6月24日から南アフリカで開催されるワールドラグビーU20チャンピオンシップへの出場が決まっているU20日本代表で、大会へ向けたチームづくりが着々と進められている。

 指揮を執るのはロブ・ペニーヘッドコーチ。オーストラリアのワラターズやアイルランドのマンスターをはじめ、リーグワン前身のトップリーグでNTTコミュニケーションズ・シャイニングアークスを率いるなど豊富な指導歴と日本ラグビーについての知識を有し、U20ニュージーランド代表では2012年のジュニアワールドチャンピオンシップ準優勝に導いた実績がある。

 夏の本大会へ向けて今年2月に始動。そこから3月までの間に3度のセレクション合宿を行い、合計78人をチェック。3月下旬のTIDキャンプでは37人に絞り込まれ、4月中旬の合宿には代表候補36人と練習生一人が参加した。

5月3日からはサモアで開催されるワールドラグビーパシフィック・チャレンジ2023に出場する。U23年代が対象の大会だが、日本はU20代表がジュニア・ジャパンとして出場し、フィジー・ウォリアーズ(3日)、トンガA代表(8日)、マヌマ・サモア(13日)との対戦で選手の実戦経験とチーム強化を図る。

 「若い選手たちを指導できることは光栄」というペニーヘッドコーチは、この年代の選手たちの成長ぶりについて「彼らはこれから成熟する成長過程にある。技術的にも戦術的にも選手たちにはかなり成長が見られて、コーチとしても彼らの成長レベルにはうれしく思っている」と述べて、手ごたえを得ている。

 代表候補メンバーは大学生が中心の編成。しかもこの3年間は新型コロナウィルス感染症の世界的流行で競技生活が大きく制約された期間でもあったため、本大会までに選手の経験を補い促進させたい思いがある。その一つが、パシフィック・チャレンジへの出場だ。

 「いまの若手はコロナ禍の影響で合宿など多くの制限を受けて、自分たちを表現する機会がなかったが、選手はいろいろな経験を積むことで成長できる」とペニーヘッドコーチは言う。

 「サモアの大会はU23年代の大会なので、我々の選手たちはかなりタフな戦いを強いられると思うが、南アフリカでの本大会に向けては必要な部分でいい経験になるはずだ。とても才能のある選手たちが揃っているし、相手のフィジカルを出させないような賢い試合マネジメントができれば、本大会へ向けて良いステップになる」と期待する。

 

選手の成長への期待

 プレーとしては「日本の強みとしているテンポの速い、スピードがあり、スキルに富んだ、相手の隙をつくようなラグビーで、相手に守備の的を絞らせないようなアタックをしたい」とU20日本代表指揮官は言う。

メンタル面を含めたプレーイメージをチームで共有できるように、著名な歴史上の人物を例に挙げて選手に提示したと明かた。その人物は、戦国武将の織田信長。容赦しない精神で、時には冷酷に時にはスマートに戦えるチームを目指しているという。

 ニュージーランド出身の指揮官は、U20代表としての活動時間が限られているについて、日本の将来を担うこの年代の選手の育成育成のためには活動体制の見直しも必要と説いている。

「ほかの国では、例えばシックスネーションズでU20の大会が行われ、ニュージーランドのスーパーラグビーの傘下にU20プログラムがあるなど、選手たちは試合の機会を得ている」と指摘。U20ニュージーランド代表が昨年U19代表として、U20チャンピオンシップ開催地の南アフリカへ遠征を実施し、現地で4試合を行い、現地の環境を把握した例も挙げた。

「日本では大学のシーズンが終わって初めてU20で合宿を行い、本大会へ備えているが、プレー機会がかなり限られている。これは変えていく必要があると思う。この年代の選手たちに、できるだけいい準備期間を与えられるように、自分たちが何かを残せればと思っている」と語った。

 6月24日から7月14日まで南アフリカで開幕されるU20チャンピオンシップは、コロナ禍の影響で2020年から3大会連続で中止となったため今回は4年ぶりの開催。この年代の世界トップ12チームが集まる大会で、日本はプールAでフランス、ウェールズ、ニュージーランドと対戦することが決まっている。

 ペニーU20日本代表ヘッドコーチは言う。

「この年代の選手は、驚くような勢いで成長している。我々の選手たちは能力的には十分なものを兼ね備えているし、その能力も1つ1つの練習で繰り返し取り組むことによって伸びている」と語る。

「選手が成長できるラグビーを落とし込みたい。U20のプログラムを通じて選手としてだけでなく人としても成長して、この経験を活かしてフル代表につなげてくれればと思っている。国を代表して戦うことに誇りを持っている選手が揃っているし、自分は魂を込めてプレーするという“ベイビー・ブロッサムズ”を求めている。選手たちにはそのなかでベストを出してほしい」

 今夏の本大会を念頭に、U20日本代表の選手たちが5月のワールドラグビーパシフィック・チャレンジ2023を経てバージョンアップできることを期待している。