トゥールーズで今季ワールドシリーズも10戦目。2024年オリンピック開催国のフランスを除いて、シリーズ最終上位4チームが手にできるオリンピック出場権獲得競争は5月20-21日ロンドンで行われるシリーズ最終戦まで続く。だが、降格を避けたい下位陣の戦いはトゥールーズで節目を迎える。

今大会終了後、最下位チームは自動降格が決定。また、12位から14位まではロンドンで行われるプレーオフに、4月のチャレンジャーシリーズで優勝したトンガとともに挑み、来季シリーズ出場の残り1枠を懸けて戦う。最下位チームは自動降格回避、12-14位チームはプレーオフ圏回避へ、今大会がラストチャンスとなる。

 現在、自動降格に最も近いのは日本。勝ち点16で最下位に沈む。プレーオフ圏にあるのは12位スペイン(勝ち点48)、13位ケニア(37)、14位カナダ(24)。自動残留となる11位はウルグアイ(49)だ。

 日本はプールDでサモア、オーストラリア、アイルランドと戦う。自動降格を回避するには最低でも上位2位以内に入って準々決勝へ進まなければならない。その上で、勝ち点で日本に8差のリードをつけているカナダが最下位または下から2番目で終ることで、勝ち点を上回らなければならない。

なお、カナダはプールAでニュージーランド、ウルグアイ、ケニアと同組。スペインはプールBでアルゼンチン、英国、ドイツと戦う。プールCはフィジー、フランス、南アフリカ、アメリカの対戦だ。

 日本は、残留へ向けてかなり厳しい状況にある。

チームを率いるサイモン・エイモーヘッドコーチは、「今季のシリーズはプレースタンダードが高い。そのなかで、日本は大会ごとに良くなってきている。ただ問題は、ほかのチームも力をつけてきている点だ」と言う。

「当初は、前半良いパフォーマンスをしても後半に疲れてプレーレベルが落ちる傾向があった。それが今では、疲れた状況でも判断力を維持できている。状況判断力も上がってきている」と語る。

 

元世界トップ選手がアドバイス

 7人制英国代表を率いて2016年オリンピックで銀メダルを獲得した指揮官は、当時のチームで世界トップでの戦いを続けた、教え子らを臨時コーチに招聘して強化を加速させている。

今年春先のキャンプにはワールドシリーズ歴代最多トライ王のダン・ノートン氏、トゥールーズ大会を前にした4月の国内キャンプには7人制英国代表で最多キャップを獲得したジェームズ・ロドウェル氏を呼び寄せ、日本選手に彼らの強みの伝授を試みてきた。ノートン氏はスピードとラインブレーク、ロドウェル氏はセットピースとキックオフで世界トップのスキルを持つ。

今年1月の沖縄合宿でも指導にあたっていたロドウェル氏は、「自分が現役時代に得た知識や経験を共有してプレー改善の手助けをできることは、とてもエキサイティングだ」と言い、この数か月での日本選手の変化について「大きな進歩がある。日本の選手はスキルや俊敏性、フットワークが素晴らしい。状況とポジションにあった形で正しい時に使えるようになればもっと良くなる」と語る。

 日本は4月のシンガポール大会の初戦で英国に前半12-5で折り返し、後半も終盤まで17-5とリードを奪った。しかし、試合終了直前に2本のトライを許して19-17と逆転された。勝利目前に迫る戦いをするまでの伸びは見せたものの、最後に落として8強入りのチャンスを逃した。

勝利を逃さないためには何が必要か。ロドウェル氏は、「このグループのメンバーは若いしプレー経験も浅い選手が多いが、セブンズの試合は展開が早く、素早い判断が求められる。チームとしてプレーを共にして経験を積むことができれば、それが成功につながる」と語る。

 彼らスポットコーチの指導を受けてきた男子7人制日本代表の松本純弥選手は、「あれだけ活躍してきたレジェンドにプ教えてもらう機会はなかなかない。すごく勉強になる。チームのスピードも上がってきた」と手ごたえも得ている。

 

