20歳以下の世界最高峰の大会が新型コロナウィルス感染症の世界的流行による中断を経て、今回4年ぶりに開催される。6月24日からの約3週間、南アフリカのケープタウンと周辺のウェスタン・ケープ地区で世界トップの12チームがしのぎを削り、この年代の世界王者を決める。
2019年のU20トロフィー優勝で出場権を獲得したU20日本代表も出場し、フランス、ウェールズ、ニュージーランドとプールAで対戦するが、その戦いのメンバー30人に最年少で名を連ねたのがFB/WTB矢崎由高選手だ。
今年3月に桐蔭学園高校を卒業して4月から早稲田大学に進学。この5月に19歳になったばかりだが、ラグビーキャリアでは強い印象を残してきている。
4歳から競技に親しんできた矢崎選手は高校1年からFBとしてレギュラーを獲得。身長180センチの大柄ながらスピードのある走りで存在感を示し、2021年1月の全国高校ラグビー大会で連覇に貢献した。
高校卒業目前の今年3月には高校日本代表としてアイルランド遠征に参加。U19アイルランド代表との2連戦には2試合ともFBとしてフル出場し、1戦目には2点を追う後半17分にトライを決めて逆転に成功し、日本の22-19勝利につなげた。2戦目は41-42の惜敗で対戦成績は1勝1敗だった。
矢崎選手は、その遠征で「オフ・フィールドでの心構えを学んだ」と言い、初の海外渡航を経験したことで「予想できることも多くなった」と話す。
それから3か月。今度はU20日本代表としてワールドラグビーU20チャンピオンシップに臨む。
U20日本代表でのプレーについて、矢崎選手は「テンポが上がると自分のやることや考えることが増えるが、やっていて楽しい。バックスにはスキルのある選手がいて、FWには強い選手がいるので、アタックのところでいろんなラグビーができると思う。タックルやブレークダウンまわりも日本の強みだと思う」と話す。
南アフリカでの大会を前にした5月27日、東京の秩父宮ラグビー場で行ったNZU(ニュージーランド学生代表)との対戦で、矢崎選手は後半11分に交代出場。後半に入って相手に2連続トライを決められて39-28とリードを許した嫌な流れを、後半23分の俊足と正確なキック力を活かしたトライで変えて、日本の勝利(52-46)につなげた。
自分たちにフォーカス
南アフリカの舞台で日本がプール戦で対戦する相手はいずれも強敵だ。
24日の初戦で対戦するフランスは2018年と2019年の直近2大会を制覇。29日の第2戦で対戦するウェールズも2013年大会に準優勝。そしてプール最終戦で対戦するニュージーランドは大会最多の6回優勝という実績を誇る。
そのほかにも優勝3回のイングランドや、今年3月のU20シックスネーションズを制したばかりのアイルランド、地元開催で2012年大会以来の優勝を目指す南アフリカなど、この年代の世界トップが集結している。出場全12チームはプール戦の成績に応じて順位決定戦に進むが、勝ち進めば対戦の可能性もある。なお、大会最下位チームはU20トロフィーへの降格となる。
U20日本代表は矢崎選手を含めて全員が大学生という顔ぶれ。加えて、コロナ禍の影響で海外遠征や対外試合から遠ざかっていた期間も短くない。
高校日本代表でアイルランド遠征に参加した矢崎選手のほかは、早稲田大学の同僚を含め、多くのU20代表メンバーがジュニア・ジャパンとして5月上旬にサモアで行われたワールドラグビー・パシフィックチャレンジ2023に参加した。
プロ選手は不在。しかも、国際試合経験の少なさも懸念ではあるが、矢崎選手は、相手ではなく自分たちにフォーカスすることで勝機につなげたいと語る。
「相手を見ることも大事だが、自分たちがどれだけできるかだと思う」と19歳のFB/WTBは言う。
「対戦相手はプロも多くて強いことは分かっている。そこで自分たちがどういうラグビーをするか、どう仕掛けていけるか、そこのマインドセットで全員がアグレッシブに戦えれば面白いラグビーになる」と話し、プレーの精度を上げて相手に迫りたいと言う。
「ラグビーワールドカップに出たいというのが小さい頃からの目標だった」という矢崎選手。20歳以下のワールドカップという舞台を前に、冷静に先を見つめる言葉が続く。
「チームとしては結果を出すのが一番で、個人としてもそう。でもそれ以上に、この大会を通して自分がこれから何にフォーカスして練習していかないといけないのかが分かれば、それは大きな収穫だと思う」と語る。
「自分がどれだけ戦えるかを実感したい」と話し、他国の同年代の選手との「差」を見つけてることで「自分をずっと磨き続けられるようにしたい」と意気込んでいる。
次のステップへ、世界への挑戦が始まる。
写真クレジット:JRFU