2年連続5度目の出場で1994年大会以来となる8強入りを目指すサクラフィフティーンだが、初戦は世界ランキングで日本の13位に対して3位のカナダに苦戦。優勝候補の一角にあげられるワールドカップ常連の相手に1トライに抑えられた。

 試合開始早々にカナダが日本陣内深くに蹴り込んだボールをキックで返そうとしたところをチャージされ、こぼれ球をWTB Paige Farries選手に押さえられて開始2分で先制トライを許した。

 これに日本はすぐに反応。敵陣で得たペナルティから素早く仕掛けてラックを重ねてゴールに迫り、最後はLO高野眞希選手が押さえて5点を返した。FW陣のパワーを活かした攻撃でスコアをイーブンに戻した。

 ところがその後はスクラムで反則を取られる場面が続き、カナダにペナルティからラインアウト、そこからのモール攻撃という機会を与えるようになる。前半14分に均衡を破られたのもその形で、HO Emily Tuttosi選手がインゴールで押さえてリードを奪った。

 日本はダブルタックルで相手を止めようと食い下がったが、24分には守備の綻びを突かれてSH Brianna Miller選手に抜け出されてトライを許した。

その後もカナダは、日本のペナルティを利用してラインアウトからモールで押し込む形を徹底。29分にTuttosi 選手、35分にMiller選手が5点ずつを加えて、前半を27-5で折り返した。

 後半に入ってもカナダ優勢は変わらず、50分にTuttosi選手が自身3本目を決めてハットトリック。66分には交代出場したMikiela Nelson選手がこの日チーム7本目となるトライを決めた。

 日本は後半に入ってプレーを修正し、選手の入れ替えを活かして食い下がり、インターセプトなどで攻めに転じる場面も作ったが、相手のプレッシャーを受けて数少ないチャンスにパスが乱れるなどミスが目立ち、攻撃を継続できずに、後半は得点を奪うことができなかった。

 

試合中の修正を評価

 日本にとっては厳しいスタートとなったが、チームを率いるレスリー・マッケンジーヘッドコーチは前向きな姿勢を見せ、「全体的にはポジティブな要素が多い」と言う。

「この試合でやりたかったことは多くできたし、スクラムでの収穫は多い。守備で不必要な判断を見せた場面もあったが、ゲームマネジメントの点で、次の2戦を前に厳しい教訓を得る良い機会になった。全体としてコンタクトやボールを動かすところもよかったし、日本が持つ良さも少しは見せられたと思う」

 また、マッケンジーヘッドコーチは選手の対応力を評価している。

「私たちの選手の多くが初めてのワールドカップだということを考えると、選手たちの修正ぶりには本当に満足しているし、それが勢いをつけてくれた」と指摘。大会直前のニュージーランド戦とこの日のカナダ戦を経験したことを今後に活かせると期待する。

「これで世界2位と世界3位のチームと戦って、コンタクトや試合スピードなど自分たちでコントロールできる部分を見つけることができた。それを自分たちの試合に取り入れれることが必要」と話した。

 サクラフィフティーンHO南早紀キャプテンは、「初戦へ向けて準備したことを出せたのはよかったが、結果は自分たちが望んだものではなかった。勢いのある相手のFWをなんとか止めることができてはいたが、流れを変えることまではできなかった」と述べて、ラインアウトやモールでの判断の改善を次戦への課題に挙げた。

 この試合で日本のトライを決めた高野選手は、「敵陣に入ってマイボールを継続できれば、絶対に取り切れるという自信があった」と振り返り、試合中の修正に手ごたえを示し、第2戦からの巻き返しを口にしている。

「スクラムでは前半は押された場面があったが、修正して自分たちの武器である低さやスピードを出せた」と高野選手。「次戦以降は、自分たちの強みのディフェンスでもっと前に出て、相手にプレッシャーをかけて、アタックでマイボールを継続して自分たちのラグビーを表現したい」と話して前を向いた。

 

