エディー・ジョーンズ氏が日本代表に戻ってきた。

 前回ジョーンズ氏が日本代表を率いて臨んだ2015年ラグビーワールドカップでは、優勝経験のある南アフリカ代表に勝利して世界中を驚かせ、世界最高峰の舞台で長年にわたって1勝も挙げられずにいた日本が3勝をマーク。残念ながらプール戦敗退となったものの、その後の日本代表と国内ラグビーの人気アップにつながる成果を残した。

 日本は2019年ワールドカップでは後任のジェイミー・ジョセフヘッドコーチの下で初の8強入りを達成。日本大会開催を契機に、リーグワン前身のトップリーグにも各国代表の大物選手が参戦するケースが続くようになった。

 一方、ジョーンズ氏は2015年大会後に日本代表を離れてイングランド代表監督に就き、4年後の2019年大会準優勝に導いた。今年1月からはオーストラリア代表を率いたが、9月のフランス大会ではプール戦敗退で終了。11月下旬に辞任していた。

日本代表には8年ぶりの復帰となる。

 「ヨロシク、オネガイシマス」

日本語であいさつしたジョーンズ氏は、2015年ワールドカップ以降の日本社会でのラグビーの認知度アップと国内リーグなどのレベルアップに言及。その代表チームで指揮を執り、強化を図り、新たなステージへ導くことに強い意欲を示した。

 「日本は2015年以降、実に大きな発展を見せている。日本社会でラグビーが占める割合が大きくなり、人々に愛されるチームと競技に育っている。そういう日本の代表チームで仕事をすることは、私にとって非常に光栄であり、喜びだ」と述べた。

 「どの競技でも強いチームにはしっかりした特色やアイデンティティがある。日本ラグビーのアイデンティティを構築し、そういうラグビーをできる才能を育てることが私の仕事になる」

 「日本人は小柄なので相手よりも速さのあるプレーと頭の回転が大事になる。相手より速く動いて反応する『チョウソク(超速)』ラグビーだ。そういうラグビーをしたい」と説いた。

 スピードアップしたラグビースタイルで目指すのは、ラグビーワールドカップ2027大会での8強入りだ。

 「2019年大会は8強入りしたが、2023年大会は8強に進めなかった。だから2027年大会は8強入りが目標になる。だが、もっと重要なのは、安定したプレースタイルで持続的に成功を収めることができるチームを作ることだ」とジョーンズ氏は言う。

 そのカギとして、「チョウソク」と自ら日本語で表現し、相手より速く動き、判断し反応するラグビーを追求する。同時に、持続的な成功のために、今後に続く選手の育成も不可欠だと指摘する。

 「日本人は小柄だがスピードを上げることは可能だし、2015年でも2019年でも、そういう片鱗は見られた。相手より速い動きやアクションができる、そういう選手を育てることは可能で、いかに才能のある人材を速く育てるかが大事になる」と、オーストラリア出身の63歳は説く。

若手育成に意欲

ジョーンズ氏はリーグワンの前身のトップリーグ時代にはサントリーでヘッドコーチを務め、2011年シーズンにはトップリーグと日本選手権で優勝を達成。その後もサンゴリアスでディレクター・オブ・ラグビーとしてコンサルティングに関わるなど、日本との関わりは長く深い。

 「日本ラグビーのベースは大学ラグビーだ。大学生の若い選手たちをいかに早く育てて、トップに引き上げることができるか。彼らのポテンシャルを最大限引き出す。そういう育成のシステムを生み出すことが必要になる」

 ラグビー人口が少ないながらも世界トップの上り詰めたアイルランドから、選手育成の手法で日本が参考にできる要素があると指摘。アンダーカテゴリーや大学、国内リーグ、代表チームが垣根を越えて、結束してプロジェクトに取り組む姿勢の必要性を求めている。

 「2015年以降、ジェイミー・ジョセフ監督らが素晴らしい仕事をした。現在テストマッチを戦っている選手にはポテンシャルの高い選手が多く、質があり、実践したいことを実践している。大学レベルも私が以前関わった頃に比べると、体格も優れ、強度や姿勢の面でもより強化されている」

「大学も企業も我々とフィロソフィーを共有して、そのスタイルでプレーし、それができる選手を育てなければならない。日本社会の良さである調和を活かして進めたい」と語った。

 また、次期代表指揮官は、来年からの代表チームでの練習にも言及。「前回はフィットネスにフォーカスしたが、今回はスピードやパワーが大事になる。そのためにトレーニング方法を変えていかなければならない。来年のカレンダーはまだ承知していないが、与えられた時間でできるようにしたい」と述べた。

 会見に同席した日本ラグビーフットボール協会の土田雅人会長は、ジョセフヘッドコーチの辞任意向を受けて日本協会で選考委員会を設け、約80人の候補者のなかから候補者を絞り、12月に実施した面接などを経てジョーンズ氏に決定したと説明。広く報道されていた、オーストラリア代表監督就任中の日本協会との面談の事実はなかったと強く否定した。

土田会長は、「エディー氏を再び日本代表ヘッドコーチに迎えて、2027年ラグビーワールドカップ優勝へ向けて新たなスタートを切ることができることを光栄に思う」と述べ、「日本代表ヘッドコーチの責任は非常に大きい。ユース世代、高校からU20代表、U23代表と一貫性のある育成を通じて代表の選手層に厚みを持たせることは喫緊の課題でもある。エディー氏は、日本のラグビーをさらなる高みに近づけてくれる人物だと考えている」と語った。

 ジョーンズ氏の日本代表監督としての契約は来年1月1日から。

日本代表は2024年には6月22日にイングランド代表、10月26日にニュージーランド代表と日本国内での対戦が発表されている。