コロナ禍での中断を経て再開したU20チャンピオンシップ2023大会で、2018年と2019年を制していたフランスがU20シックスネーションズ優勝のアイルランドに、後半7トライ中5トライを奪う攻撃と、相手に得点を上げさせない守備を披露して3度目の頂点についた。
前半はリードが4度入れ替わる競り合いとなったが、その流れが変わったのが前半終了目前の39分、アイルランドがPR Paddy McCarthyへのイエローカードでシンビンを受けたことだった。
数的優位を得たフランスは、前半14分と35分のトライ&コンバージョンとPG1本で17-14と3点差リードで前半を折り返すと、後半の立ち上がりに立て続けに2本のトライを奪った。
ペナルティで得たラインアウトからモールで押し込んでPR Pierre Jouvinが押さえて得点。さらにその4分後には相手のキックレシーブにプレッシャーをかけ、そこから展開して最後はCTB Nicolas Depoortereがインゴールに倒れ込んで5点を加え、SO Hugo Reusがコンバージョンを決めて31-14とリードを広げた。
アイルランドは反撃を試みるものの、フランスのディフェンスに苦戦。22メートル内に入る機会もあったが、ペナルティを取られるなど得点につなげることができない。だが、フランスは試合終盤にも3トライを決めてアイルランドを突き放した。
69分にFB Mathis Ferteが左サイドを抜けてインゴールに飛び込み、75分には自陣でのブレークダウンでFWがボールを獲得して抜け出してFL Lenni Nouchiにパス。フランスのキャプテンは約40メートルを走り切ってトライを決めた。
フランスはさらに、試合終了前にも自陣22メートルライン付近からボールを拾ってブレーク。最後はWTB Leo Drouetがクロスバーの下に飛び込んで、チーム7本目のトライを決めた。
アイルランドのGus McCarthyキャプテンは、「フランスが危険な相手で、特にブレークダウン周りが厄介だということは分かっていたが、彼らは本当に素晴らしいラグビーをしたと思う。僕らはいくつかの部分でうまくいかないところがあった。それがなければと思うが、それもラグビーだ。最後まで戦い抜いたチームのみんなを誇りに思う」と語った。
フランス主将のLenni Nouchiは「信じられない。ここまで良いゲームができるとは思っていなかった。重要な試合で規律をうまくコントロールできたと思う。この感激は一生残ると思う。勝利を祝いたい」とコメント。「3週間後にはみんなトップ14やプロD2での戦いに臨むことになる。この大会とは全く違うものだが、今大会の経験が活かしたい」と語った。
南アフリカ、イングランドとの接戦を制して3位
開催国の南アフリカはイングランドとの接戦を22-15で制して3位となり、9度目の銅メダルを獲得した。
南アフリカは守備の良さとFWのパワーが光った。前半を22-15で折り返すと、後半は7点差を追うイングランドの攻撃を受けながらもしっかり対応。両チーム無得点となったハーフタイム後40分間の競り合いを制した。
イングランドがPGで7分に先制したが、南アフリカは11分にFL Hennie Siebertagenのピック&ゴーで得点。その7分後にはDamian Markusの突破でゴールに迫り、最後はCorne Beetsが持ち込んでチーム2トライ目をマーク。2本ともコンバージョンを決めたJean Smithが21分にPGも加えて、南アフリカが17-3とリードを奪った。
イングランドは23分にCassius Cleavesがブレーク。サポートに入ったCraig Wrightが決めて5点を返したが、南アフリカは前半終了目前にもJuann Elseがモールで押し込んで押さえ、22-8と点差を広げた。
だが、イングランドはハーフタイム直前に1トライと1コンバージョンを加えて7点差に詰めた。
