9月開幕のラグビーワールドカップ2023フランス大会まで2ヶ月。日本にとっては今年に入って初の試合となった本大会への実戦調整の第1戦は、ニュージーランド代表経験者を含めたシニア代表の予備軍で構成されたオールブラックスXVを相手に、前半は守備で粘りを見せたが、ハンドリングエラーの多さに流れを作れず、後半は失点を重ねて完敗。課題の残る試合となった。

 ジャパンXVは、FL福井翔太選手やセブンズ日本代表経験のあるWTBジョネ・ナイカブラ選手ら5人のノンキャップ選手をはじめ、久しぶりに代表のジャージでプレーをする選手らを多く起用。「新たなコンビネーションを試したかった」(ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ)という側面もあり、本大会を睨んで選手選考を念頭に編成された。

 6月12日からの浦安合宿で集中的に取り組んできたタックルの強化もあり、試合序盤はリーチマイケル選手や福井選手らFW陣がブレークダウン周りで奮闘。相手のペナルティを誘い、前半5分には相手22メートル陣内で獲得した反則で得たPGを松田選手が決めて先制。好スタートを切った。

その後も、攻め込む相手に自陣でタックルやジャッカルで果敢に対応したが、前半15分、ジャパンの反則で相手に与えたペナルティからスクラムを起点に攻め込み、昨年の10月のニュージーランド代表戦にFBで出場したSOスティーブン・ペロフェタ選手がトライで逆転。その5分後にはペロフェタ選手はPGを成功させて8-3とリードした。

 相手のプレッシャーに押され気味のジャパンは、前半23分に好位置で獲得したPGを再び松田選手が決めて2点差に詰めたが、前半終了間際にPGの機会を与えて、これを決められ、前半を6-11で折り返した。

 後半に入ると、浦安から宮崎と続いている合宿の疲れの影響か、ジャパンはボールを保持してもパスが乱れ、ハンドリングエラーと守備の綻びが目立つようになる。

 オールブラックスXVは、慣れない暑さの中でのプレーにも要所は逃さず、後半5分にペロフェタ選手のPGで加点すると、10分後にはペロフェタ選手からWTBベイリン・サリバン選手につないで突破。フォローしたCTBジャック・グッドヒュー選手がインゴールに持ち込んでトライを決めた。

後半22分には、オールブラックスXVは相手陣内でのスクラムから攻撃。パスの乱れにも鋭く反応してこぼれ球を確保。パスをつないで、最後はFBルーベン・ラヴ選手から左サイドでパス受けたWTBエテネ・ナナイセトゥロ選手が走り込んでトライ。後半27分にはCTBアレックス・ナンキヴェル選手がさらに5点を加え、試合終了直前にも、ラインアウトから途中出場したファラウ・フォカタヴァ選手がステップで日本選手包囲網をかわしてフィニッシュ。ペロフェタ選手に代わって入ったブレット・キャメロン選手のコンバージョンも成功して、38-6の勝利で試合を終えた。

 日本は相手陣内に攻め込む時間帯もあったが、パスの乱れやハンドリングエラーが多く、トライチャンスにまで持っていけず、後半はHO堀江翔太選手やFL姫野和樹選手、SH流大選手ら2019年日本大会メンバーもベンチから出場したものの、巻き返しには至らず、後半は流れを引き戻せないまま無得点に抑えられた。

日本代表HC、若手のプレーを評価

 5トライを与えてノートライに抑えられた展開に、ゲームキャプテンを務めたFLリーチマイケル選手は、「望んだ結果ではなかった。悔しい結果だ。継続アタックをあまりできず、ノックオンしたりターンオーバーされたりが続いた。キックゲームというプランだったが、うまくはまらなかった」と肩を落とし、合宿で取り組んできたタックルについても「接点のところはできたが、ラインスピードのところはもっとできる」と振り返った。

 リーチ主将は、「新しい選手もいて、ジャパンの強みをどう出すか、考えないといけない。このチームの強さと反省点をよくすること。来週へ向けてやっていきたい」と話した。

 「結果は残念」というジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチは、「前半チャンスを作れたところもあって相手にプレッシャーをかけることができていたが、それを十分に活かすことができなかった。チャンスには得点に結びつけなければならない。今日、ニュージーランドがやったように、だ。そこから学ばないとならない」と指摘。「やるべきことはまだ多くある。来週へ向けて準備したい」と述べた。

その一方で、チームづくりとしての収穫も示唆。「ここ3~4週間、合宿で練習をしてきたが、チームとして試合はしばらくやっていなかったので、チームを戻すには時間がかかると思っていた」と述べ、本大会を睨んだチーム作りとして「若手や新しい選手にプレー機会を与えた。若手にとってはオールブラックスを相手にいい経験になったと思うし、福井翔太がとても良いパフォーマンスをしてくれた」と若手の反応を評価した。

