーグと代表チームは共存共栄。強度の高いゲームをやることで、リーグのレベルアップになり、日本代表にもプラスになる」と話し、今後の国際交流戦の開催継続へ模索を続けると話している。