ワールドカップへ向けた強化5連戦で3試合連続黒星を喫していた日本だったが、この試合では守備から攻撃へ転じる意識が強く、それが勝利につながった。
最も象徴的な場面は試合終了が見えてきた後半38分、前半20分にも先制トライを決めていたWTBセミシ・マシレワが右サイドで抜け出して宛て陣内に攻め込んだ次の瞬間、トンガCTBアフシパ・タウモエペアウがパスをインタセプト。猛ダッシュで日本のゴールに向かい、そのままインゴールまで走り抜けるかと思われた次の瞬間、ゴール手前で後半途中出場のFB松島幸太朗が強烈なタックルでこれを阻止。日本はボールを奪い、最後の笛までリードを守った。
「勝ててほっとしている」という日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、最後に相手に抜かれた場面を振り返って、「抜かれていたら酷い結果になっていたところだった。松島がタックルでチームを救ってくれた」と語り、フル出場で攻守に貢献したアマト・ファカタヴァについても、「78分間ハードワークを続けてなお、戦い続けてチームに貢献しようとしていた。それはとてもいい兆候。コーチとして選手のハードワークを誇りに思う」と話した。
日本は8-5リードの前半終了間際にも、好守からの鋭い切り替えで得点につなげた。
FLベン・ガンターの相手陣内でのキックチャージをきっかけにボールを奪って攻撃に転じ、左サイドへパス。これを受けたWTBジョネ・ナイカブラが相手の裏を突くキックパスを送ると、LOアマト・ファカタヴァが受けてインゴールに飛び込み、前半を13-5で折り返した。
負傷で長く戦列を離れていたガンターはこれが今年初の代表戦。「試合前、すごく緊張した」と明かしたが、攻守で要所に絡んでチームのプレーを安定させた。5-5で迎えた30分頃にもブレークダウンで相手のペナルティを誘い、李がPGを成功させて日本が8-5とリードした。
ガンターは、「みんなハードワークして結果がついてきていなかったが、今日勝てて本当にうれしい。自分の復帰初戦としても良かったと思うが、試合を見直してもっとプレーを上げてチームのためにプレーしたい」と笑顔をみせた。
先週までの3試合では日本はミスが多く、7月22日のサモア戦では最後にペナルティを喫して勝ち星を落としていたが、この試合ではミスの数も減少し、セットプレーも改善した。ただ、それでも後半開始早々には自陣22メートル内でペナルティやミスが続き、トンガに2本連続でPGを許して2点差まで詰めるきっかけを与えた。
日本はその後、後半13分にトンガのペナルティで得た右ラインアウトを起点に最後はマシレワがトライを決めて18-11とした。だが、その3分後、日本は相手にペナルティの機会を与えると、トンガがラインアウトからモールで押し込んで再び2点差に詰めた。
日本はハーフタイム後に次々とベンチからフレッシュな選手を送り込み、後半20分過ぎにはスピード感のある厚みのある攻撃を畳みかけてトライ目前まで迫り、相手のペナルティを誘った。これで得たPGを李が決めて21-16とした。
しかしその後、粘るトンガが反撃。後半の終盤、日本は自陣に押し込まれる展開が増え、後半30分には右オープンスペースへのキックパスにソロモネ・フナキが走り込んでトライを狙ったが、ナイカブラがタックルでブロック、追加点を阻止した。
トンガ代表HC、「もっと良くなる」
ワールドカップへ向けて調整中のチームには、ニュージーランド代表経験者などが加わり、従来のフィジカルの強さやパワーに加えて統制や連携を活かした攻撃を披露。前半23分には、敵陣でのブレークダウンからFLヴァエア・フィフィタがボールを持ち出し、ゴール前でボールを預けたSHソナタネ・タクルアが5-5にする同点トライをマーク。タクルアは代表50キャップ獲得に自らのトライで華を添えた。
トンガ主将のタクルアは、「負けて残念だ。選手はみんな全力を尽くしたが、日本は素晴らしく、リードを維持していた。後半修正できたが、前半自陣でプレーする時間が長くて相手にプレッシャーをかけることができなかった」と振り返った。
トンガ代表のトウタイ・ケフヘッドコーチは、「とてもタイトでエンターテイメント性が高い試合だったが、我々は後半特に特性を出して戦った」とコメント。
現状は6~7人を怪我で欠いた状態でワールドカップへの仕上がりとしては「60~70%」としたが、8月にはサモアと1試合、カナダとの2連戦が予定されており、「チームは試合ごとに良くなっているし、まだまだもっと良くなれる」と自信の表情だった。
