勝てる試合を落とした。試合後のジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチや選手たちの無念そうな表情に、その悔しさが表れていた。

 「とても残念だ。勝利できる良い位置につけていたのに」と日本代表指揮官はため息交じりに語り、坂手淳史キャプテンも「勝つべき試合だった」と悔しがった。

 国立競技場に国内テストマッチ最多記録となる57,011人の観客が駆け付けた日本代表とフランス代表とのテストシリーズ第2戦で、日本は2日の第1戦からプレーを修正。狙った形でFB山中亮平選手が2トライを奪うなど、世界ランク10位の日本に対して3位のフランスに後半30分までリードを奪う展開を見せた。

 先制はフランス。前半9分にWTBマティス・ルベル選手が左サイドを抜けて5点を決め、SHマキシム・ルク選手がコンバージョンを決めて7-0とした。

キックを多用して攻撃の機会をうかがっていた日本は、12分と40分にいずれもカウンターから山中選手がトライを奪った。

 12分のトライは、自陣からパスをつないでサイドへ展開。CTBディラン・ライリー選手が巧みなステップで相手をかわして大外へつなぐと、パスを受けたWTBゲラード・ファンデンヒーファー選手が抜け出し、ゴール目前で山中選手へ渡すと34歳FBがインゴールに持ち込んだ。前半終了間際の2本目のトライも、自陣からサイドで素早く繋いで、最後はFLリーチマイケル選手が運んだボールを山中選手が受けて決めた。

 2戦連続先発でこの試合が代表3戦目のSO李承信選手は、1本目のコンバージョンは外したものの、19分のPGと2本目のコンバージョンを成功させた。

 しかし、前半を15-7で折り返した日本だったが、後半は汗でボールが滑る影響もあったのかノックオンなどのハンドリングエラーや反則が増えて、疲れが見えて動きが落ちていた相手に付け入る機会を与えた。

フランスはPG2本で加点して13-15と点差を縮めると、後半31分に決定機を迎える。敵陣中央でのスクラムを起点に、途中出場のバティスト・クイユー選手が日本選手の空けたスペースを突いて走り抜けてインゴールで押さえた。SOマチュー・ジャリベール選手がコンバージョンを成功させて20-15と逆転した。

 日本は後半35分に敵陣深い位置でのラインアウトを起点に、リザーブ出場のテビタ・タタフ選手がボールを受けて突進するとインゴールに倒れ込み、スタジアムは大きな歓声に包まれた。だが、TMOでノックオンがあったとして幻のトライに終わった。

日本の通算成績は1分け11敗で、フランスからの初勝利も、新しくなった国立競技場での勝利もお預けとなった。

 

若手の台頭と負けから学ぶ

 日本代表FLリーチマイケル選手は、「ティア1相手に惜しいところまでいって負けたのはすごく悔しい。勝てるところもあったし、トライを獲るところまで行った。チームとしては自信を持って帰れる」と話したが、一方で「『いい試合』で終わらせる悪い癖は付けないように」と釘を刺し、イングランド代表やフランス代表との再戦が予定されている11月の遠征へ向けて準備をすべきだと話した。

後半途中から出場したHO堀江翔太選手は、「噛み合わないところがたくさんあったし、ミスも多かった」と振り返ったが、2019年ワールドカップ以来の復帰となった68キャップを保持するベテランは、ミス以上に重要な要素をチームが得ていると指摘する。

「今のチームのメンバーは、自分たちのラグビーを理解できている。単純なミスは試合を重ねたり個人で修正できる。いつも出ているメンバーではないメンバーが出て、いい試合ができているというのはいままでなかったと思う。若い選手がたくさん活躍したツアーだったので、すごく収穫はあるのでは」と、ポジティブな受け止めを示した。

 ジョセフヘッドコーチも、「負けに意味があるとすれば、自分たちのゲームが十分ではなかったということ。それを選手たちはしっかり理解しなくてはならない。このようなタフな接戦では、しっかり仕留めなければならないことを学んだと思う」と話した。

今夏のテストシリーズで若手や代表経験の浅い選手を多く起用してチームの選手層強化を目指した点については、「若い選手をしっかり使うことができた。若手と経験のある選手がいるバランスのとれたチームができていると思う」と述べた。

 この日の試合にもSH齋藤直人選手とSO李選手の若手ペアを起用した。齊藤選手は1年前に代表デビューしてこの日が8キャップ目の24歳で、李選手は6月25日のウルグアイ代表戦から3戦連続出場でこの日が3キャップ目の21歳。日本代表指揮官は「ここからステップアップしていける」と若手への期待を口にした。