 福井選手は、キャップ対象試合ではないものの、日本代表のジャージでの初試合で、「めちゃくちゃ緊張していたが、やるしかなかったので背水の陣。目の前の黒いジャージを着た人に絶対に負けたくないと、それだけ思っていた」と振り返り、セレクションがかかる来週以降の試合へ向けては「(今日は)ミスもあったし、ターンオーバーされたところもあったので、もっと詰めたい。一度(今日の)試合を見て、勝つためになにができるか考えて出直したい」と話した。

 

オールブラックスXV、暑さの中でのプレーにも手ごたえ

 厳しく慣れない暑さの中でもフィジカルでもスキルでも優勢を維持し、プレッシャーをかけ続けて勝利を手にしたオールブラックスXVのSHブラッド・ウェバー主将は、「とても暑かったし、ジャパンはシャープでスピードがあり、フィジカルに戦ってきて、最初の10分展開はきつかったが、我々はよくやったと思う」と振り返った。

後半ベンチから出場した共同主将のビリー・ハーモン選手も、「ジャパンはストラクチャーのあるチームなので、時間をかけると日本に好きにさせてしまう。スピード感を持って速くプレーしようと心掛けた」と語った。

 オールブラックスXVのレオン・マクドナルドヘッドコーチは、強い風の影響を考えて「前半は風下だったので賢くプレーして、耐えながら自分たちのゲームをすることを考えて、そこから後半へ持っていこうと考えていた」と明かし、「とてもフィジカルな試合だったが、いくつか良いトライを獲ることができた」と話した。

 オールブラックスXVとの2連戦の第2戦は、7月15日に熊本にて日本代表として対戦。その後は、パシフィックネーションズシリーズでサモア代表(7月22日、札幌)、トンガ代表(29日、花園)、フィジー代表(8月5日、秩父宮)との3連戦に臨む。

ジャパンXV試合メンバー:

1クレイグ・ミラー(埼玉ワイルドナイツ)→17シオネ・ハラシリ(横浜イーグルス)、後半20分

2堀越康介(東京サンゴリアス)→16堀江翔太(埼玉ワイルドナイツ)、後半6分

3垣永真之介(東京サンゴリアス)→18具 智元(神戸スティーラーズ)、後半6分

4ジェームズ・ムーア(浦安D-Rocks)

5アマト・ファカタヴァ(ブラックラムズ東京)

6リーチ マイケル*(ブレイブルーパス東京)→19ジャック・コーネルセン(埼玉ワイルドナイツ)、後半20分

7福井翔太(埼玉ワイルドナイツ)

8ファウルア・マキシ(スピアーズ船橋・東京ベイ)→20姫野和樹(ヴェルブリッツ)、後半6分

9齋藤直人(東京サンゴリアス)→21流 大*(東京サンゴリアス)、後半20分

10松田力也(埼玉ワイルドナイツ)→22小倉順平(横浜イーグルス)、後半16分

11セミシ・マシレワ(花園ライナーズ)

12中野将伍(東京サンゴリアス)→23長田智希(埼玉ワイルドナイツ)、後半26分

13ディラン・ライリー(埼玉ワイルドナイツ)

14ジョネ・ナイカブラ(ブレイブルーパス東京)

15松島幸太朗(東京サンゴリアス)

注:* はキャプテン

オールブラックスXV 試合メンバー:

1サヴィア・ヌミア(ハリケーンズ)→17オリー・ノリス(チーフス)、後半8分

2リッキー・リキテリ(ブルーズ)→16タイロン・トンプソン(チーフス)、後半17分

3ジャーメイン・アインスリー(ハイランダーズ)→18ポウリ・ラケテ=ストーンズ(ハリケーンズ)、後半28分

4ナイトア・アクオイ(チーフス)

5クインテン・ストレンジ(クルセイダーズ)

6アキラ・イオアネ(ブルーズ)

7デュプレッシー・キリフィ(ハリケーンズ)→20ビリー・ハーモン*(ハイランダーズ)、後半8分交替

8クリスチャン・リオ―ウィリー(クルセイダーズ)→19キャメロン・スアフォア(ブルーズ)、後半23分交替

9ブラッド・ウェバー*(チーフス)→21ファラウ・ファカタヴァ(ハイランダーズ)、後半17分

10スティーブン・ペロフェタ(ブルーズ)→22ブレット・キャメロン(ハリケーンズ)、後半17分

11エテネ・ナナイセトゥロ(チーフス)

12ジャック・グッドヒュー(クルセイダーズ)→23サム・ギルバート(ハイランダーズ)、後半28分

13アレックス・ナンキヴェル(チーフス)

14ベイリン・サリバン(ハリケーンズ)

15ルーベン・ラヴ(ハリケーンズ)

(注:* はキャプテン)