新しいシーズンを迎えて、リーグワンで好調な集客が続いている。

 12月9-10日の週末に始まった2023-24シーズンはまだ2週を終えたところだが、16-17日の第2節に3万人越えという1試合最多入場者数を連日更新した。

 注目を集めた試合は、16日に横浜の日産スタジアムで行われた横浜キヤノンイーグルスとトヨタヴェルブリッツの対戦で31,312人が駆け付け、翌17日は、東京の味の素スタジアムで行われた東京サントリーサンゴリアスと東芝ブレイブルーパス東京の対戦に31,953人が足を運んだ。

 この2試合以外にも、開幕節の10日に東京の秩父宮ラグビー場で行われた前年王者のクボタスピアーズ船橋・東京ベイとサンゴリアスの試合は18,110人、17日に静岡県磐田で行われた静岡ブルーレヴズとコベルコ神戸スティーラーズの試合も、静岡のホストゲーム最多記録となる12,841人を集めた。

これにより、2節終了時での今季の集客は6試合で171,952人、1試合平均では約14,329人を数えている。

リーグワン初年度の2022年が実施150試合で484,047人(1試合平均3,227人)、昨2022-23シーズンが168試合で745,311人(1試合平均4,436人)。コロナ禍の影響で前者は28試合、後者は6試合が中止になった側面もあった。今季は2節終了時で、過去2シーズンを上回っている。

 好調の背景は、見たいと思わせるスター選手の存在だろう。今季、高い動員を記録した試合には、9-10月のラグビーワールドカップ2023フランス大会で活躍した各国の大物代表選手の存在がある。

今季日本で2シーズン目を迎えている南アフリカ代表SHファフ・デクラーク選手は、「リーグワンでは素晴らしいラグビーが行われているし、世界の優秀な選手が集っているので、ファンはそれを見に来ていると思う。自分も、発展しているラグビー(リーグ)の一員となれて、とてもうれしい」と話している。

 今季最多を記録した17日のサンゴリアスとブレイブルーパス戦では、4人の選手が注目を集めた。

サンゴリアスには南アフリカ代表のワールドカップ連覇に貢献したWTBチェスリン・コルビ選手と、ニュージーランド代表の主将を務めたFWサム・ケイン選手がプレー。ブレイブルーパスには、ニュージーランド代表SOリッチー・モウンガ選手とFWシャノン・フリゼル選手が加入。モウンガ選手はクルセイダーズでは司令塔として6年連続スーパーラグビー優勝に貢献し、フリゼル選手は2019年と2023年の2度のワールドカップで活躍した。

第1節の試合で、コルビ選手の加入で攻撃力をアップして前年王者のスピアーズに52-26で圧勝したサンゴリアスだったが、第2節では、ブレイブルーパスに19-26で惜敗。モウンガ選手、フリゼル選手をはじめ、日本代表のNO8リーチマイケル選手やWTBジョネ・ナイカブラ選手らとの連携したプレーに押さえられた。

 

注目を集めたデクラークvs A・スミス

前日16日のイーグルスとヴェルブリッツ戦では、イーグルスのデクラーク選手とヴェルブリッツ新加入SHアーロン・スミス選手の南アフリカ代表とニュージーランド代表の9番対決が話題を呼び、ヴェルブリッツに今季加わったニュージーランド代表SOボーデン・バレット選手との9番-10番のオールブラックス・コンビの連携も注目を集めた。

デクラーク選手も対戦相手として注意を払っていた相手だ。

「アーロンは素晴らしいパフォーマンスをしていた。長年戦ってきた戦友だが、トップ選手として第一戦で活躍しているので、彼と対戦するときは自分にとってはいつもチャレンジだと思っている」とデクラーク選手。

試合は序盤から速いペースで展開。前半半ばまでにイーグルスが14-3とリードを奪い、前半27分にはデクラーク選手のキックパスにSO田村優選手が飛びついてインゴールで押さえたが、TMOでオフサイドが確認されてノートライに。得点にはならなかったが、スタンドの観客を沸かせた。

