欧州遠征に出る前の10月末に東京でニュージーランド代表と31-38の接戦を演じた日本代表だったが、アウェイで臨んだ世界5位のイングランド代表戦では勝手が違った。

 トゥイッケナムに集まったホームの8万人の観客の大応援を背に、先週末のアルゼンチン代表戦の敗戦からの挽回を期すイングランドに終始圧倒され、試合中の修正もうまくいかずに7トライを許す展開になった。

 日本代表HO坂手淳史キャプテンは、「ミスとペナルティで相手を勢いに乗せてしまった」と肩を落とし、元キャプテンのFLリーチ マイケル選手も「自滅する部分が多かった」と嘆いた。

 試合開始からアグレッシブに攻めるイングランドに対して、日本はスクラムで押し込まれ、反則を取られる場面が多く、ボール争奪戦やハイパントの獲得戦でも劣勢に立たされた。

試合開始5分でイングランドにPGで先制されると、7分後にはFBフレディー・スチュワート選手、24分にはSOマーカス・スミス選手にそれぞれトライを決められた。CTBオーウェン・ファレル選手のキックも冴えて、前半25分までに17-0とリードを許した。

 日本は前半30分すぎにSO山沢拓也選手がPGを2本成功させて6点を返し、34分にはイングランドWTBジョニー・メイ選手のイエローカードで数的優位を得た。だがそれを活かすことができず、相手のプレッシャーにボールを失い、前半終了間際にCTBガイ・ポーター選手に前半3本目のトライを決められ、6-24で折り返した。

立て直したい日本は後半開始から山沢選手に代わってSO李承信選手を投入して、流れを変えようと試みたが、2019年日本大会準優勝のイングランドは後半も威力を継続。ハーフタイムから8分後にはPRエリス・ゲンジ選手が、10分にはファレル選手のキックパスにポーター選手が応えて、立て続けのトライで38-6とリードを広げた。

それでも日本はSH齊藤直人選手が交代出場から4分後の19分に、ブレイクダウンのこぼれ球に反応して中央を抜け出したLOワーナー・ディアンズ選手のプレーをフォローしてトライをマーク。李選手のコンバージョンも決まって13-38と点差を縮めた。

しかし、日本がトライを奪えたのはその場面のみ。ディフェンスでも素早い対応を見せるイングランドにスピードを活かした攻撃をできずに苦戦が続いた。

後半30分にはイングランドがラインアウトからモールで押し込み、ペナルティトライを獲得して7点を加え、日本は交代出場したWTBシオサイア・フィフィタ選手がイエローカードを受けてしまう。数的優位を得たイングランドは後半34分にスミス選手が5点を加え、ファレル選手がこの日7本目のキックを成功させて52-13の勝利を締めくくった。

 

10カ月後のRWCへ、日本代表HC「改善点は多い」

前週のプレーをしっかり修正したイングランドに対して、日本はこれで7月のフランス代表との2連戦から4連敗。イングランドとの対戦記録も10戦全敗となり、約10カ月後に控える2023年フランス大会でのプールDでの対戦を前に、厳しい現実を突きつけられる形となった。

 日本代表PR稲垣啓太選手は「想像以上に相手がプレッシャーをかけてきて、試合中に修正が効かずに80分終わってしまった。スクラムで我々が推しているように見えたのだと思うが、そういう印象を与えないためにも早く対応する必要があった」と反省。ミスや反則の多さもあり、修正しきれないままの展開に「自分たちで首を絞めた試合」と言った。

 リーチ選手は、「ボール保持の時間を大事にしようと思っていたが、ボールが簡単に転んだり、コンタクトでもいい継続ができず、前に出る速いテンポのラグビーができなかった」と振り返った。

2度のワールドカップを含めて2014年から昨年までキャプテンを務めたリーチ選手は、「かなりいい勉強になった。世界のトップはこういう感じだと改めて思った」と言葉を絞りだし、悔しさとともに来年の本大会へ現在地を確認したようだった。

