2大会連続5度目の出場で1994年以来の決勝トーナメント進出を目指すサクラフィフティーンだったが、2戦2敗の勝点ゼロでプール4位に沈み、希望をつなぐためには、イタリアに4トライ以上でボーナスポイントを獲得し、なおかつ、相手にボーナスポイントを与えないことが最低条件だった。

 オークランドのワイタケレで迎えた一戦で、女子日本代表は粘り強い守備と積極的な攻撃で果敢に挑んだが、相手のプレッシャーの影響か、要所でハンドリングミスが出て思うような攻撃を展開できず、守備に回る時間が増えた。

先制はイタリア。前半9分にラインアウトからの展開で、左サイドを突破したWTB Aura Muzzo選手からパスを受けたWTB Maria Magatti選手がラインを超えた。イタリアはその後もスピードのある攻撃で日本を押し込み、優勢に試合を進めた。

日本は守勢に回りながらも、前半半ば過ぎからFB松田凛日選手が左サイドで抜け出して攻め込み、27分には相手ラインアウトでのスチールから粘り強く攻め続けた。そして、29分のPKから再びフェーズを重ねる攻撃で相手を引き付け、最後は外に振ったところからFL細川恭子選手がトライを決めた。

同点にして勢いの出た日本だったが、前半終盤にPGを決められて前半を5-8で折り返した。

ギアを上げたい日本は後半早々にSHを阿部恵選手から津久井萌選手に交代し、49分にはSO大塚朱紗選手がPGを成功させて再び同点に追いついた。

しかし、初の8強入りへ勝利が必要なイタリアも攻勢を維持。54分にPGを成功させて再び先行する。

日本はベンチからフレッシュな選手を次々と送り出して反撃の糸口を探るが、後半63分にWTB今釘小町選手が危険なタックルでイエローカードを受け、数的不利な状況になる。

 サクラフィフティーンはイタリアの攻撃に対して粘りのプレーを見せていたが、67分にPGを与えて6点差のビハインドになる。それでも1トライ1コンバージョンで逆転可能という点差に攻撃を仕掛けたが、ミスやペナルティで攻撃を続けることができない。

イタリアは試合終了直前の78分にHO Melissa Bettoni選手がトライをマーク。CTB Michela Sillari選手がこの日4本目のキックとなるコンバージョンも成功させて、21-8で勝利。日本の敗退が決まった。

なお、この後の試合でカナダがアメリカに29-14で勝利して3戦全勝の勝点15でプールBを首位で突破。イタリアは2勝1敗の勝点9で2位、アメリカは1勝2敗の勝点5で3位、日本は3敗勝点0で4位だった。

 

日本代表主将、成長と課題を実感

 サクラフィフティーンのPR南早紀キャプテンは、「前回のワールドカップから5年間、ベスト8に行くという強い思いがあったが、そこに届くことができず、残念な気持ちでいっぱい」と肩を落とした。

 南選手は、後半特にマイボールを獲得できずに敵陣でプレーする時間が限られた点と、ペナルティの増加で相手にチャンスを与えた点を悔やんだ。

 前回2017年大会も経験した南選手は、今大会で日本代表としての成長を感じつつ、強豪国に勝利して決勝トーナメントに進出するために「自分たちに何が必要かを改めて学んだ。強豪国との違いは試合経験とラグビーのうまさ。どういう試合運びをしていくか、どういうプランでゲームを遂行していくか、これからの私たちに必要で求められるところだと思う」と話した。

 NO8斎藤聖奈選手は、「次のステージに行けず、日本代表として結果を残せなかったのは本当に悔しい」と残念がる。「コネクションがどこかで崩れて、世界と戦うにはまだまだ制度が足りない」と振り返った。

 齊藤選手も現在の代表チームで数少ない前回大会経験者の一人だが、「前回大会は世界を知った大会、今回はチャレンジした大会」と位置付け、「ここまで登り詰めてきていることを世界に示すことはできたが、ディフェンスは自信をもってコネクトできているが、日本はアタック力がまだまだ。前回より進化していると思うが、内容がよくても結果がでなければ意味がない。今後、試合の経験値を増やしたい」と前を向いた。

 一方、今回が初めてのワールドカップで3試合すべてにFBとして先発した、20歳の松田凛日選手は「フィジカルで負けなくなったが、試合経験、経験値の差が出たのかと思う。チャンスをものにする、トライまでつなげる力がないと、ベスト8には行けないと実感した」と話し、「ワールドカップは次回もある。それに向けて今回出た課題や修正点を活かしていきたい。今回、アタックで自分の通用する部分は見えたので、もっとチームの得点につながるような、チームを勢いづける選手になりたい」と語った。

 

マッケンジーHC、「選手を誇りに思う」

日本は2019年から元カナダ代表FWのレスリー・マッケンジーヘッドコーチを迎えて、海外遠征でのテストマッチや定期的な合宿を実施するなど、女子代表としては2017年大会までにはなかった強化プログラムを導入して、今大会へのチーム作りを進めた。今年は5月にオーストラリア、8月にアイルランドと対戦し、最新の世界ランキングで12位の日本に対して、それぞれ6位、8位という強豪との対戦で勝利を収めていた。

しかし、世界最高峰の舞台ではアメリカ(7位)を追い込む善戦を披露し、イタリア(5位)にも健闘を見せながら、勝利をつかむことができず、ワールドカップ8強入りという目標達成には届かなかった。

 試合後、マッケンジーヘッドコーチは、「選手たちはとても勇敢だった。私たちがやりたいと思っているパフォーマンスをした。特にディフェンスとセットプレーがよかった」と選手たちの努力を称えた、