日本選手ら課題に目線
日本は、一週間後の8月5日、東京でのフィジー代表戦で今シリーズ最終戦を迎え、大会メンバー発表を経て8月26日にアウェイでイタリア代表とワールドカップ前最後の試合に臨む。
日本の選手たちはトンガ戦の
共同でゲームキャプテンを務めたNO8姫野和樹は、「今週キャプテンとして、プロセスにフォーカスして自分たちのラグビーをしっかり楽しむところをチームに伝えてきた。それがグラウンドで出たところもたくさんあって、そこのメンタリティはすごく良かった。最後のマツ(松島)のディフェンスにもチームの絆をすごく感じた」と話したが、課題の指摘も忘れなかった。
「後半の最初は自分たちの課題。そこで主導権を与えてしまったので、そこは今後直していかないといけない」
PR稲垣啓太も、「ミスは少し減ったがまだ多い。結果としてそのミスから相手に危ないシーンを作られた。そのなかでも勝てたことは非常に大きいが反省する部分も多々あった。課題には継続して取り組まないとならない」と述べて、プレー改善へ視線を向けた。
ガンターは「後半トンガが強いマインドセットとエネルギーを持って出てきたが、僕らもしっかり試合を終わらせることができた。国際試合に簡単な試合などない。トンガが今日、それを示したが、同時に僕らも厳しい状況でもしっかり立ち向かって諦めないことを示せたと思う」と振り返り、チーム強化に「忍耐強さ」を加えたいと話す。
「僕らはペースの速いラグビーをするけど、時として速すぎるときもある。状況によっては、少しリラックスしてボールキープして相手にプレッシャーをかけるやり方があってもいい。その二つのバランスが取れるようになれば、僕らはとても危険なチームになれるはずだ」
日本代表試合登録メンバー:
1稲垣啓太(埼玉ワイルドナイツ)
→17クレイグ・ミラー(埼玉ワイルドナイツ)、後半19分
2坂手淳史(埼玉ワイルドナイツ)
→16堀江翔太(埼玉ワイルドナイツ)、後半19分
3ヴァル アサエリ愛(埼玉ワイルドナイツ)
→18具 智元(神戸スティーラーズ)、後半13分
4アマト・ファカタヴァ(ブラックラムズ東京)
5ヘル ウヴェ(スピアーズ船橋・東京ベイ)
→19ジェームズ・ムーア(浦安D-Rocks)、後半7分
6ジャック・コーネルセン(埼玉ワイルドナイツ)
7ベン・ガンター(埼玉ワイルドナイツ)
→20テビタ・タタフ(東京サンゴリアス)、後半18分
8姫野和樹*(ヴェルブリッツ)
9齋藤直人(東京サンゴリアス)
→21流 大*(東京サンゴリアス)、後半13分
10李 承信(神戸スティーラーズ)
→22松田力也(埼玉ワイルドナイツ)、後半7分
11セミシ・マシレワ(花園ライナーズ)
12長田智希(埼玉ワイルドナイツ)
13ディラン・ライリー(埼玉ワイルドナイツ)
14ジョネ・ナイカブラ(ブレイブルーパス東京)
15山中亮平(神戸スティーラーズ)
→23松島幸太朗(東京サンゴリアス)、後半24分
注:xはキャプテン 所属のあとの数字はキャップ数
トンガ代表 試合登録メンバー:
1ジークフリート・フィシオイ (Pau)
→17フェアオ・フォトゥアイカ (Reds)、後半29分
2サミュエラ・モリ (Moana Paifika)
→16パラウ・ンガウアモ (Castres)、後半29分
3ベン・タメイフナ (Bordeaux)
→18デイヴィッド・ロロヘエ (Provence Rugby)、後半29分
4ハラレヴァ・フィフィタ (Connacht)
5シティヴェニ・マフィ (Oyonnax)
→19タンギノア・ハライフォヌア (Grenoble)、後半7分
6ヴァエア・フィフィタ (Scarlets)
7シオネ・ハヴィリ・タリトゥイ (Crusaders)
8ロペティ・ティマニ (Cardiff)
→20ソロモネ・フナキ (Moana Pasifika)、後半7分
9ソナタネ・タクルア* (Agen)
→21マヌ・パエア (Moana Pasifika)、後半27分
10ヴィリアム・ハヴィリ (Moana Pasifika)
→22オトゥマカ・マウシア (Western 2 Blues)、後半33分
11カイレン・タウモエファラウ (Moana Pasifika)
→23マラカイ・フェトキア (Munster)、後半24分
12ピタ・アーキ (Toulouse)
13アフシパ・タウモエペアウ (Perpignan)
14ソロモネ・カタ (Exeter)
15サレシ・ピウタウ (Bristol Bears)
注:* はキャプテン