シンガポール大会で得た自信

 日本はシンガポールのプール戦で英国には惜敗したが、アイルランドには勝利を収めた。

 松本選手は、「シンガポール大会でアイルランドに勝てたことは自信になったし、英国戦もロスタイムで負けたが、ここまでできる、勝てるという自信になった」と語る。

試合をしっかりモノにするポイントについては、「最後は気持ちの部分。どちらが集中力を切らさずにできるかだったと思う」と振り返り、「チームが一つになってマインドを合わせて戦い抜くかが重要になる。落ち着いて、みんなを活かすプレーを意識したい」と語った。

 4月の香港とシンガポールでチームの得点源として存在感を発揮した丸尾崇真選手は、「15人制と動きが違うところもあって初めはすべてが新しかったが、セブンズのプレーに慣れてきて余裕がでてきた。シンガポール大会は個人としてもチームとしても良かったと思う」と話して、手ごたえを覚えている。

 トゥールーズでは来季の行方が決まるため、プラスアルファで精神的なプレッシャーがかかることも考えられる。だがエイモーヘッドコーチは、「メンタルはスキルの一つとして改善できる」と指摘。選手たちは専門家の指導を受けており、対策済みという認識を示した。

あとは、トゥールーズのピッチで選手が持てる力をフルに発揮するだけだ。

 

男子シリーズ優勝争い、ニュージーランドがリード

 男子のシリーズ優勝争いも大詰めだ。

現在トップに立つのはニュージーランドで、香港大会とシンガポール大会の連続優勝で今季4勝を挙げて勝ち点は164。総合4位以内を確定させて来年のパリオリンピックへの出場権も獲得した。シンガポール大会準優勝で総合2位に付けるアルゼンチンに勝ち点で24差をつけている。

 トゥールーズを含めて今季は残り2大会。今週末のフランスでニュージーランドがアルゼンチンに19点差をつけることができれば、ロンドンを待たずにシリーズ総合優勝が決まる。

 上位陣の争いは激しく、アルゼンチンは総合3位のフィジー(130)と勝ち点は10差。4位はフランス(122)、オーストラリアが勝ち点112で5位につけ、それをサモアが1差で追っている。7位の南アフリカも勝ち点106で、今大会の結果次第で順位が変わる可能性もある。

 3枠を残すオリンピック出場権争いでは、アルゼンチンは今週末の大会で準決勝進出を決めれば4位以内が確定。フィジーもトゥールーズで優勝できれば、パリ行きのチケットを確保できる。

 

女子は最終戦、シリーズ優勝とオリンピック枠決定へ

 同時開催となる女子のシリーズはトゥールーズで今季最終ラウンドを迎える。

シリーズ総合優勝に最も近いのはニュージーランドで、全7ラウンド中、第2ラウンドのケープタウンから前回の香港まで5連覇中で勝ち点は118。総合2位につけるオーストラリア(102)とは勝ち点16差。今大会の8強進出決定で、2020シーズン以来の総合優勝が決まる。

オリンピック出場権争いは、一番乗りを決めたニュージーランドのほか、オーストラリアと3位につけるアメリカ(勝ち点90)が確定済み。開催国で現在4位のフランス(78)を除いて残る出場枠は1つ。現在アイルランドが勝ち点64で5位につけ、それを6位のフィジーが2差の62、さらに英国が勝ち点60で追っている。

このままアイルランドがフィジーと英国を抑えてフィニッシュできれば、アイルランドがパリ行きをチケットを手にすることになる。

 アイルランド女子7人制のLucy Mulhall主将は、「(シリーズ)最後の大会にならないと勝負は決まらないと思っていた。家族のサポートを受けてここで出場権を獲得できれば、本当にエキサイティングだし、すごく特別なことだ」と話している。

 アイルランドはプールBでオーストラリア、フランス、ブラジルと同組だ。プールAではニュージーランド、カナダ、アメリカ、ポーランド、プールCでは英国、フィジー、スペイン、日本が戦う。なお、日本は勝ち点28で現在9位につけている。