静岡で22-57と大敗した試合から一週間で、女子日本代表が見違えるようなパフォーマンスを披露し、10月に開幕するラグビーワールドカップへ弾みをつける勝利を手にした。

 ショッキングな負け方に試合後は悔し涙を滲ませていたキャプテンの南早紀選手は、「自分たちがどうすべきか、自分たちの強みがどこかに立ち返って修正できた」と語り、名倉選手も「この一週間、プレッシャーに打ち勝つことでメンタルを強化できた」と振り返った。

そうして臨んだ第2戦で、世界ランキング13位の日本代表は低いタックルを軸にした守備で相手の出足を止め、キックをうまく織り交ぜたバリエーション溢れる攻撃で反撃に出た。

 先制したのはアイルランド。前半3分でWTBナターシャ・ビーハン選手にサイドを突かれたが、日本はそこから積極的な守備で相手のペナルティを誘い、16分にゴール前のラックからのパスを受けたSO大塚朱紗選手が相手守備のギャップを突いて同点のトライをマーク。その後も攻勢を維持して34分にはゴール前のスクラムを起点に大塚選手からパスを受けたFB松田凛日選手がトライを決めて、大塚選手のコンバージョンも成功して12-5とした。

 日本は後半も勢いのあるプレーでバックスも躍動して得点につなげた。後半9分にはゴール前のラックに相手を引き付けて、右外へ展開して名倉選手がインゴールに飛び込み、その6分後には中盤で相手ボールをスチールして松田選手へ渡すと、俊足FBが左サイドで相手3人をかわして5点を加え、日本が22-5とリードを広げた。

 アイルランドは後半19分にラインアウトからモールで攻め、交代出場したPRケイティ・オドワイアー選手が押さえて5点を返したが、日本は後半25分に交代出場したPR加藤幸子選手がラックから持ち出してトライ。大塚選手のコンバージョンで2点を加えて29-10で勝利。サクラフィフティーンはニュージーランド本大会前最後の国内での代表戦を笑顔で終えた。

 日本代表の南キャプテンは、「先週は自分たちで規律を乱したので、自分たちでコントロールできることをコントロールしようとした。一人ひとりが持てるものを100%出し切ったのがよかった」と話した。

 負傷から復帰して昨年11月以来の試合で勝利に貢献した加藤選手は、「1週間で修正できることが分かったし、大愛も見つかった。ワールドカップへ、ここから修正していきたい」と手ごたえを覚えていた。

 

アイルランド、学びの多い遠征に

 一方、アイルランド代表FLニコラ・フライデー主将は先週との違いについて、「日本は先週よりブレークダウンにターゲットを絞ってやってきて、フィジカルの強みを出してきた。オープンでの守備も素晴らしく、先週は自分たちが簡単に見つけることができたスペースを見つけることができなかった。自分たちは試合中に修正できるようにしなければならないし、1戦目から2戦目へ安定したプレーをできるようにしなければならない」と語った。

 日本遠征を1勝1敗で終えて、チームを率いるグレッグ・マクウィリアムズ監督は、「残念な結果で先週と全く違う試合になって、2戦目はうまくいかないことが多かった。だが9人の初キャップ選手を起用することもできたし、今回のツアーで学ぶことは多かった。ワールドカップには出られないが、この遠征でチームの基盤固めをすることができた」と振り返った。

第2戦で勝利を得た日本代表については、「日本は今度のラグビーワールドカップへ向けて準備している。その点で大きな絵を持って臨んでいたと思うが、2戦目の戦い方は素晴らしかった。この先へ自信になる試合になったのではないか」と称賛した。

 

初の女子日本代表キャップ授与式も開催

 この日の試合では、試合前とハーフタイムに歴代の女子日本代表選手(15人制197人、7人制112人)への代表キャップ授与式も開催。そのうち100人を超える女子日本代表経験者がスタンドから後輩の試合を見守り、声援を送った。

 日本で女子ラグビーの草分けとして第1回ラグビーワールドカップ出場で女子代表編成に道筋をつけた岸田則子さんも授与式に出席。現在も仲間とフィールドでボールを追うという先達は、女子代表チームの現状に「選手層が厚くなり、海外選手に当たり負けしていない」と成長を確認し、10月に控えるワールドカップへ「ベスト8を超えられるかが一つの壁。質の良い選手と練習が揃えば上位に行けるのでは」と期待を寄せていた。

 歴代の女子日本代表OGを前に手にした勝利に、サクラフィフティーンの南キャプテンは「女子日本代表に新しい歴史を刻むことができた」と安堵と充実感の漂う笑みを見せていた。

 

 

女子日本代表 アイルランド代表第2戦試合メンバー

1南 早紀*(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 →16加藤幸子(横河武蔵野アルテミ・スターズ)、後半10分

2永田虹歩(国際武道大学女子ラグビー部)

 →17谷口琴美(MIE PEARLS)、後半20分

3ラベマイまこと(横河武蔵野アルテミ・スター)

 →18左高裕佳(弘前サクラオーバルズ)、後半10分

4高野眞希(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 →19玉井希絵(MIE PEARLS)、後半10分

5佐藤優奈(東京山九フェニックス)

 →20吉村乙華(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)、後半24分

6齊藤聖奈(MIE PEARLS)

7長田いろは(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

8永井彩乃(YOKOHAMA TKM)

 →23細川恭子(MIE PEARLS)、後半15分

9阿部恵(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

 →21津久井 萌(横河武蔵野アルテミ・スターズ)、後半24分

10大塚朱紗(RKUグレース)

11今釘小町(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA/立正大学)

12中山潮音(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

 →22山本 実(MIE PEARLS)、後半37分

13古田真菜(東京山九フェニックス)

14名倉ひなの(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

15松田凛日(日本体育大学ラグビー部女子)

注:* はキャプテン

 

女子アイルランド15人制代表 試合登録メンバー

1ローラ・フィーリー (Blackrock College RFC,)

 →18ケイティ・オドワイアー (Railway Union RFC)、後半6分

2ニーヴ・ジョーンズ (Gloucester-Hartpury)

 →16エマ・ホーバン (Blackrock College RFC)、後半29分

3リンダ・ジョガン (ASM Romagnat Rugby)

 →17クロエ・ピアース (UL Bohemian RFC)、後半29分

4ハンナ・オコナー (Blackrock College RFC)

 →19タリン・シュッツラー (Saracens)、後半34分

5ニコラ・フライデー* (Exeter Chiefs)

6ジョー・ブラウン(Worcester Warriors)

 →20 ジェス・キーティング (Life University)、後半34分

7エデル・マクマホン (Wasps)

8グレース・ムーア (Saracens)

9エルサ・ヒューズ (Railway Union RFC)

 →21モリー・スカッフィルマッケイブ (Railway Union RFC)、後半16分

10ダナ・オブライエン  (Tullow RFC)

11イーファ・ドイル  (Railway Union RFC)

12エンヤ・ブリーン (TBC)

13イーファ・ダルトン (Tullamore RFC)

 →22リー・ターピー (Tullamore RFC)、後半36分

14ナターシャ・ビーハン (Blackrock College RFC)

 →23エマ・ティリー (MU Barhhall RFC)、後半34分

15メイブ・ディーリー (Blackrock College RFC)

注:* 印はキャプテン

Photo credit: INPHO