「強さに脱帽」と負けを認めた日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、「イングランドの体力に対して弱さが出てしまい、相手のプレッシャーに勝てなかった。言い訳はできない。まだまだ改善すべき点がたくさんある」と指摘した。

一方、収穫としては「相手の流れを止めることができた場面もあったし、若い選手たちがトゥイッケナムで経験を詰めたことは重要だ。これからまだまだ成長していくと思う」と述べて、選手たちの今後の成長に期待を込めた。

日本は11月20日に、フランスのトゥールーズで来年のワールドカップ開催国フランス代表との一戦に挑む。

現在世界ランク2位のフランスは12日にマルセイユで、2019年ワールドカップ優勝国で世界4位の南アフリカに30-26で競り勝ち、同カードで13年ぶりの勝利を収めている。

日本とフランスの対戦は今季3度目。日本が2連敗しているが、勝利でテストマッチ連敗を止めて、来年のワールドカップ・イヤーを迎えたい。

 

イングランド指揮官、パフォーマンスを評価

 イングランド代表で2015年ワールドカップでは日本代表を率いたエディ・ジョーンズヘッドコーチは、「今秋テストシリーズでは毎試合向上したいと話していたが、今日はアルゼンチン戦よりも間違いなく良くなっていた。日本がどうプレーしたいか分かっていたので狙いを持って試合に臨み、選手は素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた」と評価した。

 来週のニュージーランド戦を前に日本戦で好感触を得たようで、「ニュージーランドはチームを再構築している段階だ。まず彼らのスコットランド戦を見たい」とコメント。なかなか勝てない相手だが、指揮官は2019年日本大会準決勝での勝利に言及して「あの試合のように正しい姿勢と正しいゲームプランで臨めば、歴史は変えられる」と述べた。

 

 

日本代表 試合メンバー:

1 稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

→17 クレイグ・ミラー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、後半9分

→1 稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、後半40分

2 坂手淳史*(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

 →16 堀越康介(東京サントリーサンゴリアス)、後半33分

3 具 智元(コベルコ神戸スティーラーズ)

 →18 木津悠輔(トヨタヴェルブリッツ)、後半33分

4 ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)

5 ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

 →19 ヴィンピー・ファンデルヴァルト(浦安D-Rocks)、後半32分

6 リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)

7姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)

8 テビタ・タタフ(東京サントリーサンゴリアス)

 →20 ピーター・ラブスカフニ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半12分

9 流 大(東京サントリーサンゴリアス)

 →21 齊藤直人(東京サントリーサンゴリアス)、後半15分

10 山沢拓也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

 →22 李 承信(コベルコ神戸スティーラーズ)、後半0分

11 ゲラード・ファンデンヒーファー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

 →23 シオサイア・フィフィタ(花園近鉄ライナーズ)、後半9分

12 中村亮土(東京サントリーサンゴリアス)

13 ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

14 松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)

15 山中良平(コベルコ神戸スティーラーズ)

注: * 印はキャプテン

 

イングランド代表 試合メンバー:

1 Ellis Genge → 17 Mako Vunipola、後半13分

2 Luke Cowan-Dickie → 16 Jamie George、後半13分

3 Kyle Sinckler → 18 Joe Heyes、後半27分

4 David Ribbans → 19 Alex Coles、後半15分

5 Jonny Hill → 20 Billy Vunipola、後半21分

6 Maro Itoje

7 Tom Curry

8 Sam Simmonds

9 Jack van Poortvliet → 21 Ben Youngs、後半24分

10 Marcus Smith

11 Jonny May

12 Owen Farrell*

13 Guy Porter → 23 Manu Tuilagi、後半24分

14 Jack Nowell → 22 Henry Slade、後半24分

15 Freddie Steward

注:* 印はキャプテン

Photo credit: JRFU