 齊藤選手は、反省点もあるとしながらも「ゲームコントロールのところ、プランを遂行するところは割とできたかと思う」と振り返り、世界トップランカーとの対戦に「チームとしてのプランを遂行すれば、絶対に世界とも戦えると本当にそう思う」と手ごたえを口にした。

 

フランス指揮官、選手の反応に満足げ

 「非常に厳しい試合だった」と振り返ったフランス代表のファビアン・ガルティエ監督は、今季初めて相手にリードを許してハーフタイムを迎えたことに言及し、若手主体の選手たちが「その状況にどう反応するかを見ていた」と明かし、「良いリアクションを見せてくれた。後半は必要な時にポジティブなプレーができた。途中から入った選手たちがチームにエネルギーを与えてくれた」と語った。

 フランス代表主将のFLシャルル・オリボン選手は、「非常に暑くて、日本のボールポゼッションも非常によかったので苦戦した。自分たちで簡単にボールを手放していたので、ハーフタイムにシンプルでダイレクトな指示をしてチームを引き締めた」と話した。

 今回の日本とのシリーズで代表デビューし、この日が2戦目となったNO8ヨアン・タンガ選手は、「細かいところでミスが多く、ターンオーバーが多くなって厳しい試合になった。日本のような強いチームに対してミスは許されない」と反省の弁。11月20日にトゥールーズで予定されている日本との再戦には、「招集されたら今回のできなかったことを修正して臨みたい」と語った。

 今季シックスネーションズ全勝優勝を遂げたフランスは、日本とのテストシリーズを2連勝で終えてテストマッチ連勝記録を10に伸ばした。オリボン主将は、「連勝してツアーを終えることができてよかった」と安堵の表情を見せた。

 

 

 

日本代表フランス第2戦試合メンバー

1稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

 →17森川由起乙(東京サントリーサンゴリアス)、後半31分

2坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

→16堀江翔太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、後半18分

3ヴァル アサエリ愛(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

 →18木津悠輔(トヨタヴェルブリッツ)、後半21分

4ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)

 →19辻 雄康(東京サントリーサンゴリアス)、後半27分

5サナイラ・ワクァ(花園近鉄ライナーズ)

 →20テビタ・タタフ(東京サントリーサンゴリアス)、後半17分

6リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)

7ベン・ガンター(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

8ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

9齋藤直人(東京サントリーサンゴリアス)

 →21茂野海人(トヨタヴェルブリッツ)、後半25分

10李 承信(コベルコ神戸スティーラーズ)

 →22田村 優(横浜キヤノンイーグルス)、後半25分

11シオサイア・フィフィタ(花園近鉄ライナーズ)

12中野将伍(東京サントリーサンゴリアス)

 →23シェーン・ゲイツ(NTTシャイニングアークス東京ベイ浦安)、後半18分

13ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

14ゲラード・ファンデンヒーファー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

15山中亮平(コベルコ神戸スティーラーズ)

注:* はキャプテン

 

フランス代表第2戦試合メンバー

1ジャン・バティスト・グロ(RC Toulon)

 →17ダニー・プリソ (Stade Rochelais)、後半6分

2ペアト・マウバカ(Stade Toulousain)

 →16ピエール・ブルガリ (Stade Rochelais)、後半3分

3デンバ・バンバ (Lou Rugby)

 →18シピリ・ファラテア (ASM Clermont Auvergne)、後半6分

4ティボー・フラメント(Stade Toulousain、8)

5トマ・ジョルムス (Union Bordeaux Begles)

 →19トマ・ラヴォー (Stade Rochelais)、後半3分

6ディラン・クレタン (Lou Rugby)

 →20イブライム・ディアロ (Racing 92)、後半3分

7シャルル・オリボン* (RC Toulon)

8ヨアン・タンガ (Racing 92)

9マキシム・ルク (Union Bordeaux Begles)

 →22バティスト・クイユー (Lou Rugby)、後半10分

10マチュー・ジャリベール (Union Bordeaux Begles)

11マティス・ルベル (Stade Toulousain)

12ヨラム・モエファナ (Union Bordeaux Begles)

13ヴィリミ・ヴァカタワ (Racing 92)

14ダミアン・ペノー (ASM Clemont Auvergne)

 →21セコウ・マカルー (Stade Francais Paris)、後半24分

15マックス・スプリング (USA Perpignan)

リザーブ:

23アントワーヌ・ハストワ (Section Paloise) DNP

注: * はキャプテン