昨季プレーオフで敗れて4位に終わったサンゴリアスが、ワールドカップを制した南アフリカ代表のWTBチェスリン・コルビと決勝で惜敗したニュージーランド代表で主将を務めたサム・ケインを加えて、バージョンアップしたパフォーマンスを披露し、昨季3戦3敗だったスピアーズから大勝を収めた。

 キックオフ直前の両チームのメンバー紹介で、ケインとコルビの名前が告げられると、東京の秩父宮ラグビー場に集まった18,110人のファンから大きな拍手が送られた。

先発でリーグワン初出場となった両選手は、攻守で存在感を発揮。コルビは自身のトライはなかったが、序盤から日本代表WTB松島幸太朗とともに攻撃に厚みを加え、前半19分にはドロップゴールを狙い、後半6分にはゴール前のラックからSH流大のパスで抜け出して、ダミーパスで相手を翻弄し、CTB森谷圭介のトライをお膳立て。相手のコンバージョンにキックチャージを試みるなどの活躍で、この試合のプレーヤーオブザマッチに選出された。

サンゴリアスは初戦序盤からチーム全体でキレと勢いのあるパフォーマンスを披露し、攻守にスピアーズを圧倒。WTB尾崎晟也が前半だけで3トライを決めるなどチームはハーフタイムまでに5トライを奪い、35-7で折り返した。

前半のトライをLOデーヴィッド・ブルプリングの1本に抑えられたスピアーズは、後半開始早々にPRオペティ・ヘルがトライを奪って反撃の兆しを見せる。その5分後にもWTB木田晴斗がインゴール左隅へ飛び込み、これはTMOでノートライになったものの、後半25分にはFBゲラード・ファンデンヒーファーが抜け出してトライ。同34分にもリザーブ出場のHOスカルク・エラスマスが1トライを返した。

だが、サンゴリアスは終盤2トライを加えて突き放した。サンゴリアス新人SO高本幹也も8本中6本のコンバージョンを成功させるなど、デビュー戦で安定した試合を披露した。

 

コルビ&ケイン、デビュー戦で手ごたえ

 コルビは試合後、「この試合の意味をチームで話してきていたので、ファーストキャップを獲得できてうれしい。チーム全員での勝利で、いいスタートを切ることができた。これからの試合が楽しみ」と話した。

チームの支えもあって新しい環境に馴染むのに問題はなかったと言い、「チームに経験値が豊富なプレーヤーが多いので、自分のように新しい選手にも馴染みやすい環境だと思う。自分も心を開いて整えたい。チームのラグビースタイルが自分に合っている。学び続けてチームに貢献していきたい」と語った。

また、ケインは「昨季のチャンピオンが相手のビッグゲームで、この試合へ向けて自分もチームもハードワークを重ねてきた。今日チームが見せたパフォーマンスを嬉しく思っているし、オープンな展開のラグビーを楽しめた。観客もすばらしかった」と語り、「チームに経験を積んできた選手たちがいたからこそ、自分たちのようにプレシーズン途中から入った選手がいてもやりやすかった」と振り返り、チームワークを称えた。

代表チームでは対戦相手だったコルビとのプレーについて、ケインは「チェスリンがもたらすインパクトはみんな分かっていると思う。これまで対戦してきたチェスリンと一緒にプレーすることはエキサイティングであり喜びだ。今季これからが楽しみだ」と話した。

サンゴリアスの田中澄憲監督はコルビとケインについて、「二人とも期待以上のパフォーマンスをしてくれた。チェスリンはハイボールに強く、ボールを持てば相手の脅威。サムは今週から合流したばかりだが、接点でファイトしてFW陣には頼りになったと思う」と語った。

昨季3度対戦して3度負けた相手からの大勝に、サンゴリアス指揮官は「昨季3回負けている相手に、プランを信じてやり続けたことに尽きる」と選手のハードワークを称賛した。

 

スピアーズ立川主将「強みを消された」

 一方、スピアーズ主将の立川理道は「序盤からペースを握られて、エリアの取り合いでいろんなオプションで後退させられた。分析されて自分たちの強みを消された」と振り返った。

フラン・ルディケ監督も、「満員の秩父宮で勝てずに残念だ。我々はチャンスをモノにできずに後退させれて、相手はしっかりモノにして今季パーフェクトなスタートになった。コルビは特に素晴らしく、前半我々は自分たちのプレーができなかった」と話した。

開幕節を終えてサンゴリアスは3位、スピアーズは10位からのスタートとなった。スピアーズ新加入のウェールズ代表FBリアム・ウィリアムズとオールブラックス90キャップを保持するHOデイン・コールズの出場は次節以降に見送られた。

次節16日の三重ホンダヒート戦へ、スピアーズのルディケ監督は「来週の試合が重要な試合になる。我々のDNAの1つである修正をしっかりして、強いパフォーマンスをしたい」と早期挽回を誓った。

 

サベア加入の神戸、圧勝で首位発進

 このほかの試合でも、新たに加入した各国代表の大物選手らが存在感を示した。

コベルコ神戸スティーラーズが9日、三重ホンダヒートに12トライを奪って80-15で圧勝。ニュージーランド代表で新加入のFLアーディ・サヴェアとLOブロディ・レタリックがそれぞれ2トライずつを決め、途中出場のHO北出卓也が3トライをマークするなどでチームの首位スタートに貢献した。

新加入のSHアーロン・スミスとSOボーデン・バレットが先発したトヨタヴェルブリッツはリコーブラックラムズ東京に15-8で競り勝ち、ニュージーランド代表のFLシャノン・フリゼルとSOリッチー・モウンガが加わった東芝ブレイブルーパスは静岡ブルーレヴズに43-30で勝利した。

昨季2位の埼玉ワイルドナイツは横浜キヤノンイーグルスに8トライを奪う53-12の快勝。今季限りでの現役引退を発表している日本代表の埼玉HO堀江翔太は後半途中から出場し、チームの2位スタートに貢献した。

リーグワン・ディヴィジョン1は5月上旬まで行われ、上位4チームがプレーオフに進出し年間王者を競う。

なお、リーグ戦第6節終了後には一時中断して、2月3-10日にクロスボーダー・ラグビー2024を開催。スピアーズ、ワイルドナイツ、イーグルス、サンゴらリアスの昨季上位4チームがスーパーラグビー・パシフィックで2023季準優勝のギャラガー・チーフスと、ベスト4のブルーズと対戦する予定だ。