ラグビーワールドカップセブンズ大会に4度目の出場となる女子セブンズ日本代表は、今回のケープタウンでの大会で初の8強入りを目指している。

 来季HSBCワールドシリーズへの復帰を決めた8月中旬のワールドラグビー・チャレンジャーシリーズ2022では、大会中にプレーを修正する対応力も発揮して、アグレッシブな守備とともにチームの進化を感じさせるパフォーマンスを披露した。

結果とともに、平野優芽選手(ながとブルーエンジェルス)は「練習でやっていることが試合に出る」とこれまでの積み上げを実感。期待の若手の一人である須田倫代選手(追手門学院VENUS)も、「自分は国際経験が少ない分、1つ1つの試合を楽しむことを心がけた。それができたのでいいプレーができた」と振り返った。

チャレンジャーシリーズで力量を発揮した19歳の須田選手は、4年に一度の世界最高峰の戦いを前に「ワールドカップでは格上のチームが相手。自分のプレーがどこまで通用するのか、楽しんでプレーしてどんどんチャレンジしたい」と目を輝かせている。

チーム全体で守備の改善に手ごたえを覚えている。なかでも、身長156センチと小柄な須田選手は6月のフランス遠征でタックルの課題を認識。そこから克服に取り組み、チャレンジャーシリーズでは得点だけでなく鋭いタックルでチームに貢献した。今では「相手の芯に入ることができれば、体格の大きさに関係なく倒せる」とコツをつかみ、自信も得ている。

 

フィジーは東京オリンピック銅メダリスト

 日本が今大会の初戦で対戦するフィジーは、昨年7月の東京オリンピックで銅メダルを獲得。今年7月のコモンウェルスゲームズでは決勝でオーストラリアに敗れて準優勝で終わったが、今大会のスコッドにはキャプテンを務めるRusila Nagasaus選手や Ana Naimasia選手など、その2つの大会を経験した選手たちが帯同リザーブのLavenia Tinai選手を含めて9人揃っている。

フィジーは今年5月に終わった女子HSBCワールドラグビーセブンズシリーズ2022ではオーストラリア、フランスに次いで3位に入っており、今季好調を維持しているチームの一つだ。そのフィジーに勝たなければ、日本の8強入りは見えてこない。

 日本のフィジーとの過去の対戦では、前回2018年のサンフランシスコ大会ではチャレンジトロフィー準決勝で対戦。日本が15-14で競り勝ち、チャレンジトロフィー準優勝につなげた。2019年のHSBCワールドラグビーセブンズシリーズのコロラド大会でも、チャレンジトーメント1回戦で顏を合わせて日本が勝利したが、その他5回の対戦では敗れている。

 

初戦の入りがポイントに

日本チームは国内での直前合宿と長時間のフライトを経て9月2日にケープタウンに入り、翌日から現地のフィールドで最終調整を始めた。

今大会に臨む16チームは、2018年大会と同様、9日の初戦の結果に応じて勝者はチャンピオンシップトーナメントに進み、敗者はチャレンジトーナメントへまわる。日本も初戦の結果次第で、大会2日目にフランス-南アフリカ戦の勝者または敗者と顔を合わせる。厳しい一発勝負での連戦が待ち受けている。

 サクラセブンズを率いる鈴木貴士ヘッドコーチは、「チャレンジャーシリーズは大会中に徐々にチームとして上がってきたが、今大会は最初の一発目で決まる。どれだけいい入りができるか」と話しているが、「アタックもディフェンスも7人が常に動いて体現できる」とチャレンジャーシリーズを経てチームの成長を感じている。

コーチも兼任する中村知春選手(ナナイロプリズム福岡)は、初戦のフィジー戦へ勝利には「勢いと我慢強さが鍵になる」と語る。

代表キャップ52を数える34歳にとって、今回は自身3度目のワールドカップ。プール3連敗後にボウルトーナメント初戦で敗退した2013年大会、現在の方式に変わった2018年大会ではチャレンジトーナメント準優勝。昨年の東京オリンピックでも最下位の12位に終わる苦い経験をしてきた。

多くの経験を経て、「こうなりそうだなという予測できるようになった」という中村選手は、「オリンピックを経験したからこそ、この舞台がある。若い選手たちに自分の経験を伝えて戦いたい」と言う。

キャプテンの平野選手は、「(ワールドカップでは)チャレンジャーシリーズよりもフィジカルやスピードなど、全ての面でレベルが上がった相手と戦う。最後まで自信を持って戦えるように準備することが勝利につながる」と語る。

また、負傷による長期離脱から代表復帰した大竹風美子選手(東京山九フェニックス)は、「チームには思い切りのいいプレーをする選手が増えた」と話し、新たに加わった選手たちがもたらす変化を歓迎している。

ナイジェリア人を父に持ち、スピードのある走りと身体能力の高さが特徴の大竹選手は、今回23歳で迎える自身2度目の7人制ワールドカップを前に、試合中の苦しい時間帯にチームを鼓舞したいと考えを巡らせる。

「自分からもっとプラスイオンを出して、みんなに働きかけたい」と、プレーだけでなくチームの雰囲気づくりでも役に立ちたいと話し、意気込んでいる。

 南米チリでのチャレンジャーシリーズ参戦から1ヵ月弱で迎えるアフリカでのワールドカップへ、ステップアップした女子セブンズ日本代表がチーム一丸となって目標達成へ挑む。

 

 

女子セブンズ日本代表 大会登録メンバー

1中村知春(ナナイロプリズム福岡、52)

2梶木真凜(自衛隊体育学校、4)

3三枝千晃(北海道バーバリアンズディアナ、2)

4大竹風美子(東京山九フェニックス、14)

5水谷咲良(東京山九フェニックス、2)

6平野優芽*(ながとブルーエンジェルス、26)

7大黒田裕芽(東京山九フェニックス、34)

8大谷芽生(立正大学ラグビー部、4)

9小出深冬(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA、22)

10永田花菜(日本体育大学ラグビー部女子、12)

11原わか花(東京山九フェニックス、10)

12須田倫代(追手門学院VENUS、2)

注:* 印はキャプテン 所属のあとの数字はキャップ数