9日のカナダ代表との大会初戦を落として、8強入りの目標達成に勝利が必要な日本だったが、出足よく始めた前半の好機を活かせず、後半アメリカに4トライを許す展開で勝利と勝点を手にすることができなかった。

 試合開始4分に得た相手ゴール手前でのラインアウトの機会に、ショートサイドでパスを受けたSH阿部恵選手が先制トライをマーク。初戦のカナダ戦で課題となっていたラインアウトからの得点だった。

世界ランキング13位の日本はそこから速いテンポで攻撃を仕掛け、世界6位のアメリカ陣内でボールを保持して攻勢を維持。アメリカのハンドリングエラーやペナルティを誘い、前半13分には相手FL Kathryn Johnson選手がイエローカードを受けて数的優位も得た。

 しかし、その直後のラインアウトのチャンスにノットストレートを取られるなど、日本は試合の流れを引き寄せたい局面でミスが出てしまう。

 初戦でイタリアに敗れて決勝トーナメント進出のためにはこの試合の勝利が必要なアメリカは、苦しみながらも前半半ばにはPR Hope Rogers選手が大きくゲインをするなど、じりじりと反撃。22分にはSO Gabriella Cantorna 選手のPGで3点を返した。

日本は相手の攻撃を粘り強く防いだが、肝心なところでミスやペナルティが重なり、追加点を挙げることはできずに5-3で前半を折り返した。

 すると、アメリカは後半ギアを挙げて攻撃を展開。開始5分でHO Joanna Kitlinski選手が左サイドを駆け抜けて8-5と逆転する。

 日本も良く反応し、その6分後に相手22メートル内でのクイックタップからつないで、最後はWTB名倉ひなの選手がインゴールに飛び込んで、10-8と再びリードした。

 だが、その直後のリスタートでのミスからアメリカに攻め込まれ、ラインアウトからモールを起点に最後はCTB Alev Ketler選手がトライ。オリンピックにも出場したKetler選手はその7分後にはパワフルなキャリーで日本陣内に持ち込むと、キックパスでElizabeth Cairns選手のトライをお膳立てした。勢いを得たアメリカは70分にWTB Jennine Detiveaux選手が5点を加えた。

 日本は76分、相手キックをキャッチした今釘小町選手が自陣からステップで相手をかわして駆け上がり、ポスト裏にトライ。コンバージョンも成功させて7点を返し27-15とした。残り時間でなんとか点差を詰めたい日本だったが、79分に今釘選手がイエローカードを受けてピッチを去り、一人少ない中での戦いになる。

 アメリカは、この試合でコンバージョン2本を成功させてキックも好調なKelter選手が試合終了直前にPGも決め、30-17で試合終了。初勝利とボーナスポイントを手にして、明日16日に第2戦を戦うカナダとイタリアに勝点5で並んだ。

 一方、日本は2敗目を喫して勝点ゼロでプールBの4位だ。23日のプール最終戦でイタリアに勝利を挙げて3位に入り、3グループの3位チームで上位2位以内に入って決勝トーナメント進出の可能性を探ることになった。

 

「自分たちで手放した」

レスリー・マッケンジー女子日本代表ヘッドコーチは、試合後落胆を隠さなかった。

「本当にとてもがっかりしている。自分たちがコントロールしていたのに手放してしまった」と悔しがった。

「選手たちは、ペナルティの部分を除いては、我々が求めたことをすべてやってくれた。 初戦よりも良いボール支配を狙っていたが、テリトリーでは特にコントロールできていたし、試合を通してそこは良かったので誇りに思う」と日本指揮官。

「だが、チャンスを逃してしまった。規律の欠如と間違った判断が問題。このような形で教訓を得ることになったのは本当に残念に思う」と語った。

チャンスがありながら得点につなげられなかった点について、サクラフィフティーン指揮官は、「忍耐強くコントロールし続ける意図を失ってしまったのかもしれない。トライを決めるチャンスがありながら、パスを少し早く出したり、プレーを急いでしまったとろこがあった」と話した。

「試合に愛されず、厳しい教訓となったが、それもワールドカップ」とマッケンジーヘッドコーチは言い、戦いはまだ終わりではないと説く。

「まだ物語は完結してはいないし、結果も出ていない。我々は2敗したが、ポジティブな要素もあるし、自分たちがゲームをコントロールする能力もあるのだから、自分たち次第だ」

 女子日本代表キャプテンの南早紀選手は、「とても悔しい。スコアできるところでできずに、自分たちでチャンスを潰してしまった」と嘆いた。

 世界ランキングで6位のアメリカに対して日本は13位だが、「戦えているという実感はあった」と南選手は言い、日本の速いテンポで攻め込んだ部分には手ごたえを覚え、「強豪との差はスコアを獲るという点」と振り返った。