後半開始後も、イングランドは最初の攻防でChandler Cunningham-Southがトライ目前にせまったが、南アフリカは守備で対応。これを凌ぐと攻めに転じ、54分にはペナルティで得たラインアウトからモールで攻め込み、FWの力を活かして相手ゴールに迫った。しかし、ゴール目前で反則を取られて得点に結びつかない。その後、67分にも南アフリカはPGで得点機会を得たが、これも決めることができなかった。
イングランドはCunningham-South やAlex Willsが走力を活かして抜け出す場面も作ったが、南アフリカに再三ターンオーバーを許して得点には至らず、最後まで7点差を埋めることができなかった。
このほか、オーストラリアはウェールズを57-33で下して5位で終了。Henry O’Donnell とToby MacPhersonがそれぞれ2トライをマークして、オーストラリアの勝利に貢献した。
ニュージーランドはジョージアに50-26で勝利して7位、アルゼンチンはフィジーを43-22で破って9位に入った。
また、イタリアは日本とのU20チャンピオンシップ残留争いを45-27で制して11位に入り、来年の出場権を確保した。
日本、U20チャンピオンシップ残留ならず
ステレンボッシュのダニー・クレイヴンスタジアムで11位決定戦に臨んだ日本は、イタリアのCTB Dewi Passarellaにハットトリックを許すなど、7トライを献上して27-45で敗れた。
試合開始早々にイタリアはPassarellaのトライで先制したが、13分にFilippo Bozzoniがイエローカードを受けて数的不利になると、日本はすぐに反応。キャプテンのCTB大町佳生がトライを決めて、SO楢本幹志朗のコンバージョンも成功して7-5と逆転した。
しかし、日本のリードは長く続かず、イタリアが17分にSH Lorenzo Casilioがチーム2本目のトライ。シンビンが終了して15人に戻ると、30分にはAlessandro Gesiがキックから得点に結びつけ、Simone Brisighellaのコンバージョンも決まって19-7とリードした。
日本は守備でも相手にプレッシャーをかけ、ブレークダウンでもハードワークを見せたが、好機に反則を犯して攻めきれない。それでも35分に楢本のPGで3点を加えたが、前半終了直前にPassarellaがこの試合で自身2本目のトライを決めて、コンバージョンも決まってイタリアが26-10と点差を広げた。
後半もイタリア攻勢は変わらないものの、日本は46分にラインアウトからNO8最上太尊が抜け出して攻め、最後はWTB御池蓮二が持ち込んで5点を返した。
しかし、イタリアは52分に主将のDvid Odiaseがトライを決めて再び突き放した。
さらに、日本は62分に途中出場の高橋佑太朗が危険なタックルでイエローカードを受け、その後TMOバンカーでレッドカードとなって残り時間を一人少ない中で戦うという窮地に陥る。
するとイタリアは71分にBozzoni、その直後にはPassarellaがハットトリックで連続トライを決めて45-15として、試合を決定づけた。
日本は試合終盤に林慶音と同じくベンチから出場した長島幸汰がそれぞれトライを決めるなど12点を加えたが、勝利には遠かった。
2021年のU20トロフィーに優勝して今大会へ出場していた日本だったが、残留はならず、日本は2024年U20トロフィー大会に出場してU20チャンピオンシップ復帰を目指すことになった。
イタリアのDavid Odiase主将は、「残留という結果を出せて、自分たちを誇りに思う。自分たちにとって非常に重要なことだった。各自が自分の役割を果してチームとして戦えたことがよかったと思う。今大会、個人的にはもっと良くできたという思いもあるが、残留できた。良しとしたい」と話した。
U20日本代表の大町キャプテンは、「自分たちのタックルには誇りを持っているが、イタリアの速いタックルやフィジカルのところで少しずつ受けてしまって、こういう結果になったと思う。すごく残念」と述べた。
大町はディシプリンが欠けたことでイタリアにドライビングモールなど彼らの強みを出させてしまうことになったと語り、「それが試合のポイントになった」と指摘。大会については、国際試合のレベルを確認することができたとして、この基準を持ち帰って今後に生かしたいと語った。