• コミュニティラグビーで頭部にかかる力の86パーセントは、ランニングやジャンプなどの一般的な運動で経験する力と同じかそれ以下であることが独立した専門家による査読を経た研究で明らかに。
  • エリートエクステンションとアルスター大学の研究によると、男子・女子エリートラグビーにおけるほとんどの接触事象でプレーヤーが受ける力は大きくない
  • ワールドラグビーは、プレーヤーウェルフェアに関して世界で最も先進的なスポーツにするための6項目計画を実施中
  • ORCHID研究とエリートエクステンションは、ラグビーをすることによる健康上の利点に関する最近のデータと組み合わせることで、ラグビーをプレーすることの全体像を、かつてないほど明らかにしている。

ワールドラグビー会長のビル・ボーモント卿は、ラグビー選手が試合中に経験する力に関する過去最大規模のこの調査結果を歓迎しました。この結果は、世界のスポーツ界で初めてのものであり、ラグビーと安全性について、プレーヤーと保護者にこれまで以上の確信を与えるものです。

ワールドラグビー、プリベント・バイオメトリクス、ニュージーランドラグビー、オタゴラグビー、オタゴ大学の共同プロジェクトである「オタゴ・コミュニティ頭部衝撃検知調査(ORCHID研究)」は、約2年にわたる先駆的な研究の後、コミュニティラグビーに関する初の査読付き研究結果を発表しました。 この研究では、シニアラグビーからU13レベルまでの300人以上のプレーヤーを対象に17,000以上の個別の頭部加速度事象を測定しました。

この研究に続き、アルスター大学およびプレミアシップ・ラグビーとの提携によるORCHID研究のエリートエクステンションが行われました。 現在、女子のコミュニティゲームに関するさらなる最新情報についても査読と発表に向けて準備中です。

試合やトレーニングの場面でプレーヤーが頭部に受ける力を把握するため、両研究でプリベント・バイオメトリクス社が提供するスマートマウスガード技術が使用されました。 マウスガードは、独自に検証された技術を用いて、プレーヤーが経験するGフォースを一瞬のうちに検知し、研究室とフィールドの両方で測定を行うことができるものです。

男子コミュニティラグビーに関してORCHID研究発表文献が明らかにしていることは、次の通りです。

  • 測定された力の86%は、ランニング、ジャンプ、スキップなどの他の運動で経験する力と同じか、それ以下
  • 力の94%は、ジェットコースターに乗って前回測定した時の力よりも小さい
  • 測定値が最大となったイベントのほとんどは、タックルやブレイクダウンでの技術不足によるものだった

 

エリートエクステンションの研究では、次のことも明らかになりました:

 

  • エリートラグビーにおける接触イベントの大半は、頭部に大きな力がかからない
  • 低い力、中程度の力、高い力が発生するのは、タックルとキャリー時が最も多く、次いでラック
  • 男女とも、フォワードはバックスよりも強い力がかかることが多い

ワールドラグビーはすでに、ORCHID調査から得られた予備的な知見を活用し、コミュニティゲームにおけるタックルの高さを低くする試験的ルールを開始しています。同国際連盟はまた、「Tackle Ready(タックルレディ)」や新しいプログラム「Breakdown Ready(ブレイクダウンレディ)」など、プレーヤーやコーチがオンラインで無料で利用できるトレーニングの幅を広げ、改善しました。

またワールドラグビーは10月、世界初の試みとして2024年1月からスマートマウスガードをエリートレベルラグビーの頭部外傷評価(HIA)プロトコルに追加すると発表しました。

オタゴ大学のバイオメカニクス准教授であるメラニー・バッシー博士は次のように述べています。「私たちの研究者としての究極の目標は、研究を通じて有意義な影響を与えることです。ですから、私たちの研究が、プレーヤーの安全性を高めるための新たな戦略やガイドラインに統合されることを大変嬉しく思います。私たちはワールドラグビーのアプローチに感謝しています。このアプローチによって、私たちの分析結果がしっかりしたものであることを確認するための時間と、データそのものに説得力をもたせる自主性を担保することができました。」

 「私たちは、スマートマウスガード技術がラグビー界だけでなく、それ以外の分野においても、プレーヤーの安全性とパフォーマンス分析を向上させる大きな可能性を秘めていると信じています。私たちの研究は、豊富な洞察への扉を開くものであり、私たちはこの革新的な分野をさらに探求していくことを約束します。私たちは、ワールドラグビーやその他の関係者と協力し、この技術の可能性を最大限に活用し、プレーヤーをはじめ、ラグビー全体に利益をもたらす進歩をもたらすことを想定しています。旅は始まったばかりであり、私たちはその旅に乗り出すことにワクワクしています。」

アルスター大学のバイオメカニクス助教授であるグレゴリー・ティアニー博士も次のように述べています。「これらの研究は、ラグビーにおけるプレーヤーの頭部への衝撃をモニターし、ゲームが最も安全な方法で行われるようにするための戦略を開発するための基礎となるものです。スマートマウスガードは、ピッチサイドでの医療判断を助けることができるものです。ワールドラグビーがこの技術を頭部外傷評価プロトコルに導入するに至る上で、私たちの研究が貢献できたことは、非常に喜ばしいことです。」

ワールドラグビーのビル・ボーモント卿会長は、世界をリードするこの研究を歓迎しました。「最新の研究とテクノロジーを活用することは、ラグビーをプレーヤーウェルフェアにおいて世界で最も進歩的なスポーツにするという、私たちの6項目計画の中核をなすものです。これらの研究は、自らの言葉を裏付けるために時間、労力、努力を惜しまないというワールドラグビーの意志の具体的な証拠であり、そこから得られた洞察は、すでに私たちがこのスポーツをより安全なものにするために、エビデンスに基づいた動きをするのに役立っています。」

「彼らが明らかにしてくれたことは、あらゆるレベルのラグビーにおけるプレーヤーウェルフェアを前進させる上でかけがえのないものとなるでしょう。 このデータを用いれば、コミュニティラグビーとエリートレベルのラグビーは、同じゲームでありながら、プレーの仕方は全く異なるものであることを、確信を持って言うことができます。」

ワールドラグビーのチーフ・メディカル・オフィサーであるエンナ・ファルベイ博士は、「ラグビーの健康上の利点に関する最近の研究に加え、私たちのスポーツをプレーすることがどのようなものであるかについて、より詳細なデータが得られたことは心強いことです。 これらの研究は、頭部への衝撃や加速の原因を理解する上で、これまでにない能力を与えてくれます。私たちのスポーツをプレーする中でかかる大きな力を減少させるために必要な変更をおこなうためにあらゆる調査を行っていきます。」

ワールドラグビーが委託したこの最近の研究結果では、ラグビーをプレーすることによって、世界中で予防医療費が15億米ドルの節約でき、小児肥満、心臓病、成人の精神疾患が30%、15%、33%それぞれ減少することが明らかになっています。