女子日本代表が過去3連敗だったオーストラリア代表に初白星を挙げて、フィジー代表、オーストラリア・バーバリアンズに続く勝利で今遠征3連勝をマークした。
ゴールドコーストのボンド大学のグラウンドに多くの観客が詰めかけた中、日本は立ち上がりからハードなディフェンスを披露。激しいタックルで相手の出足を止め、キックを効果的に使って積極的に攻めた。
ワールドカップへ向けてチーム強化中のオーストラリアも、5月6日のフィジー代表戦に36-19と勝ち、日本からの勝利で連勝を期して激しく戦い、WTBマハリア・マーフィー選手が何度かサイドでの突破を試みるが、日本は激しいタックルで抜かせない。
接戦となった前半は互いに譲らず、0-0でハーフタイム。試合が動いたのは後半に入って間もなくだった。
ブレークを挟んで後半開始から積極的に攻めを仕掛けた日本は、後半9分、相手のパスが乱れをついてSO大塚朱紗選手がキックで前方にボールを送りチェイス。これを自ら拾ってトライを決めると、コンバージョンも成功させて7-0と均衡を破った。
その6分後、オーストラリアにラインアウトからモールで持ち込まれてHOアシュリー・マースターズ選手が押さえて5点を返されたが、日本はその直後に反撃。相手のペナルティで得たラインアウトからフェーズを重ねて攻め続ける。相手ゴール前で再びペナルティを得ると素早い攻撃を展開し、最後はパスを受けたFL細川恭子選手がトライを奪い、日本が12-5とリードを広げた。
オーストラリアもラインアウトからモールで攻め、後半25分に後半途中出場のアディアナ・タラカイ選手のトライで10-12と2点差に迫る。その後も日本を自陣に押し込みプレッシャーをかけ、試合終了直前に得たペナルティでPGを選択。これをFBロリ・クラーマー選手が狙ったが決めることはできず、最後まで粘り強くハードに守備で競り合った日本が勝利を手にした。
日本は今遠征中にレスリー・マッケンジーヘッドコーチを含めて新型コロナウィルス陽性者が多く出て、この試合もキックオフ48時間を切って試合登録メンバーを変更。4人を登録外から起用して10人のポジションを入れ替えるなど対応に追われていた。しかし、そんな緊急事態も感じさせない試合を世界ランキング5位(日本は12位)を相手に披露。2019年のマッケンジー体制での初遠征では大敗を喫した対戦から2年、サクラフィフティーンは着実な進歩を示した。
南選手、「スタンダードが上がった」
ルイース・ダルグリーシュ女子日本代表アシスタントコーチは、「疲れが出てくる時間帯でも、ディフェンスをやり続けるマインドが十分に発揮され、最後まで維持できたことが大きい。ハードワーク、努力、忍耐、リーダーシップ、全てが形になった」と振り返った。
南早紀キャプテンは試合後、「めちゃくちゃ嬉しい」と笑顔を見せ、「いままでやってきたことをグラウンドで出すことができた」と話し、ディフェンス場面では「我慢、我慢。フェーズを重ねさせれば相手がミスをする」とチームメイトに声をかけ続けていたと明かした。
約5カ月後のニュージーランドでワールドカップへ向けて、サクラフィフティーン主将はスクラムには課題が見つかったとしながらも、「勝って課題が出たのはいいこと。(昨年11月の)欧州遠征では3連敗だったが、ここで3連勝して自分たちのスタンダードは上がったと思う。ベースはできている。ピラミッド状に高く積み上げていきたい」と手ごたえを口にした。
大塚選手は「トライはハードワークしてくれるチームメイトのおかげ。チームとしてどんな状況でもワンチームで戦えたことが今日の勝利、遠征3戦全勝につながった」と振り返り、「ワールドカップでの目標達成のために、まだまだ努力して成長し続けたい」と話した。
歴史的な一勝に南キャプテンは、「勝つことでみんなに知ってもらえる。この勝利はすごく意味のあることだと思う」と語った。
オーストラリア代表のシャノン・バリー主将は、「タフなテストマッチだった。ターンオーバーの度に相手に持って行かれて、ブレークダウンで苦戦した。今回の準備には10日もなかった。本大会は今年の終わりだし、良い学びの機会になった」と話した。
女子日本代表は10月にニュージーランドで開幕するラグビーワールドカップで、カナダ、アメリカ、イタリアとプールBで、オーストラリアはプールAでニュージーランド、ウェールズ、スコットランドと対戦する。
女子日本代表、オーストラリア戦メンバー:
1南 早紀*(横河武蔵野アルテミスターズ)
2公家明日香(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)
3左高裕佳(弘前サクラオーバルズ)
→18ラベマイまこと(ブランビーズ/横河武蔵野アルテミスターズ)
4玉井希絵(MIE PEARLS)
5吉村乙華(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)
→17鈴木実沙紀(東京山九フェニックス)
6長田いろは(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)
7細川恭子(MIE PEARLS)
→20西村澪(日本体育大学ラグビー部女子)
8マテイトンガ・ボギドゥラウマイナダヴェ(MIE PEARLS)
→19高野眞希(横河武蔵野アルテミスターズ)
9津久井 萌(横河武蔵野アルテミスターズ)
→21安尾琴乃(BRAVE LOUVE)
10大塚朱紗(RKUグレース)
11今釘小町(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)
12古田真菜(ブランビーズ/東京山九フェニックス)
13松田凛日(日本体育大学ラグビー部女子)
→23伊藤優希(MIE PEARLS)
14名倉ひなの(横河武蔵野アルテミスターズ)
15庵奥里愛(MIE PEARLS)
リザーブ:
16小牧日菜多(日本体育大学ラグビー部女子)
22畑田桜子(日本体育大学ラグビー部女子)