9月に開幕するワールドカップ2023フランス大会のプール戦で対戦する日本とサモアが大会へ向けた強化試合で対戦。前半途中にレッドカードで退場者を出した日本が、14人で一時はリードを奪ったがミスが多く、得点機を活かせずに敗れた。

試合の入りは悪くなかった。

日本は前半6分、ゴール前のラックからLOアマト・ファカタヴァが飛び込んでトライ。SO李承信のコンバージョンも決まって7-0と先行。17分には相手FLタレニ・セウにイエローカードが出て数的優位となり、2分後にはPGで加点して10-0とした。

サモアはニュージーランド代表経験者3人を帯同していなかったが、元オーストラリア代表でこの試合がサモア代表としてのデビュー戦となったSOクリスチャン・リアリーファノがPGで25分に3点を返した。

すると、その直後にワールドカップレフリーのマチュー・レイナールが、LOリーチマイケルに危険なタックルがあったとしてレッドカードを提示。元代表主将の退場で状況が一変する。

数的不利での戦いとなった日本は、前半37分にサモアのパワフルな攻めに押し切られ、ゴール前のラックからFLアラマンダ・モトゥガにトライを決められ、リアリーファノのコンバージョンも成功して10-10の同点で前半を折り返した。

前半からハンドリングミスが多かった日本は、後半はPGで得点を重ね、後半開始から6分で李がPG2本を決めて16-10とリードを奪った。

しかし、直後に自陣22メートル内で山中のキックにSHジョナサン・タウマテイネがチャージ。インゴールで素早く押さえてトライを決めて、リアリーファノが2点を加えてサモアが17-16と逆転した。

日本は後半17分、21分に相手陣内に攻め込んで得たペナルティに李の精度のあるPGで加点して22-17と再び先行したが、長く続かない。

そのわずか2分後にサモアに22メートル内のスクラムからショートサイドを突かれ、WTBトゥムア・マヌに抜け出されてトライを許し、リアリーファノのコンバージョンでサモアが24-22とした。

日本は終盤、相手陣内に攻め込む場面も作ったが、ハンドリングミスやペナルティを繰り返して得点につなげられない。終了直前にも相手22メートル内でのスクラムから攻めたが、ペナルティを取られて試合終了となった。

 

坂手キャプテン、「今日の経験は大きなものになる」

試合後、ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチは、「とても残念。クオリティのある相手とのテストマッチで、50分を一人少ない中で戦うことになれば勝つのは難しい。選手たちには教訓になったと思う」と話した。

「14人では相手のキッカーにブロックに行く者がいない、DFラインで余る選手がいないので、最後の一人が1対1を迫られて大きなプレッシャーを受けることになった」と指摘した。

「ポジティブな点を見れば、14人になってチームとしてどう反応するかを見ることができたし、その状態でも最後の10分はチャンスを作っていた。そこで勝てなかったのは少しアンラッキーだとは思うが、実際には勝敗は前半30分でマイケルを退場で失ったところで決まっていたと思う」と振り返った。

日本は、ワールドカップへ向けた強化試合5連戦の最初の2試合をオールブラックスXVと対戦して2敗。テストマッチとなった今回のサモア戦で勝利を期していたが3連敗。しかも、いずれもハンドリングミスの多さが目立っている。

ジョセフヘッドコーチは、エラーの多さについて訊かれると「そこはすぐに修正しないとならない」と話し、若手ではなく経験豊富な選手に多い傾向に「責任を感じてほしい。来週の試合へ向けて、スキルと規律を速やかに改善しなければならない」と話した。

HO坂手淳史キャプテンは、「すごく難しいゲームだった。今日の経験はチームにとってすごく大きなものになる。14人になってもチーム全員が同じ絵を見る時間が多かったし、エナジーを落とさずに戦い続けたのはこれからにつながる部分」としたが、スクラムの修正には時間がかかったとして、「もっと早く直さないといけなかった」と話した。

一方、リーチはキャリア初の退場に、「ワールドカップでこうなることもありえる。こういうときにどうするかがとても大事。チームにとってはとても良い経験だと思う」と話した。

退場に気持ちが落ち込んだと明かしたが、「チームには良くなかった。ハーフタイムにも顔に出さないでポジティブにいるべきだった」と反省した。

日本代表の国内強化試合は残り2試合。29日にトンガ代表、8月5日にフィジー代表と対戦する。

リーチは、「負けから得るものはたくさんあるが、このあとは勝って自信をつけてワールドカップへ行くのが大事になる」と話した。

 

サモア代表デビューのリアリーファノ、「特別な気持ち」

 サモア代表のセイララ・マプスアヘッドコーチは、「とても厳しい試合で、とても厳しい環境で、チームには必要なことだった。すごくプレッシャーを受けたが勝つことできてハッピーだ。ワールドカップヘ向けた準備としていいスタートになった」と話した。

 多くのノンキャップ選手を起用しての勝利で「新しい選手にはプレッシャーが多くかかっていたが、それは望むところだった。日本はベストチームの一つで、そこに勝てたのはよかった」と話した。

 リアリーファノ選手は、「どのチームも一人かけるとアジャストしないとならないが、日本はよくやったと思う。ワールドカップへ向けて、今日のようにどの試合もタフになるが、そのなかで準備することが大事。今日、多くの教訓を得ることができたと思う」と話した。

サモア代表としてのデビュー戦で、「言葉で表すのは難しいが、特別な気持ちで祝福されていて、国と家族を代表してプレーできて、とても光栄に感じている」と話し、若手が多いサモア代表で「プロとしての姿勢を伝えたい。試合の瞬間、日々の重要性、マッチデーの準備の仕方など、自分の知識と経験を伝えられたらと思う」と話した。