 決勝トーナメント進出へ望みをつなぐ可能性が残る次のイタリア戦へ向けては、「反省すべきところは反省して、よかったところは次の試合でも出せるようにした。通用している部分はたくさんあった。イタリアはアメリカやカナダとは違うスタイルなので、これまでとは違う試合になるが、勝つためにしっかり準備をしてたい」と語った。

 名倉選手はトライ場面について、チーム全体の動きがよく、「信頼しきって自分も前にでることができた」と話したが、試合全体では「チャンスの場面でトライを取り切れなかったことがすごく悔しい。今日の前半のプレーや雰囲気はすごくよかった。次は80分間、そのモメンタムを出し続けて必ず勝利したい」と語った。

 

アメリカ主将、チームを称賛

 アメリカ代表のRob Cainヘッドコーチは、「日本はよくボールを動かして勇敢で、ブレークダウンでは猛々しさもあって、彼女たちのプレースタイルや創造性はリスペクトしている。前半は非常にいいプレーをしたと思うが、こちらが与えていたチャンスを活かすことはできなかったし、私たちの選手も点差を付けられないように非常にハードに戦っていた。そこは私たちの選手たちがよくやった」と振り返った。

 アメリカ代表指揮官は、「この試合で勝利とボーナスポイントは必要だった。そこへ向けてこの1週間取り組んできたし、ハーフタイムにはやるべきことをやろうと伝えた。来週の試合でなにをすべきかわかっているが、先週のイタリア戦の試合序盤と今日の後半で、自分たちができるところは見せたと思う」と話した。

 アメリカ代表キャプテンでNO8 Kate Zackery選手は、選手たちが求められていたパフォーマンスを見せたとして「とても誇りに思う」とチームメイトを称賛した。

 「日本は前半素晴らしいプレーをして、それは予想通りだった。ただ、私たちは自分たちのシステムを信頼していた。前半は少し立ち位置がフラットだったので後半はもう少し深みを加えるようにして、ボールを持った時にスピードとスペースができるようにした」と話した。

さらに、Zackery選手は「みんな、ボーナスポイントのことは頭に入っていたし、後半のプレーが重要だとわかっていた。ハーフタイムには後半輝きを見せようと声を掛け合って、それができたことが大きい」と喜んだ。

 決勝トーナメント進出がかかるプール最終戦のカナダ戦については、アメリカ代表キャプテンは「前回6月に対戦してから少し時間が経っているし、両チームとも違っていると思う。でも相手がどこでも関係ない。私たちが欲しいのは勝利。それを求めている」と話した。

 なお、プールAではオーストラリアがスコットランドに14-12で接戦を制して初勝利を挙げ、スコットランドは2敗目を喫した。ニュージーランドとウェールズは16日に対戦する。

 また、プールCではイングランドがフランスに13-7で勝利して2戦2勝で勝ち点を9に伸ばしたが、フランスは初黒星で1勝1敗。プールもう1試合のフィジーと南アフリカの試合は両者初勝利をかけて16日に行われる。

 

 

女子日本代表 試合メンバー:

1南 早紀*(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 →18北野和子(MIE PEARLS)、63分

2谷口琴美(MIE PEARLS)

 →17永田虹歩(国際武道大学ラグビー部)、61分

3加藤幸子(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 →16小牧日菜多(日本体育大学ラグビー部女子)、72分

4佐藤優奈(東京山九フェニックス)

 →19玉井希絵(MIE PEARLS)、63分

5高野眞希(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 →20吉村乙華(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)、63分

6長田いろは(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

7細川恭子(MIE PEARLS)

 →23永井彩乃(YOKOHAMA TKM)、59分

8齊藤聖奈(MIE PEARLS)

9阿部 恵(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

 → 21津久井萌(横河武蔵野アルテミ・スターズ)、63分

10大塚朱紗(RKUグレーズ)

11今釘小町(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

12山本 実(MIE PEARLS)

13古田真菜(東京山九フェニックス)

14名倉ひなの(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

15松田凛日(日本体育大学ラグビー部女子)

 →22庵奥里愛(MIE PEARLS)、71分

注:* 印はキャプテン

 

アメリカ代表 試合メンバー:

1 Hope Rogers → 17 Catherine Benson、77分

2 Joanna Kitlinski → 16 Kathryn Treder、77分

3 Charli Jacoby → 18 Nick James、56分

4 Kristine Sommer

5 Evi Ashenbrucker → 19 Jenny Kronish、77分

6 Kathryn Johnson → 20 Elizabeth Cairns、59分

7 Rachel Johnson

8 Kate Zackary*

9 Olivia Ortiz → 21 Carly Waters、56分

10 Gabriella Cantorna → 22 Megan Foster、77分

11 Tess Feury

12 Alev Kelter

13 Eti Haungatau

14 Jennine Detiveaux

15 Meya Bizer → 23 Lotte Clapp、56分

注:* 印はキャプテン