松島幸太朗選手にとってフランスは日本代表への思いを再び確認させてくれた場所だ。

2019年日本大会の開幕戦でハットトリックを決めて日本の白星スタートの立役者となるなど5試合で5得点をマーク。疾走感あふれる走りでジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチに「日本代表のフェラーリ」と言わしめる活躍で、チームが目標としていた日本初のワールドカップ8強入りに貢献した。

だが、成果を出した反動か、大会後、松島選手はすぐに2023年フランス大会への意欲を感じられずにいたという。そこに、強豪クレルモンからがオファー。2020年に移籍して昨季までの2年間をフランスでプレーした。スーパーラグビーのワラターズ、レベルズに続く海外挑戦で、クレルモンではチャンピオンズカップで4トライを挙げるなどの活躍で欧州最優秀選手の候補者リストにも名を連ねた。

「フランスで、違うレベルで試合をしていくうちに、だんだんとまた日本代表へのモチベーションが上がってきた」と松島選手。そういう思いをさせてくれたフランスで開催される今大会で、自分を応援してくれた人たちを「楽しくワクワクさせるようなプレーができれば」と話している。

プレトリア生まれの俊足バックスは、日本の高校を卒業後、南アフリカのシャークス・アカデミーを経てサンゴリアスに加入。日本代表では2014年のフィリピン代表戦で初キャップを獲得。2015年イングランド大会では4試合に先発して1トライを挙げ、日本の3勝に貢献した。

2015年も2019年もウィングとしての出場だったが、今回は「自分を表現できるポジション」というフルバック(FB)でのプレーに期待がかかる。ウィングには今回が初めてのワールドカップとなるジョネ・ナイカブラ選手(ブレイブルーパス東京)、セミシ・マシレワ選手(花園ライナーズ)、シオサイア・フィフィタ選手(ヴェルブリッツ)と、2019年大会も経験したレメキ ロマノ ラヴァ選手(グリーンロケッツ東葛)という名前が並ぶ。

松島選手は、「フルバックは自分を表現できるポジション。ウィングよりもボールタッチの回数は圧倒的に増えるし、自分のもらいたい形で指示すればできる。ボールポゼッションも増えていくと思うが、うまくキックを使いながらスマートにやりたい」と話す。

クレルモンから復帰した古巣の東京サンゴリアスで、昨季はリーグワンプレーオフを含めて16試合に出場し、4強入りに貢献。代表でも、8月の東京でのフィジー代表戦で50キャップ目を獲得し、8月26日のイタリア代表戦で51に伸ばした。

連携はさらに良くなる

今大会の日本代表は、前回までの経験者が松島選手を入れて13人。半数の20人が初めて世界最高峰の舞台に立つ。大会のメンバー選考を兼ねた国内5連戦ではチームに多くのミス出て、1勝4敗と黒星が先行した。だが松島選手は、プレーは改善されてきているという。

「暑すぎてアタックがうまくいかない部分もあった。めちゃくちゃきつい練習をしながら試合をしていたので、動かないといけないが動けないところがどうしてもあった」と振り返り、「(メンバー決定後の合宿では)かなり暑い中でもミスなくスムーズにやれた。連携が良くなってるし、さらに良くなっていくと思う」と話している。

日本代表はフランス大会ではプールDで戦う。初戦は9月10日、トゥールーズでのチリ代表戦だ。その後、イングランド代表、サモア代表、アルゼンチン代表と続く。

今年2月に30歳になった松島選手は、「年齢は気にしていないが、今回が集大成というぐらいの意気込みでいく」と強い意気込みを示している。