リーグワン上位4チームによるプレーオフ準決勝での対戦がすでに決まっているワイルドナイツとスピアーズが最終節5月7日に埼玉の熊谷ラグビー場で対戦し、粘るスピアーズをワイルドナイツが終盤の2トライで突き放した。

 ワイルドナイツはスピアーズとの開幕戦を含めてシーズン序盤の2試合を新型コロナウィルス感染症の影響で不戦敗となりながらも、3節からリーグワンの舞台に立つと、その後は連戦連勝で4月23日には12連勝でリーグ上位4チームによるプレーオフ進出を決めた。

 スピアーズもHOマルコム・マークス選手や今季途中加入のHOジャバ・ブレクバゼ選手、SOバーナード・フォーリー選手らを負傷で起用できない時期もありながら、粘り強いプレーで勝点を積み重ね、第14節には4位以内を確定させてPO出場権を獲得。その後も勝星を加えて2位で最終節を迎えていた。

今季ホーム最終戦となったこの日のスピアーズ戦でも、ワイルドナイツは選手層の厚さと守備力、決定力を披露。開始早々にSO松田力也選手の負傷交代を余儀なくされたが、代わって入ったSO山沢拓也選手が先制を含めてPG3本とコンバージョン3本を成功させ、トライを演出するなど、プレーヤー・オブ・ザ・マッチの活躍を見せた。

 ハードに競り合うスピアーズの抵抗を受けて拮抗した展開が続き、埼玉は前半終盤にラインアウトからFL大西樹選手がラインを越えて8-0としたが、前半終了直前にスピアーズもラインアウトを起点にモールで押し込み、HO杉本博昭選手が押さえて5点を返し、さらにFBゲラード・ファンデンヒーファー選手がコンバージョンを決めて1点差で折り返した。

 後半、ワイルドナイツはPG2本で加点して14-7とリードを広げたが、スピアーズも後半27分にラックから前線に送ったハイパントでWTB根塚洸雅選手がトライを奪い、コンバージョンも加えて14-14と追いついた。

 しかし、埼玉はその直後から底力を発揮。最後の10分でFB野口竜司選手、NO8ジャック・コーネルセン選手、WTB竹山晃暉選手が3連続トライを決めて突き放し、14戦全勝で勝点を61としてスピアーズを抜いて2位に入った。スピアーズは12勝4敗の勝点58で3位。両者は5月22日の秩父宮でのプレーオフ準決勝で再び顔を合わせる。

 スピアーズのフラン・ルディケヘッドコーチは「昨季に比べても、選手の遂行力やボールを動かすところ、キックも良くなっているが、プレーオフで勝つには精度が重要。得点を獲るところでしっかり獲る。そういうところを修正したい」と話し、主将のCTB立川理道選手も、「最後の10分で相手に獲られた。それを受け止めて次へ準備をしていきたい」と話していた。

 一方、ワイルドナイツの坂手淳史選手は、14連勝でのプレーオフ進出に「結果には満足しているが、内容は改善すべきものがたくさんある。ここからが本番。一試合一試合うまく成長して、いい感じで伸びてきている。ここからギアを上げてやっていきたい」と話し、次を見据えていた。

 

1位はサンゴリアス、ブレイブルーパスは逆転勝利

 すでにプレーオフ進出を決めていた東京サントリーサンゴリアスは、7日に予定されていた最終節のトヨタヴェルブリッツ戦が新型コロナウィルスの陽性者が出たために中止となり、不戦勝で勝点5を加えて14勝2敗の勝点66で1位が確定した。

これにより、5位につけていたヴェルブリッツの不戦敗が決まり、東芝ブレイブルーパス東京が4位でプレーオフ進出が決定した。ブレイブルーパスは5月21日に花園でのプレーオフ準決勝でサンゴリアスと対戦する。

 ブレイブルーパスは8日の最終節で静岡ブルーレヴズとアウェイで対戦。互いに得点を重ねながら後半開始早々にはブレイブルーパスが19-14とリードを奪っていたが、静岡は後半7分にPGを決めると、後半16分に相手にイエローカードが出た数的優位を活かしてCTBヴィリアミ・タヒトゥア選手がその直後にトライ。さらに途中出場の田上稔選手も5点を加えて29-19と逆転した。

 しかしブレイブルーパスは試合終盤、脅威の追い上げを披露。LOジェイコブ・ピアス選手がトライを決めて、SO松永拓朗選手のコンバージョンも決まって26-29とすると、その後も猛攻。静岡NO8クワッガ・スミス選手が反則の繰り返しで一時退場となると、ブレイブルーパスが攻め続け、最後に交代出場のジョニー・ファアウリ選手がラインを越えて逆転に成功。松永選手のコンバージョンも決まって33-29で勝利を手にし、6連勝でレギュラーシーズンを終えた。静岡は11敗目で最終戦を飾れず8位となった。

