今季リーグワンでMVPに輝いたのは、スピアーズCTBでキャプテンとしてチームをけん引し、初優勝に貢献した立川理道選手だった。
昨季王者の埼玉ワイルドナイツとのプレーオフ決勝では冷静で正確なプレーを披露。試合終盤には、相手の意表を突くキックパスで木田晴斗選手の決勝トライをお膳立てした。
「ここ(の会場)に来てMVPを獲ったと知ったので、本当にびっくりしている。チーム、オレンジアーミーのみなさんのおかげ。来季もまたこの賞をいただけるように成長したい」
5月22日に東京都内で行われた表彰式の壇上で、立川選手はチームとスピアーズファンへの感謝を口にして、笑顔を見せた。
日本代表56キャップを保持する33歳は2012年からスピアーズでプレー。旧トップリーグの下部リーグからスタート。昇格したトップリーグでのチームの低迷期を経て、2016年から指揮を執るフラン・ルディケ監督のもとでキャプテンを務めて7シーズン目になる。
トップリーグ最終シーズンの2021年、リーグワン初年度の昨季とスピアーズは2年連続で3位に入り、今年ようやくクラブ史上初のリーグタイトルを獲得した。
そのシーズンの締めくくりの受賞に、「これは本当にでき過ぎ。ルディケヘッドコーチと一生にやってきて、苦しい時もあったが、自分たちがやってきたことは間違いではなかったと証明できた。さらに強いチームにしていきたい」と語った。
ベストXVには、優勝したスピアーズからHOマルコム・マークス選手、PRオペティ・ヘル選手、SOバーナード・フォーリー選手、WTB木田晴斗選手が選出。準優勝のワイルドナイツからも、リーグワン前身のトップリーグから9シーズン連続選出となったPR稲垣啓太選手、CTB長田智希選手、CTBディラン・ライリー選手、FB野口竜司選手が選ばれた。
クラブ史上最高成績の3位に入った横浜キヤノンイーグルスからはSHファフ・デクラーク選手が選ばれ、南アフリカ代表で同僚のFLピーターステフ・デュトイ選手(トヨタヴェルブリッツ)、NO8クワッガ・スミス選手(静岡ブルーレヴズ)も名を連ねた。
「とても楽しく、思い出に残るシーズンになった」というデクラーク選手は、「日本には優秀な9番が揃っていて、日本代表の9番に誰を選ぼうかと頭を悩ますぐらい、いろんな選手がいるなかで自分を選んでもらって、とてもうれしい」と喜んだ。
また、長田選手は新人賞も受賞しての2冠。今季1月21日の第5節ブラックラムズ戦に先発でデビュー。リーグ戦は11試合に出場して8トライ。プレーオフの準決勝、決勝にも出場して決勝では1トライを決めた。
長田選手は、「ルーキーだからこそ思い切りやれたと思う。来季以降、さらにチームに貢献できるように、成長して強くなります」と宣言した。
得点王はスピアーズSOフォーリー選手
レギュラーシーズンでの成績が評価対象となる個人賞では、得点王はスピアーズSOフォーリー選手が獲得した。
オーストラリア代表の司令塔は、スピアーズでレギュラーシーズン15試合に出場して173得点(29PG、43コンバージョン)を叩きだし、プレーオフでも安定したキックでチームの初優勝に貢献した。フォーリー選手の得点数は、146得点で2位のティアーン・ファルコン選手(トヨタヴェルブリッツ)以下を大きく引き離した。
フォーリー選手は、「ハードなシーズンだったが、クボタとしても素晴らしいシーズンになった。チームの努力の賜物だ」とコメントした。
最多トライゲッターは、16試合で18トライを挙げた東京サントリーサンゴリアスWTB尾崎晟也選手で、2位の木田選手とは2本差(14試合16本)だった。尾崎選手はベストXVとのダブル受賞となった。
ベストキッカー賞は85.5%の成功率をマークしたワイルドナイツSO松田力也選手が受賞。また、ベストタックラー賞は87.9%の数字を出したサンゴリアスLOハリー・ホッキングス、ベストラインブレイカー賞は23回を記録した、スピアーズWTB木田晴斗選手が初めて獲得した。
クオリティアップ、100万観客動員へ
2シーズン目を迎えた今季の総入場者数は、ディビジョン1から3までレギュラーシーズン154試合と、入れ替え戦や順位決定戦を含めたプレーオフ14試合が行われ、745,311人が来場。1試合平均で4,436人が観戦。コロナ禍の影響で28試合が中止を余儀なくされた昨シーズンの150試合484,047人、1試合平均3,227人から大きく伸びた。
ディビジョン1の総入場者数はリーグ戦96試合で551,417人、1試合平均5,744人を数え、リーグ戦の最多は3月11日に東京の秩父宮ラグビー場で行われた第11節サンゴリアス対ワイルドナイツ戦の19,079人。プレーオフを含めると、国立競技場で開催されたワイルドナイツとスピアーズによる決勝で歴代最多の41,794人を記録。プレーオフ4試合で総入場者数7,9366人、1試合平均19,842人を集めた。
リーグワンの玉塚元一理事長は、「ゲームの内容がものすごくレベルが上がり、シーズン中もものすごくエキサイティングなゲームがたくさんあった」として選手やコーチ、関係者に感謝を示した。
さらに理事長は、「フランスのワールドカップが終わったあとの3シーズン目には、さらにクオリティを上げて、4年目には100万人ぐらいのお客様に来ていただけるように、リーグを進化させ、頑張っていきたい」と抱負を述べた。
一方、リーグワンの東海林一専務理事は、リーグワン立ち上げ時から開催を目指している海外リーグクラブとの交流試合を来季にも実現する見込みがあることを明かし、「必ず秋までに発表する。実行すべく、動いている。フォーマットや次期など、今まさに検討中。必ず(今年の)秋までに発表する」と語った。
<リーグワン2022-23アワード受賞者>
ベストXV
PR1 稲垣啓太 (埼玉パナソニックワイルドナイツ)
HO マルコム・マークス (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
PR3 オペティ・ヘル (クボタスピアーズ船・橋東京ベイ)
LO ワーナー・ディアンズ (東芝ブレイブルーパス東京)
ハリー・ホッキングス (東京サントリーサンゴリアス)
FL 姫野和樹 (トヨタヴェルブリッツ)
ピーターステフ・デュトイ(トヨタヴェルブリッツ)
NO8 クワッガ・スミス (静岡ブルーレヴズ)
SH ファフ・デクラーク (横浜キヤノンイーグルス)
SO バーナード・フォーリー (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
WTB 木田晴斗 (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
尾崎晟也 (東京サントリーサンゴリアス)
CTB 長田智希 (埼玉パナソニックワイルドナイツ)
ディラン・ライリー (埼玉パナソニックワイルドナイツ)
FB 野口竜司 (埼玉パナソニックワイルドナイツ)
MVP 立川理道(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
新人賞 長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ)
得点王 バーナード・フォーリー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
最多トライゲッター 尾崎晟也(東京サントリーサンゴリアス)
ベストキッカー 松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)
ベストラインブレイカー 木田晴斗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
ベストタックラー ハリー・ホッキングス(東京サントリーサンゴリアス)
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