ヴェルブリッツは守備で粘り、前半32分にシオサイア・フィフィタ選手のトライとバレット選手のコンバージョンで10-14と点差を詰めたが、前半終了前にイーグルスが田村選手のPGで再び17-10とリード。後半開始直後にもイーグルスはWTBイノケ・ブルア選手のトライと田村選手のコンバージョンで24-10とリードを広げた。

しかし、そこからヴェルブリッツが反撃。後半6分にWTB岡田優輝選手のトライで15-24とすると、後半31分にイーグルスの選手がイエローカードを受けて一時退場になると、直後にヴェルブリッツはスミス選手のリーグワン初トライとバレット選手のコンバージョンで2点差に。さらに、イーグルスは負傷者を出して最後は13人で戦うことになったが、最後まで相手に追加点は許さず、24-22で逃げ切った。

デクラーク選手は試合後、スミス選手に許したトライについて「素晴らしい選手はラック周りで一瞬でも気を抜くと、そこをついてくる。次はもっと賢くやりたい」と振り返ったが、「僕らは前節の負けからしっかり挽回して立て直した。13人になっても戦えたのはチーム力があるということ。試合の最後も良い判断で締めることができたので、チームの成長を感じる」と話した。

アーロン・スミス選手は、「最後の残り2分までは僕らが勝てる感覚があったが、そこで1回のチャンスをしっかりモノにすることができなかった」と振り返った。

南アフリカ代表9番との対戦には、「ファフとの対戦は代表でもそうだが、いつも楽しめる。質の高い選手で、自分の一番いいところを引き出してくれる。80分間、ラックやランで非常に速いテンポのなかで、それぞれスキルの高いラグビーを表現できてよかった」と話した。

バレット選手も「ほとんど勝てるところまで行っていたので、結果はとても残念だが、チームの仕事量や努力を誇りに思う」と話し、「連携や個々の状況判断が課題だが、自分たちが目指しているところから遠いわけではない。大一番でこういう(接戦の)チャンスを勝ちに変えられるようなチームになっていきたい」と語っていた。

 

アフリカでリーグワンの試合放送もスタート

ちなみに、国内リーグでの1試合最多動員は旧トップリーグ時代の2020年1月18日に豊田スタジアムで行われたトヨタ自動車ヴェルブリッツとパナソニックワイルドナイツの対戦で、37,050人を集めた。日本で開催した2019年ラグビーワールドカップの盛り上がりを受けて開幕した2020年シーズン第2節の試合だった。

なお、日本代表戦では、2019年ラグビーワールドカップを除いて、2022年10月29日に東京の国立競技場で行われたニュージーランド代表戦で、65,188人だった。

リーグワンでは、すでに行っていたニュージーランドに続いて、今季からアフリカ地域全54ヶ国でも毎週の試合放送がスタート。毎節2試合とプレーオフ戦やサマリーなどが放送されている。

これにより、南アフリカでも放送された16日のイーグルス対ヴェルブリッツ戦を終えてデクラーク選手は、「素晴らしいことだし、ラグビーの盛り上がりを感じる。初めてライブ放送されたので、両親も見ることができた」と喜んだ。

2節を終えて、イーグルスとヴェルブリッツは1勝1敗で、それぞれ8位と7位につけている。

第3節には、スピアーズに今季加入したニュージーランド代表HOでイン・コールズ選手とウェールズ代表FBリアム・ウィリアムズ選手が揃って24日の静岡ブルーレヴズ戦に先発メンバー入りし、リーグワンのデビュー戦を迎える。

また、開幕2連勝中のブレイブルーパスは24日にアウェイで、やはり2連勝中でニュージーランド代表LOブロディ・レタリック選手とFLアーディ・サヴェア選手が加わったスティーラーズと対戦する。

3節以降も注目の試合が続くが、寒さの厳しくなる中で順調に観客動員を続けることができるか。各チームの熱く、レベルの高いパフォーマンスが鍵の一つとなりそうだ。