 このほか、プレーオフ進出争いに絡んだ横浜キヤノンイーグルスは、NECグリーンロケッツ東葛に26-14で勝利して10勝6敗勝点45の6位で終了。5位のヴェルブリッツ(10勝6敗勝点46)には勝点1及ばず。優勝争いに絡むと見られていたコベルコ神戸スティーラーズは7位で、最終節でシャイニングアークス東京ベイ浦安を74-34で勝利したが7勝9敗勝点36だった。

 

大阪、コロナ禍で最終節も試合中止に

 最終節はコロナ禍の影響を再び受ける形となり、7日に予定されていたブラックラムズ東京とNTTドコモレッドハリケーンズ大阪の対戦が、大阪に新型コロナ陽性者が出た影響で中止となり、中止決定の発表がリーグ側の対応により試合当日となるドタバタもあった。

 大阪は親会社NTTの方針を受けて今季限りでの活動規模縮小が決まり、来季はディヴィジョン3での活動が見込まれている。現在のチームによるディヴィジョン1での最後のプレー機会だったが、前節ホーム最終戦の静岡戦に続く試合中止で、思わぬ形での終焉となった。

 なお、最下位は2勝14敗のグリーンロケッツで、2週間後に始まる入れ替え戦に臨み、ディヴィジョン2で2位に入った三重ホンダヒートと対戦する。入れ替え戦進出のもう1チームは10位または11位チームで、中止になったブラックラムズとハリケーンズ戦の勝点の扱いにより決定される。

 

1部昇格の花園SOクーパー選手、「来季へのスタート」

 ディヴィジョン2では昇格を決める順位決定戦が行われ、花園近鉄ライナーズが三菱重工相模原ダイナボアーズに34-22で勝ってディヴィジョン優勝を決め、1部自動昇格を手に入れた。

 花園はレギュラーシーズンでは8勝2敗の2位で終了していたが、その2敗を喫した相手がレギュラーシーズンを1位で終えた相模原。1月と3月の対戦ではいずれも敗れていたが、「その都度、学んで修正できた」と花園FL野中翔平キャプテンは振り返り、今季3度目となった今回の対戦で勝利を収めた。

花園はLOサナイラ・ワクァ選手が前半5分の先制を含めて前半のうちに2トライを挙げて、WTB片岡涼亮選手も走りを活かしてハーフタイムまでに2トライをマーク。

 相模原のWTBタウモハパイ ホネティ選手とCTBマイケル・リトル選手に前半半ばに5点ずつを返され、後半半ばにも1トライ1コンバージョンを決められて27-20と7点差に詰め寄られたが、花園は後半28分にSOクウェイド・クーパー選手がトライとコンバージョンで7点を加えて、34-22で勝利を手にした。

クーパー選手は、「今季初戦で三菱に負けて『シーズン通して、しっかりビルドアップしたい。自分たちのアイデンティティを確立するシーズンになる』と言ったことを覚えているが、それができて、選手スタッフ全員が成長して、今ここにいる。試合前にも、いつも通りのプレーをすればそれがスコアにつながると話していた。だが、これが旅の終わりではない。来季へのスタートだ」と述べた。

クーパー選手は、この日の14得点で総得点を80(9トライ、32コンバージョン、2PG)として2部の最多得点者に。トライ数では片岡選手とワクァ選手が11トライずつを挙げて1位タイとなった。

 花園に敗れた相模原は3位で終了。2位の三重とともに1部との入れ替え戦(5月20-22、27-28日)に挑み、1部の10位または11位チームと対戦する(対戦相手は後日決定)。

4位は日野レッドドルフィンズ、5位は釜石シーウェイブス、6位はスカイアクティブズ広島となり、日野と釜石は2部残留。広島は入れ替え戦(5月21、28日)でディヴィジョン3で2位に入った清水建設江東ブルーシャークスと対戦する。

3部優勝は豊田自動織機シャトルズ愛知で、8日の順位決定戦で宗像サニックスブルースに55-29と勝利して2部自動昇格を決めた。

 シャトルズの齊藤大朗選手は8試合10トライで3部の最多トライゲッター。得点ではブルーシャークスのコンラッド・バンワイク選手が8試合で100ポイント(6トライ、17コンバージョン、12PG)をあげて1位となった。