ラグビーワールドカップ2023フランス大会へ向けた強化5連戦の最終戦で世界ランク10位のフィジーと対戦。秩父宮ラグビー場に22,137人の観客を集めて熱い声援を受けたが、大会前の国内最後の試合を勝利で飾ることはできず、1勝4敗で終了した。

世界ランキングで2つ上位の相手に、日本は試合開始からアグレッシブに挑む姿勢を見せたが、試合開始7分でFLピーター・ラブスカフニが危険なタックルでレッドカードを受けて退場。試合の大半を14人で戦う展開になり、後半半ばまでに相手に4トライを与えて0-28ビハインドとされた。だが、試合終盤に2トライを奪う反撃を披露し、WTBジョネ・ナイカブラとWTBセミシ・マシレワのフィジー出身の二人が得点した。

後半30分を目前に、日本陣内に攻め込んだフィジーのハンドリングミスでこぼれたボールを奪うとパスをつなぎ、ボールを手にしたCTB長田智希が自陣22メートルライン付近から抜け出して相手ゴール目前まで力走。最後はフィジーのタックルに遭ってボールを落とし、トライにはならなかったが、そこから攻勢を維持して得点に結びつけた。

フィジーが自陣ゴール前スクラムからパスをつないで抜け出しを図るが、日本はプレッシャーをかけてノックオンを誘ってスクラムを獲得すると、そこからパスを受けたナイカブラが一気にインゴールへ持ち込んだ。後半途中出場のSO李承信のコンバージョンも決まって日本が7点を返した。

2トライ目はその7分後。敵陣で得たペナルティを起点に攻撃を続け、相手ゴール手前のラックから途中出場のSH流大がショートサイドへ出したボールを、マシレワが左タッチライン際で受けてインゴール隅に飛び込みトライ。速いパス出しで展開し、サポートがうまくかみ合って2得点を得た。

日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、「質の高い相手に14人で戦うのは簡単なことではない。我々は強いフィジーを相手に強いチームスピリットで戦った。それはワールドカップで求められる部分だ」と述べて、長田や後半ベンチスタートのFL下川甲嗣ら若手の好プレーや、退場者を出した後にスクラムに入ったナイカブラのハードワークなどに触れて、プレッシャー下でのチームの姿勢を評価した。

 

フィジーが前半3トライ

ワールドカップへ調整中のフィジーは前半4分にCTBワイセア・ナヤザレヴのトライで先制すると、3分後に日本にレッドカードが出て数的優位を得て以降は優勢に試合を進め、前半17分にスクラムからのモール攻撃でPRエロ二・マウィが5点を加え、前半38分にもゴール前スクラムからサイドを突いてSHシミオネ・クルヴォリがトライを決めた。

前半を21-0で折り返すと、後半18分に途中出場のSHフランク・ロマニが5点を加え、SOベン・ヴォラヴォラが4本目のコンバージョンも成功させて28-0と大きくリードを奪っていた。

高温多湿の中での試合で、日本は後半リザーブ選手を次々と送り出し、終盤の反撃につなげて2トライを返したが、フィジーは試合終了間際にロマニが自身2トライ目を決めて勝利した。

ジョセフ日本代表ヘッドコーチは、「ハーフタイムに無得点の0-21ビハインドから巻き返すのは難しいが、選手たちはプレーを続けてトライを獲った。選手たちを誇りに思う。14人になってもハードワークを続けた結果だ」と話した。

レッドカードにつながったハイタックルについては、「ルールに沿ってしっかり適応しなければならないが、ネガティブには考えない。彼(ラブスカフニ)はテストマッチを含め試合経験のある選手。テクニックの問題なので解決策はシンプルだ」と答えた。

しかし、日本代表指揮官はプレーの改善と向上は不可欠だとして、「タックルや攻撃でもっと精度を持たなければならないし、レフェリーの基準にもアジャストしなければならない。もっと賢く、もっとタフに戦わなければならない。精度と遂行力を上げてプレーを改善していかなければならない」と、本大会を睨んでチームへの注文を忘れなかった。

日本は8月15日にワールドカップ代表メンバーを発表。その後は渡欧してイタリアで本大会前最後の試合に臨む。フランス大会では日本はプールDで9月10日のチリ戦を皮切りに、イングランド、サモア、アルゼンチンと対戦する。

日本代表の両ウィング、母国からトライ

7人制日本代表での経験もあるナイカブラは母国からトライを奪ったことに、「とても興奮したし、感情的になった」と振り返り、「フィジーで生まれ育ったら、誰でもフィジー代表になりたいもの。そのフィジー代表と対戦できるのは、その次に望んでいることだ」と述べた。

