「我々が目指すのはラグビーワールドカップで最高のラグビーをすること。そのために、6月の合宿と7月のテストマッチでのビルドアップが重要になる。6月の合宿で代表活動に戻るのが待ち遠しい」

9月8日にフランスで開幕するラグビーワールドカップ2023まで半年となって、ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチはそう語った。

4年に一度の世界最高峰の大会を戦う代表チームの準備をジャンボジェット機のテイクオフに例えて、6月中旬からの合宿で本格始動すると明らかにした。

現在行われているリーグワンが終了後、選手に心身ともにリフレッシュする期間を与えた後に合宿へ招集。7月に予定されているオールブラックスXVや、トンガ、サモア、フィジーとのパシフィックネーションズシリーズに臨み、本大会へのチームづくりの最終段階に入る。

「オールブラックスXVはオールブラックスのBチーム。彼らのモチベーションは高く、タフな2試合になるが、それは我々がワールドカップで戦うために必要としているものだ。太平洋諸島各国との対戦はフィジカルな試合になる。サモアはワールドカップでも戦う相手で、彼らと国内で試合ができることは準備としてとても大きい」とジョセフ指揮官。

「日本ラグビーはボールを持った攻撃が土台で、非常に良いフィットネスがあれば持ち前のスキルも出せる。だが試合でのポゼッションは45%で、55%はタックルが必要になる」と指摘。本大会へ向けてセットプレーや相手のキックゲームへの対応とともに、守備の強化に取り組みたいと語った。

チームの編成については、ジョセフヘッドコーチは「テストマッチで多くの選手を試してきて、リーグワンで良いラグビーをしている選手も多い。新たに出てくる選手も重要で、リーグワンでプレーしている選手全員にチャンスがある」として、新たな戦力の台頭への期待を示した。

だが同時に、今季リーグワンで好調を維持しているFLリーチ マイケル選手(ブレイブルーパス東京)や、リーグ首位を堅持している埼玉ワイルドナイツの第1列で活躍するPR稲垣啓太選手やHO堀江翔太選手、HO坂手淳史選手ら経験豊富な選手の存在にも言及。「すでに代表でプレーしている選手たちの経験はワールドカップで重要。そこが成功の土台になる」と語った。

 

2019から2023へ

半年後に幕が開くフランス大会へ、ジョセフヘッドコーチは、2019年日本大会での成功が自身とチームにとって重要な指標になっているという。

「2019年の成功は私だけでなくチームにとっても、チーム状態が良ければ勝ち進めるという認識を得た点で重要だった」として、初の8強入りを遂げた前回の日本大会を踏まえて、チームのコディショニングが成功へのカギの一つになるという認識を示した。

前回大会の準備と比較すると、日本代表候補のサンウルブズで参戦していたスーパーラグビーからの除外や2020年から続いたコロナ禍など、今大会へ向けた準備期間にチームを取り巻く環境に変化もあった。その中で、昨年は国内外でテストマッチ7試合を行い、フランス代表との3戦、イングランド代表、ニュージーランド代表というティア1クラスとの対戦も実施した。

ジョセフ指揮官は、「2019年大会の経験は2023年大会へ向けて、私自身、指導者として素晴らしい経験になっている。選手の顔ぶれなどに変化もあるが、大会へのプロセスに変わりはない」と述べて、ステップを踏んで準備を進めるとした。

「最初のステップは7月のテストマッチに勝つこと。その次のステップは本大会へ良い状態で入ることだ。選手全員が適切な時にピークを迎えられるようにしたい」と語った。

本大会で日本がプールDで対戦するのはチリ(9月10日、トゥールーズ)、イングランド(同17日、ニース)、サモア(同28日、トゥールーズ)、アルゼンチン(10月8日、ナント)だ。

「一試合一試合、取り組んでいく」というジョセフ日本代表ヘッドコーチは、「初戦のチリとの試合は我々にとっても最も重要な試合になる。イングランド戦はその次に重要な試合だ」と話し、初戦からの2試合で勝利を手にして自信と勢いをつけたい意向を示唆した。

本大会前に用意された7~8月の日本の試合はリポビタンDチャレンジカップ2023として6試合。オールブラックスXVとの2連戦では7月8日(土)にジャパンXVとして東京の秩父宮で臨んだ後、翌週15日(土)に日本代表として熊本で対戦する。さらに、パシフィックネーションズシリーズでは7月22日(土)に札幌でサモア代表、29日(土)に大阪でトンガ代表、8月5日(土)にフィジー代表(場所未定)と対戦する。その後、欧州へ向かい、イタリア国内で8月26日(土)に本大会前最後のテストマッチでイタリア代表と対戦する予定だ。

イタリアは世界ランクで日本の9位に対して13位。現在行われているシックスネーションズでは初戦でフランスに競り負けるなどでここまで3敗だが、昨秋にはオーストラリアとの接戦(28-27)を制した力がある。

ジョセフ日本代表指揮官は、「イタリアは我々が本大会前に戦う相手としてパーフェクト。とても良いテストマッチになるだろう」と話している。