今秋のテストシリーズへ向けて9月5日から大分県別府市で代表候補合宿を行っている日本代表のメンバーだが、多くの関係者が集まった駐日フランス大使公邸での大会開幕1年前レセプションで、準備の残り時間を再認識して大会へのイメージを膨らませていた。

 ジョセフヘッドコーチ、FLリーチ、WTB松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)、PR稲垣啓太選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)らとともに9日のレセプションに出席した坂手キャプテンは、メンバーを代表して「合宿を始めて、ワールドカップで勝てるように準備を進めている」と現状を報告。

また、11月20日にトゥールーズで行われるフランス代表とのテストマッチにも触れて、「リベンジできるように頑張りたい」と、今夏2連敗の借りを返す意向を宣言した。

日本代表主将は、トゥールーズが日本代表の大会中のベースキャンプになることから、「そういうところで試合をできるのは大きい」と話し、フィールドの状態の確認など本大会を睨んで試合でのパフォーマンスや結果以外にも得るものは大きいという認識を示した。

 

選手層を厚く

 現在行われている合宿には、代表候補選手52人が参加。2019年大会を経験したメンバーや代表キャップ数の少ない若手が混在する顔ぶれで、このメンバーを中心にJAPAN XV(ジャパンフィフティーン)として10月1日、8日、14日にオーストラリアA代表と東京、福岡、大阪で試合を行う。

その後に移行するテストシリーズでは、10月29日にニュージーランド代表を東京の国立競技場で迎え、欧州遠征で11月12日にイングランド代表、20日にフランス代表と対戦することが決まっている。

 日本が初の8強入りを遂げた2019年大会から2023年大会へのステップアップのために、坂手選手は前回大会後に代表チームの選手層を厚くする必要があると感じていたと明かし、52人という大所帯で行っている現在の活動を歓迎している。

 「大会1年前に今回の6試合を大きなスコッドで戦えるのは、僕たちにとってすごく利点がある。この6試合を経て、来シーズンのリーグワンを戦った後に、またワールドカップへ向けて集まって戦える」と述べて、今回の活動がチームのベースになると示唆。「(今回のメンバーで)戦って練習していけば、2019年にはなかった選手層が生まれる。そこはすごく楽しみ」と語っている。

 坂手キャプテンは1年後に迫った本大会へ、「さらに選手層を厚くして、僕らのラグビーを全部出して、2019年を超えられるような成果を挙げたい」と意気込んでいる。

 選手個人としては、2019年大会に臨んだ当時と2023年大会を迎える現在の自分には、違いも覚えている。

「2019年は憧れというか選ばれることが目標だったので、当事者だったがどこかフワフワした、夢のような感覚だったところもあった。今回はチームをどうドライブするかを考えてやっている。ラグビーのフィジカルも理解度も2019年の頃に比べると大きく成長できていると思うので、ここからさらに成長したい」と話している。

 

世界的強豪との勝利へ

 2019年大会で主将を務めたリーチマイケル選手(東芝ブレイブルーパス東京)も、あと1年という準備期間に焦りはないようだ。

 「まだまだ先。まずオーストラリアAとの試合で課題が出てくると思うので、1つ1つケアしていく。(前回大会前にあった)サンウルブズがない分、テストマッチではないが同じ相手に3試合もできるのはありがたい。ワールドカップ前の準備としては最高」と語り、ピッチ内外での課題に取り組みたいと話した。

 ティア1に勝つために必要な要素を問われると、代表75キャップのリーチ選手は「日本代表のプレーは1つ1つを切り取れば、いいプレーがたくさんある。それを80分通してチームとしてどれだけ繋げられるかが大事。あとは、1つ1つのプレー選択をどれだけ正確にできるか。チームワーク、オン・ザ・フィールド、オフ・ザ・フィールドでどれだけ成果を出せるかだと思う」と語った。

 

来年はPNC参加も

 ジョセフヘッドコーチは、コロナ禍で活動できなかった期間が生じたことで2023年大会への準備状況には予定より遅れがあると認めているが、この10月-11月の6試合を予定。さらに指揮官は来年の大会前にパシフィック・ネーションズ・カップへの出場予定も明らかにして、「いいプログラムができて、いいスケジュールが組まれている」と、チームの地固めとなるマッチメークを歓迎した。

課題としている選手層の拡大についても、「まず、どの試合にも勝たなくてはならない。それを念頭に、試したいコンビネーションなどを見ていきたい。選手たちは自分でポジションを取りに行かないとならない」と述べて、選手間の競争とチームのレベルアップへ期待を示した。

 

地元の期待

 レセプションには、日本代表が大会中にベースキャンプ地を構えるトゥールーズのあるオクシタニー地域圏の関係者らが出席。トゥールーズでは日本代表が大会初戦のチリ代表戦(9月10日)と第3戦のサモア代表戦(9月28日)、隣接するプロヴァンス・アルプ・コートジャジュール地域圏のニースで第2戦のイングランド代表戦を行うが、日本のファンや観光客へ向けて地域の特長や大会中の特別企画などをアピールした。

 現役時代にフランス代表戦で初キャップを獲得したという日本ラグビー協会の土田雅人会長は、挨拶のスピーチで「2019年ラグビーワールドカップ日本大会が大成功で、2023年ラグビーワールドカップフランス大会へ、バトンタッチできることを本当にうれしく思う。日本代表はベスト4以上を目指してワンチームで戦っている。ぜひ決勝でフランス代表と戦いたい」などと述べた。

 ラグビーワールドカップ2023フランス大会は来年9月8日に開幕し、北はリールから南はマルセイユまでの9都市で開催される。全20チームが5チームずつ4グループに分かれて10月8日までプールステージを戦い、各組上位2チームがノックアウトステージへ進出。準々決勝は10月14-15日、準決勝は10月20-21日、3位決定戦は10月27日、決勝は10月28日にパリ近郊のサン・ドニで行われる。

(Photo credit: JRFU)