強化5連戦すべてに先発し、7月22日のサモア戦で日本代表デビュー。そのサモア戦と今回と、退場者が出た試合ではいずれも慣れないスクラムを組む役割も務めた。

「チームにうまく適応して、自信もついてきた。これを続けてハードワークして、ベストを出すだけだと思っている」と手ごたえを覚えた様子だ。

キックオフ前の国歌斉唱でフィジーの国歌を聴いて感動したというマシレワも、「ウィングやバックスは得点を獲るのが仕事。それを続けられれば自分の自信になる。去年までは自分のプレーに波があったが、ここ数試合は安定したプレーを出せているので、それを続けたい」と話した。

 

フィジー代表HC、3連勝に手ごたえ

 フィジーはスピードとパワーの個人技を活かしたプレーで、日本戦に勝利。これでトンガ、サモアに続いてテストマッチ3連勝とした。

 チームを率いるフィジー代表のサイモン・ライワルイヘッドコーチは、「この3連勝は大きな収穫だ。今日のパフォーマンスをした選手たちのことを、これ以上ないほど誇らしく思う」と述べた。

 「日本はテンポの速い試合をしてくるのでフィジカルでタフな試合になると予想していた。コンタクトエリアを意識して入って前半は良かったが、後半、日本がうまく修正してきて、プレッシャーをかけられてミスが出て、難しくなった」と振り返った。

「(準備の)フェーズワンとしてはこの5週間はとても充実していた。まもなく大会スコッドを発表するが、選考は非常に難しい」と話した。

フランス大会ではフィジーはプールCでオーストラリア、ジョージア、ポルトガル、ウェールズと対戦する。

日本代表フィジー戦メンバー:

1稲垣啓太(埼玉ワイルドナイツ)

 →17クレイグ・ミラー(埼玉ワイルドナイツ)、後半0分

2坂手淳史(埼玉ワイルドナイツ)

 →16堀江翔太(埼玉ワイルドナイツ)、後半0分

3ヴァル アサエリ愛(埼玉ワイルドナイツ)

 →18具 智元(神戸スティーラーズ)、後半0分

4ジェームズ・ムーア(浦安D-Rocks)

5アマト・ファカタヴァ(ブラックラムズ東京)

 →19下川甲嗣(東京サンゴリアス)、前半23分

6ジャック・コーネルセン(埼玉ワイルドナイツ)

7ピーター・ラブスカフニ(スピアーズ船橋・東京ベイ)

8姫野和樹*(ヴェルブリッツ)

 →20ベン・ガンター(埼玉ワイルドナイツ)、後半19分

9齋藤直人(東京サンゴリアス)

 →21流 大*(東京サンゴリアス)、後半0分

10松田力也(埼玉ワイルドナイツ)

 →22李 承信(神戸スティーラーズ)、後半16分

11ジョネ・ナイカブラ(ブレイブルーパス東京)

12長田智希(埼玉ワイルドナイツ)

13ディラン・ライリー(埼玉ワイルドナイツ)

 →23中村亮土(東京サンゴリアス)、後半22分

14セミシ・マシレワ(花園ライナーズ)

15松島幸太朗(東京サンゴリアス)

注:* 印はキャプテン

フィジー代表 試合メンバー:

1エロニ・マウィ (Saracens)

 →17ペニ・ラヴァイ (Queensland Reds)、後半9分

2サムエル・マタヴェシ (Northampton Saints)

 →16テヴィタ・イカニヴェレ (Fijian Drua)、後半9分

3ルケ・タンギ (Provence Rugby)

 →18メサケ・ドンゲ (Fijian Drua)、後半9分

4アルバート・トゥイスエ (Gloucester Rugby)

5テモ・マヤナヴァヌア (Northampton Saints)

 →19テ・アヒワル・シリキダヴェタ (Fijian Drua)、後半26分

6レキマ・タギタギヴァル (Section Paloise)

7キティオネ・カミカミザ (Racing 92)

 →20チョセヴァ・タマニ (Fijian Drua)、後半13分

8メリ・デレナランギ (Fijian Drua)

9シミオネ・クルヴォリ (Fijian Drua)

 →21フランク・ロマニ (Fijian Drua)、後半9分

10ベン・ヴォラヴォラ (Racing 92)

 →23イライサ・ドロワセセ (Fijian Drua)、後半20分

11セレシティノ・ラヴタウマンダ (Fijian Drua)

12ヴィリモニ・ボティトゥ (Caster Olympique)

 →22テティ・テラ (Fijian Drua)、前半19分(HIA)

13ワイセア・ナヤザレヴ* (Toulon Rugby)

14チウタ・ワイニゴロ (Toulon Rugby)

15シレリ・マンガラ (Bayone)

注:* 印はキャプテン