ワールドカップへ向けた強化5連戦で3試合連続黒星を喫していた日本だったが、この試合では守備から攻撃へ転じる意識が強く、それが勝利につながった。
最も象徴的な場面は試合終了が見えてきた後半38分、前半20分にも先制トライを決めていたWTBセミシ・マシレワが右サイドで抜け出して宛て陣内に攻め込んだ次の瞬間、トンガCTBアフシパ・タウモエペアウがパスをインタセプト。猛ダッシュで日本のゴールに向かい、そのままインゴールまで走り抜けるかと思われた次の瞬間、ゴール手前で後半途中出場のFB松島幸太朗が強烈なタックルでこれを阻止。日本はボールを奪い、最後の笛までリードを守った。
「勝ててほっとしている」という日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、最後に相手に抜かれた場面を振り返って、「抜かれていたら酷い結果になっていたところだった。松島がタックルでチームを救ってくれた」と語り、フル出場で攻守に貢献したアマト・ファカタヴァについても、「78分間ハードワークを続けてなお、戦い続けてチームに貢献しようとしていた。それはとてもいい兆候。コーチとして選手のハードワークを誇りに思う」と話した。
日本は8-5リードの前半終了間際にも、好守からの鋭い切り替えで得点につなげた。
FLベン・ガンターの相手陣内でのキックチャージをきっかけにボールを奪って攻撃に転じ、左サイドへパス。これを受けたWTBジョネ・ナイカブラが相手の裏を突くキックパスを送ると、LOアマト・ファカタヴァが受けてインゴールに飛び込み、前半を13-5で折り返した。
負傷で長く戦列を離れていたガンターはこれが今年初の代表戦。「試合前、すごく緊張した」と明かしたが、攻守で要所に絡んでチームのプレーを安定させた。5-5で迎えた30分頃にもブレークダウンで相手のペナルティを誘い、李がPGを成功させて日本が8-5とリードした。
ガンターは、「みんなハードワークして結果がついてきていなかったが、今日勝てて本当にうれしい。自分の復帰初戦としても良かったと思うが、試合を見直してもっとプレーを上げてチームのためにプレーしたい」と笑顔をみせた。
先週までの3試合では日本はミスが多く、7月22日のサモア戦では最後にペナルティを喫して勝ち星を落としていたが、この試合ではミスの数も減少し、セットプレーも改善した。ただ、それでも後半開始早々には自陣22メートル内でペナルティやミスが続き、トンガに2本連続でPGを許して2点差まで詰めるきっかけを与えた。
日本はその後、後半13分にトンガのペナルティで得た右ラインアウトを起点に最後はマシレワがトライを決めて18-11とした。だが、その3分後、日本は相手にペナルティの機会を与えると、トンガがラインアウトからモールで押し込んで再び2点差に詰めた。
日本はハーフタイム後に次々とベンチからフレッシュな選手を送り込み、後半20分過ぎにはスピード感のある厚みのある攻撃を畳みかけてトライ目前まで迫り、相手のペナルティを誘った。これで得たPGを李が決めて21-16とした。
しかしその後、粘るトンガが反撃。後半の終盤、日本は自陣に押し込まれる展開が増え、後半30分には右オープンスペースへのキックパスにソロモネ・フナキが走り込んでトライを狙ったが、ナイカブラがタックルでブロック、追加点を阻止した。
トンガ代表HC、「もっと良くなる」
ワールドカップへ向けて調整中のチームには、ニュージーランド代表経験者などが加わり、従来のフィジカルの強さやパワーに加えて統制や連携を活かした攻撃を披露。前半23分には、敵陣でのブレークダウンからFLヴァエア・フィフィタがボールを持ち出し、ゴール前でボールを預けたSHソナタネ・タクルアが5-5にする同点トライをマーク。タクルアは代表50キャップ獲得に自らのトライで華を添えた。
トンガ主将のタクルアは、「負けて残念だ。選手はみんな全力を尽くしたが、日本は素晴らしく、リードを維持していた。後半修正できたが、前半自陣でプレーする時間が長くて相手にプレッシャーをかけることができなかった」と振り返った。
トンガ代表のトウタイ・ケフヘッドコーチは、「とてもタイトでエンターテイメント性が高い試合だったが、我々は後半特に特性を出して戦った」とコメント。
現状は6~7人を怪我で欠いた状態でワールドカップへの仕上がりとしては「60~70%」としたが、8月にはサモアと1試合、カナダとの2連戦が予定されており、「チームは試合ごとに良くなっているし、まだまだもっと良くなれる」と自信の表情だった。
