オークランドのイーデン・パークで行われた決勝は2017年大会決勝と同じ顔合わせとなった。

 ニュージーランドはプールAを1位で抜け、10月29日の準々決勝ではウェールズに55-3と快勝した。ヤマ場は11月5日の準決勝で、8強戦でイタリアに39-3と勝利したフランスと対戦。それぞれがイエローカード1枚ずつを出す競り合いで得点経過も最後までフランスに食い下がられる厳しい展開になったが、ニュージーランドが25-24で辛勝し、決勝に進出していた。

一方、前回大会決勝でブラックファーンズに32-41で敗れたイングランドは、雪辱を期して臨んだ今大会で連勝記録を30に伸ばす快進撃で決勝に進出。フィジー、フランス、南アフリカに勝ってプールCを1位で突破すると、決勝トーナメントでは準々決勝でオーストラリアに41-5と圧勝し、準決勝ではカナダを26-19で退け、勢いに乗っていた。

決勝でも先手を取り、FB Ellie Kildunne選手のトライで3分に先制すると、10分後にはHO Amy Cokayne選手がチームの得意とするラインアウトからのドライビングモールで5点を加えた。CTB Emily Scarratt選手のコンバージョン2本も決まって、試合開始15分でイングランドが14-0のリードを奪った。

だが、良い流れは長く続かない。その2分後に反撃を試みるニュージーランドのWTB Portia Woodman選手を阻止しようとしたWTB Lydia Thompson選手に危険なヘッドコンタクトがあったとしてレッドカードが出され、イングランドは数的不利に。一方のニュージーランドはこのプレーで負傷したWoodman選手を失なった。

 ニュージーランドはそこから反撃を開始。HO Georgia Ponsonby選手と、Woodman選手に代わって入ったWTB Ayesha Leti-I’iga選手がそれぞれトライ。前半終了間際にはPR Amy Rule選手がモールから得点して点差を詰めた。

イングランドも一人少ないながらFL Marlie Packer選手、Cokayne選手が5点ずつ加えて試合はシーソーゲームの展開になるが、前半を26-19リードで折り返していた。

 だが後半開始早々、連覇を狙うニュージーランドが攻勢を強め、CTB Stacey Fluhler選手がインゴールに持ち込んで2点差とすると、49分、敵陣深く攻め込んだ展開から最後は2分前に交代出場したばかりのPR Krystal Murray選手が押さえて、29-26とブラックファーンズが逆転に成功した。

 粘るイングランドは得意のモール攻撃で54分にCokayne選手がこの試合3トライ目をマークして、チームは再び31-29と先行する。その約10分後には、ニュージーランドにイエローカードが出て数的不利も解消された。

 しかし、ニュージーランドは71分、CTB Theresa Fitzpatrick選手が相手の裏へキックパスを送り、反応したFluhler選手がゴール前で受けてLeti-I’iga選手へつないでトライををお膳立て。ニュージーランドが再び逆転に成功した。最後まで粘るイングランドだったが、ニュージーランドはそのリードを最後までキープし、念願の連覇を達成した。

 ニュージーランド共同キャプテンのSO Ruahei Demant選手は、「チームを誇りに思う。ホームでワールドカップに優勝するという一生に一度のチャレンジのために多くを犠牲にしてきたが、それをやり遂げた」と笑顔を見せた。

 相手に先行される厳しい展開が続いたが、ブラックファーンズの主将は「プレッシャーには感じていなかった」と言う。「みんな落ち着いていたし、どこにスペースがあるか分かっていたので、そこにボールを運ぶだけだった。相手のラインアウトドライブが危険なのはわかっていたので、ボールをキープしてペナルティを与えないようにしていた」とコメント。

 「我々のチームの強みの一つは前半から学べることで、そこから解決策を見つけることができる。それを後半実行した。選手23人による80分間の仕事だったが、大枠での選手32人を本当に誇りに思う」と語った。

 コーチ業引退を撤回してブラックファーンズを率いたウェイン・スミス監督は、「たとえ今日優勝できていなくても、引き受けた甲斐があった。素晴らしい選手たちで、ここに来るまでに大変なハードワークをしてきた。このチームを誇りに思うし、32人で戦ってきた。イーデン・パークで4万人の観客がブラックファーンズとチャントするなど、思ってもみなかった。実に驚異的だった」と振り返った。

 イングランドのSarah Hunter主将は、「スポーツは残酷なもので、望み通りに終わるものではない。今日の私たちがそうだった。結果は残念だが、チームのことは誇りに思う。60分間苦しい展開になったが決してあきらめなかった。自分たちのプレーで次の世代をインスパイアできていることを願うし、この8週間の多々戦いを誇りに思える何かを見せられたかと思う」と語った。

 次の女子15人制の世界王者を決めるラグビーワールドカップは、2025年にイングランドで行われることが決まっている。

 

トライ王はWoodman選手、最多得点はScarratt選手

 今大会のトライ王は7トライを決めたニュージーランドのPortia Woodman選手が獲得。2位タイに入ったイングランドのAmy Cokayne選手とMarlie Packer選手、およびカナダのEmlily Tuttosi選手を1トライ差で抑えてトップに立った。3位は5トライのニュージーランドのRuby Tui選手だった。

 ニュージーランドはチームのトライ数でも44本でトップ。2位のイングランドとは1差で、3位のフランス(27本)を大きくリードした。一方、チームの最多得点では270点をたたき出したイングランドに軍配が上がり、ニュージーランドは268で2位だったが、両者は3位に入ったフランス(190点)を大きく引き離しており、得点力の高さが数字でも示されている。ニュージーランドはチームのオフロードパス(91)、クリーンブレイク(50)、ラン(906)でもトップで他を圧倒した。

個人の最多得点はイングランドのEmliy Scarratt選手で44得点を挙げたが、Woodman選手はこのカテゴリーでも35得点でチームメイトのRenee Holmes選手とともに3位タイに入り、また、クリーンブレイクの数でも唯一2桁の12本でトップだった。

得点リストの2位はフランスのCaroline Drouin選手で41得点。Drouin選手は最多コンバージョンもマークしており、イングランドのEmily Scarratt選手とともに12本を成功させた。3位は11本を決めたニュージーランドのHolmes選手だった。

また、タックル最多は80本のウェールズのAlex Callender選手で、フランスのMadoussou Fall選手も同数を決めている。

オフロードパスではニュージーランドのRuahei Demant選手が18本で断トツの1位で、Woodman選手はここでも10本を成功させて3位につけており、ニュージーランドの連覇成功に大きく貢献したことがうかがえる。オフロード2位はフィジーのSesenieli Donu選手で12本だった。

なお、イングランドのPacker選手はランのカテゴリーでも2位(74)に入り、ラン最多をマークしたのはカナダのSophie De Goede選手で101を記録。3位はオーストラリアのGrace Hamilton選手で71だった。