 守備とセットプレーについては、世界の舞台で自分たちの能力を発揮するために2017年大会のものから特に改善を図ってきた点だと述べて、「世界基準の守備を見せたチーム、彼女たちの努力を誇りに思う」と話し、それだけに「結果には非常に残念。イタリアの良さに届かなかった」と悔しがった。

 サクラフィフティーン指揮官は、「もっとテリトリーを取るプレーが必要だったし、前の2試合で見せたようなプレッシャーをかけて相手の敵陣でフェーズを重ねて執拗にプレーする必要があった」と振り返った。

 プール戦で敗退となったが、マッケンジーヘッドコーチは今大会出場の意義について、こう続けた。

「今大会で世界の日本の女子ラグビーに対する見方を変えようという思いで来て、それはできたと思っている。選手たち、特に若い選手たちに、自分たちが世界の舞台でやれるのだと信じることができる刺激につながってくれればと願っている」

 

イタリア主将「簡単な試合ではなかった」

 歴史的な突破を決めたイタリアだが、簡単な試合出なかったことは、試合後のAndrea Di Giandomenico監督の表情と第一声が物語っていた。

 「準々決勝進出は非常に良かったが、全体的なパフォーマンスについてはあまり満足していない。我々はゲームコントロールを失った。その点では日本を祝福したい。彼女たちは素晴らしいパフォーマンスをした」とイタリア代表指揮官。

 「日本のアメリカ、カナダ戦がそうだったように、あきらめずに80分間攻めてくることはわかっていた。立ち上がりから激しく来ることはわかっていたので、ボールをキープして敵陣に入らなければならないと考えていた。ところがフィニッシュに持ち込めなかったので、日本にパワーとエネルギーで反撃されしまった」と振り返った。

 イタリア主将のNO8Elisa Giordano選手も、「日本はすごくいいディフェンスをするし、アタックもいいので、対戦相手としては簡単ではなかった。彼女たちはとてもいい試合をしたと思う。ただ、自分たちは厳しい時間帯もチームとして一つになって戦い、良くない場面ではすぐに対応した。それが違いを生んだと思う。その点は次の試合に活かせると思う」と語った。

準々決勝に向けて、Di Giandomenico監督は「ポゼッションを失うことはできない。ミスをなくしてハードワークしなければならない。我々のラグビーのアイデアは見せられると思うので、エネルギーと自信を回復しなければならない」と語った。

 

ニュージーランド、イングランドなど8強が出揃う

 なお、プールAではニュージーランドがスコットランドに59-0で快勝して3戦全勝の勝点15で首位通過。2位はウェールズに13-7で勝利したオーストラリアで2勝1敗の勝点8だった。3位はウェールズで1勝2敗の勝点5。4位のスコットランドは3敗ながら勝点2を獲得した。

 プールCではイングランドが南アフリカに75-0と大勝して3勝で勝点を14に伸ばして1位で通過し、フランスはフィジーに44-0と大勝して2勝1敗の勝点11で2位をキープした。3位は1勝2敗で勝点4のフィジー、南アフリカは3敗で勝点1の成績で4位だった。

 この結果、プールBのカナダ、イタリアとともにプールAから前回大会優勝のニュージーランドとオーストラリア、プールCからイングランドとフランス、さらに3プールの3位の中の上位2チームの枠でアメリカとウェールズが準々決勝に駒を進めた。日本およびフィジー、スコットランド、南アフリカは敗退となった。

 準々決勝は10月29、30日にオークランドで行われる。なお、準決勝は11月5日、3位決定戦と決勝は11月12日に開催される。

 

女子日本代表イタリア戦メンバー:

1南 早紀*(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 → 16小牧日菜多(日本体育大学ラグビー部女子)、61分

2谷口琴美(MIE PEARLS)

3加藤幸子(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 → 17ラベマイまこと(横河武蔵野アルテミ・スターズ)、54分

4佐藤優奈(東京山九フェニックス)

 → 18吉村乙華(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)、53分

5高野眞希(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 → 19川村雅未(RKUグレース)、58分

6細川恭子(MIE PEARLS)

 → 20向来桜子(日本体育大学ラグビー部女子)、67分

7長田いろは(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

8齊藤聖奈(MIE PEARLS)

9阿部 恵(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

 → 21津久井萌(横河武蔵野アルテミ・スターズ)、43分

10大塚朱紗(RKUグレース)

11今釘小町(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

 → 23庵奥里愛(MIE PEARLS)、74分

12山本 実(MIE PEARLS)

 → 22中山潮音(横河武蔵野アルテミ・スターズ)、56分

13古田真菜(東京山九フェニックス)

14名倉ひなの(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

15松田凛日(日本体育大学ラグビー部女子)

注:* 印はキャプテン

 

イタリア代表試合メンバー:

1 Silvia Turani

2 Melissa Bettoni

3 Sara Seye

4 Sara Tounesi → 19 Valeria Fedrighi、73分

5 Giordana Duca

6 Francesca Sgorbini

7 Giada Franco (for HIA) → 21 Beatrice Veronese

8 Elisa Giordano*

9 Sara Barattin → 22 Sofia Stefan、73分

10 Veronica Madia

11 Maria Magatti

12 Beatrice Rigoni

13 Michela Sillari

14 Aura Muzzo

15 Vittoria Ostuni Minuzzi

リザーブ

16 Vittoria Vecchini

17 Gaia Maris

18 Emanuela Stecca

20 Isabella Locatelli

23 Alyssa D’Inca

注:* 印はキャプテン