10月8日に始まるラグビーワールドカップ2021ニュージーランド大会は、2大会連続通算5度目の出場となる女子日本代表にとっては、2019年から築いてきたマッケンジー体制での集大成の機会となる。

 12チーム中11位で終わった前回2017年大会を含めて、これまであまり芳しい成績を残せなかった日本は、今大会へ向けて2019年1月に始動。元カナダ代表HOとして2度のワールドカップにも出場した指揮官の下で、多くの国内合宿や海外遠征を繰り返し、コロナ禍で大会開催が1年延期されたこともプラスに置き換えながら準備を重ねてきた。

 「準備してきたことを、やっと試合で出せる機会が来た。ワクワクした気持ちでいっぱい」とWTB名倉ひなの選手の表情は明るく、世界の舞台での挑戦に期待を示している。

 今回プールBに入った日本は10月9日の初戦で前回大会5位のカナダ代表、15日の第2戦で前回大会4位のアメリカ代表と、いずれも北島北部のファンガレイで対戦。23日のプール最終戦では欧州代表のイタリア代表とオークランドのワイタケレで対戦する。

世界ランキングで見るとカナダが3位、アメリカが6位、イタリアが5位で、いずれも13位の日本からみると上位に位置している強敵だ。

 カナダは2014年大会準優勝も経験しているワールドカップ常連国の1つで前回大会では5位。アメリカは第1回の1991年大会優勝に続いて、1994年と1998年は準優勝で前回2017年大会では4位に入った。イタリアは前回大会の順位決定戦でも対戦して日本に勝って9位になったが、今回は2019年欧州遠征での対戦(17-17)以来の顔合わせとなる。

 世界トップの12チームが集結する今大会で日本も目指す8強入りで決勝トーナメント進出ができるのは、各プール上位2位までか3位の中の上位2位まで。準々決勝以降は各チームが一戦必勝のノックアウト方式で頂点を競うことになる。

 

学ぶ力の強いチーム

日本は10月3日から現地で着々と最終調整を進めており、SO/WTB今釘小町選手は初のワールドカップを前に、「若いチームなので、自分を含めていつもよりは少し緊張が高いかなと思う。でも、いつものテストマッチと変わらずに練習できている」と言う。

 日本は大会前最後のテストマッチとなった9月24日のニュージーランド代表戦では、大会連覇を狙う相手に12-95と黒星。FL齊藤聖奈選手と後半途中出場のPR左高裕佳選手が1トライずつを返したものの、WTBポーシア・ウッドマン選手の7トライなど合計17トライを許す痛い敗戦だった。

 ニュージーランドへ発つ前の東京でのテストマッチではアイルランドに29-10と勝利していただけに、「相手の強さと速さに対応しきれなかった」(CTB古田真菜選手)というブラックファーンズ戦はチームに小さくない衝撃を与えた。

だが、RWCコーチングインターンとしてチームに帯同している元日本代表の中嶋亜弥コーチは、「このチームは学ぶ力が強い。全てのことから余すことなく学ぼうという姿勢がある」として、現在の日本代表チームには大敗もプラスに変える力があると指摘する。

名倉選手も世界トップチームとの対戦で「ワールドカップへ向けて良い覚悟と準備ができた」と語り、その後の練習では「自分たちの強みをどう出していくのか。練習の質を高めている」と、ニュージーランド戦の反省を活かして取り組んでいることを明かした。

 

繰り返した合宿

 基盤となっているのは、ここまでのチームの積み上げによる自信に他ならない。

 2019年1月に始動したマッケンジー体制で行った合宿は27回、海外遠征は今大会を含めて5回、活動日数は280日、その間に招集したメンバーは109人を数える。

セブンズ主流で女子15人制の定期的な主要大会がないという、代表チーム強化には簡単ではない日本国内の状況を、定期的な合宿と選手の考えや自主性を促す指導で補い、活動制限のあったコロナ禍にもコミュニケーションを取ってチームの連帯を維持するように取り組んだ。

さらに2021年8月からは、元スコットランド代表SHで2度のワールドカップ出場を経験しているルイース・ダルグリーシュ氏をアシスタントコーチに迎えてチーム強化を加速させてきた。

 マッケンジーヘッドコーチの下でのテストマッチの成績は、9月のニュージーランド代表戦まで14試合で5勝1分8敗。数字では黒星先行だが、2019年7月の遠征で2連敗(5-34、3-46)したオーストラリア代表に今年5月の遠征では12-10と競り勝ち、今年8月のアイルランド代表との2連戦でも第1戦の22-57黒星から第2戦では29-10と勝利するなど、結果も伴うようになっている。

 大会に臨むチームは全体的には若いチームだが、2017年大会も経験し代表キャップ数も30を超えるFL/HO/NO8齊藤聖奈選手とFL/HO鈴木実沙紀選手、前回大会でベストフィフティーンにも選出されたSH津久井萌選手、26キャップで主将を務めるPR南早紀選手をはじめ、海外リーグでプレーした選手も加わった。

PR加藤幸子選手はイングランドのエクセター・チーフス、SO/CTB山本実選手はウスター・ウォリアーズ、CTB鈴木彩香選手はワスプス、PRラベマイまこと選手と古田選手はオーストラリアのブランビーズでプレーを磨いた。また、セブンズ代表も経験したFB/CTB/WTB松田凛日選手ら台頭著しい若手も多い編成だ。

チームにはマッケンジーヘッドコーチが「自分たちがプレーしたいスタイルを実現できる選手」と胸を張るメンバーが揃った。世界の舞台でチーム最高のプレーを披露する。

連覇を目指すニュージーランド

 なお、日本以外のプールでは、連覇で通算6度目の優勝を狙う開催国のニュージーランド(世界ランキング2位)は、前回大会6位のオーストラリア(世界7位)、前回7位のウェールズ(世界9位)、プレーオフを経て出場権を勝ち獲ったスコットランド(世界10位)と同組のプールAで戦う。

前回大会準優勝で今大会2014年以来通算3度目の世界制覇を目指すイングランド(世界1位)は、前回大会を含めて過去6大会で3位に入り今回初優勝を目指すフランス(世界4位)、アフリカ代表の南アフリカ(世界11位)、オセアニア代表のフィジー(世界21位)と同じプールCで競う。

 10月8日から23日までのプールステージを経て、10月29、30日に準々決勝、11月5日に準決勝、決勝と3位決定戦は11月12日に行われる。