カナダ主将「良い入りができた」

 カナダ代表NO8でキャプテンのSophie De Goede選手は、「とても良い試合の入りができたと思うし、積極的に自信を持って前に出るプレーをしたいと思っていて、それができたと思う。力強いパフォーマンスを出せたと思うが、フィニッシュの部分やハンドリングエラーなど改善点は多い」とチームの初戦の出来に手ごたえを示しながら、次戦以降への修正点も指摘していた。

 日本については、「とてもディシプリンのあるチーム。自分たちのストラクチャーを維持して、コレクティブな強さがある。予想した通り、とても強い戦いを出してきた」と振り返った。

 カナダ代表のKevin Rouetヘッドコーチは、「日本はストラクチャーのしっかりしたチームでディフェンスも良く、特にモールでも抵抗してきた。攻守で立ちふさがってくることは分かっていたが、我々の方がフィジカル面とキックでも日本よりアドバンテージがあると思っていた。実際にキックは上手く活かせたと思うしフィジカルでも優位に立てたと思う」と振り返った。

 「勝ちたかった試合を勝てて、ボーナスポイントも狙っていた。チームのプレーには満足しているし、これは初戦。多くの選手にとっては初めてのワールドカップで緊張もあったが、自分たちはここからもっと改善していけると思っている」と話した。

 

プールBはカナダ首位、日本は4位

 日本戦の前に同会場で行われたプールBのもう一試合では、世界ランキング5位のイタリアが同6位のアメリカに22-10で勝利。前半を5-7で折り返すとWTB Aura Muzzo選手の2トライなどで逆転して、ボーナスポイントも獲得。好スタートを切った。

この結果、プールBは初戦を終えてカナダを首位に得失点差でイタリアが2位となり、アメリカ、日本という順位となった。

 日本の第2戦は10月15日に同じファンガレイでアメリカが相手だ。共に初勝利を目指しての対戦となり、カナダとイタリアは翌16日にオークランドのワイタケレで対戦する。

 また、ディフェンディングチャンピオンのニュージーランドは10月8日の開幕戦でオーストラリアに41-17で勝利。勝点5でプールA首位スタートとなった。もう一組の試合は9日に行われてウェールズがスコットランドに18-15で競り勝ち、勝点4で2位につけ、勝点1を得たスコットランドが3位、オーストラリアは4位となった。

 プールCは8日に2試合を行い、世界ランキング1位のイングランドが同21位のフィジーに84-19と大勝。南アフリカ(世界11位)に40-5の快勝を収めたフランス(世界4位)に得失点差で上回り、首位に立った。フランスは2位スタートで以下、南アフリカ、フィジーと続いている。

 ラグビーワールドカップ2021には12チームが出場。4チームずつ3グループに分かれてプールステージを戦い、各組上位2チームと3位に中で成績上位の2チームがノックアウトステージへへ進出する。

 

 

女子日本代表カナダ戦メンバー;

1南 早紀(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 →18ラベマイまこと(横河武蔵野アルテミ・スターズ)、47分

2永田虹歩(国際武道大学ラグビー部)

 →17鈴木実沙紀(東京山九フェニックス)、69分

3加藤幸子(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 →16小牧日菜多(日本体育大学ラグビー部女子)、64分

4佐藤優奈(東京山九フェニックス)

 →19玉井希絵(MIE PEARLS)、50分

5高野眞希(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 →20吉村乙華(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)、59分

6齊藤聖奈(MIE PEARLS)

7長田いろは(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

8永井彩乃(YOKOHAMA TKM)

 →23細川恭子(MIE PEARLS)、54分

9阿部 恵(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

 →21津久井萌(横河武蔵野アルテミ・スターズ)、64分

10大塚朱紗(RKUグレーズ)

11今釘小町(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

12中山潮音(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 →22山本 実(MIE PEARLS)、56分

13古田真菜(東京山九フェニックス、15)

14名倉ひなの(横河武蔵野アルテミ・スターズ、11)

15松田凛日(日本体育大学ラグビー部女子、6)

注:* 印はキャプテン