日本選手ら課題に目線
日本は、一週間後の8月5日、東京でのフィジー代表戦で今シリーズ最終戦を迎え、大会メンバー発表を経て8月26日にアウェイでイタリア代表とワールドカップ前最後の試合に臨む。
日本の選手たちはトンガ戦の
共同でゲームキャプテンを務めたNO8姫野和樹は、「今週キャプテンとして、プロセスにフォーカスして自分たちのラグビーをしっかり楽しむところをチームに伝えてきた。それがグラウンドで出たところもたくさんあって、そこのメンタリティはすごく良かった。最後のマツ(松島)のディフェンスにもチームの絆をすごく感じた」と話したが、課題の指摘も忘れなかった。
「後半の最初は自分たちの課題。そこで主導権を与えてしまったので、そこは今後直していかないといけない」
PR稲垣啓太も、「ミスは少し減ったがまだ多い。結果としてそのミスから相手に危ないシーンを作られた。そのなかでも勝てたことは非常に大きいが反省する部分も多々あった。課題には継続して取り組まないとならない」と述べて、プレー改善へ視線を向けた。
ガンターは「後半トンガが強いマインドセットとエネルギーを持って出てきたが、僕らもしっかり試合を終わらせることができた。国際試合に簡単な試合などない。トンガが今日、それを示したが、同時に僕らも厳しい状況でもしっかり立ち向かって諦めないことを示せたと思う」と振り返り、チーム強化に「忍耐強さ」を加えたいと話す。
「僕らはペースの速いラグビーをするけど、時として速すぎるときもある。状況によっては、少しリラックスしてボールキープして相手にプレッシャーをかけるやり方があってもいい。その二つのバランスが取れるようになれば、僕らはとても危険なチームになれるはずだ」
日本代表試合登録メンバー:
1稲垣啓太(埼玉ワイルドナイツ)
→17クレイグ・ミラー(埼玉ワイルドナイツ)、後半19分
2坂手淳史(埼玉ワイルドナイツ)
→16堀江翔太(埼玉ワイルドナイツ)、後半19分
3ヴァル アサエリ愛(埼玉ワイルドナイツ)
→18具 智元(神戸スティーラーズ)、後半13分
4アマト・ファカタヴァ(ブラックラムズ東京)
5ヘル ウヴェ(スピアーズ船橋・東京ベイ)
→19ジェームズ・ムーア(浦安D-Rocks)、後半7分
6ジャック・コーネルセン(埼玉ワイルドナイツ)
7ベン・ガンター(埼玉ワイルドナイツ)
→20テビタ・タタフ(東京サンゴリアス)、後半18分
8姫野和樹*(ヴェルブリッツ)
9齋藤直人(東京サンゴリアス)
→21流 大*(東京サンゴリアス)、後半13分
10李 承信(神戸スティーラーズ)
→22松田力也(埼玉ワイルドナイツ)、後半7分
11セミシ・マシレワ(花園ライナーズ)
12長田智希(埼玉ワイルドナイツ)
13ディラン・ライリー(埼玉ワイルドナイツ)
14ジョネ・ナイカブラ(ブレイブルーパス東京)
15山中亮平(神戸スティーラーズ)
→23松島幸太朗(東京サンゴリアス)、後半24分
注:xはキャプテン 所属のあとの数字はキャップ数
トンガ代表 試合登録メンバー:
1ジークフリート・フィシオイ (Pau)
→17フェアオ・フォトゥアイカ (Reds)、後半29分
2サミュエラ・モリ (Moana Paifika)
→16パラウ・ンガウアモ (Castres)、後半29分
3ベン・タメイフナ (Bordeaux)
→18デイヴィッド・ロロヘエ (Provence Rugby)、後半29分
4ハラレヴァ・フィフィタ (Connacht)
5シティヴェニ・マフィ (Oyonnax)
→19タンギノア・ハライフォヌア (Grenoble)、後半7分
6ヴァエア・フィフィタ (Scarlets)
7シオネ・ハヴィリ・タリトゥイ (Crusaders)
8ロペティ・ティマニ (Cardiff)
→20ソロモネ・フナキ (Moana Pasifika)、後半7分
9ソナタネ・タクルア* (Agen)
→21マヌ・パエア (Moana Pasifika)、後半27分
10ヴィリアム・ハヴィリ (Moana Pasifika)
→22オトゥマカ・マウシア (Western 2 Blues)、後半33分
11カイレン・タウモエファラウ (Moana Pasifika)
→23マラカイ・フェトキア (Munster)、後半24分
12ピタ・アーキ (Toulouse)
13アフシパ・タウモエペアウ (Perpignan)
14ソロモネ・カタ (Exeter)
15サレシ・ピウタウ (Bristol Bears)
注:* はキャプテン