セブンズ日本代表のサイモン・エイモー新テクニカル・ディレクター(TD)は、2024年パリ・オリンピックでメダル獲得を目指す男女の両チームの強化という新たな任務に心を躍らせている。

2016年リオデジャネイロ・オリンピックでヘッドコーチとして男子英国代表を銀メダル獲得に導いたロンドン出身の42歳は、オンラインで行われた会見で、日本代表の男女両チームについて触れ、「経験は浅いが非常に多くの可能性を秘めている。自分の経験を活かして、日本がメダルを組特することを助けていく」と語り、日本選手のプレーの向上と可能性を伸ばすことで目標実現に導きたいと意気込みを口にした。

男子はリオデジャネイロ五輪では4位に入る活躍も、昨夏の東京五輪では11位。昨年11月には、ラグビーワールドカップセブンズ2022のアジア予選を兼ねたアジアセブンズシリーズ準決勝で韓国に敗れて、初めて世界大会出場を逃した。その直後に始まったHSBCワールドシリーズでも第1戦は12位、第2戦は11位と下位に低迷している。

一方の女子は、リオ五輪で10位、東京五輪では12位で順位を上げることはできなかったが、アジアセブンズシリーズには優勝してワールドカップ出場権を獲得した。

その予選を見て、ヘッド・オブ・イングランドセブンズも務めたエイモーTDは、「女子のスタンダードはとても良かった。男子は韓国戦という大一番で経験不足が出た。だが、いくつかのエリアを改善できればもっとずっと良くなる」と話した。

エイモーTDは、経験の浅い点を男女共通の課題に挙げ、その上でワールドシリーズに参戦できていない女子には「練習はよくできているので、試合の機会を作りたい」とした。一方の男子については、「学び続けることが重要」で、経験不足克服へ一緒に練習しプレーを重ねるなど時間が必要だと語った。

昨年末の就任発表以降、すでに男子チームの梅田紘一ヘッドコーチ代行や女子チームの鈴木貴士ヘッドコーチと連日のようにオンラインでミーティングを重ねてきたことを明かした。エイモーTDから多くを吸収しようという二人のコーチの意識の高さを喜んでいる。

今回、年明けの国内合宿を経て1月21~23日スペインのマラガで行われるHSBCワールドラグビーセブンズシリーズ参戦を前にスペインで調整する男子チームに、エイモーTDは現地で合流。1月28~30日に控えるセビリアでのシリーズ第4戦と合わせて、チームに帯同して現場の指導を支える。

日本代表新TDは、「ワールドシリーズは非常にタフな大会で、他のチームには経験豊富な選手が揃っているが、我々にはタレントがいて、いいポテンシャルがある。どんな試合からも学び続けなることが必要だ。それを今回のスペインでやりたい」と話している。

 

日本独自のスタイル確立へ

エイモーTDは、現役時代にはセブンズのイングランド代表で主将も務め、2004年ワールドラグビー年間最優秀セブンズ選手賞を受賞した。現役引退後は、セブンズのイングランド女子代表ヘッドコーチを率いた経験もあり、ヘッド・オブ・イングランドセブンズを務めた間には、男子代表がHSBCワールドラグビーセブンズシリーズ2016-2017大会で総合2位、2018年ワールドカップセブンズ準優勝を遂げるなどの好成績を残している。

日本文化を愛し、会見では学習中だという日本語で初心表明のスピーチをしたエイモーTDは、「名誉、尊敬、努力」の3つの日本語を挙げ、それらがセブンズにとっても重要な文化であると言う。

「私はセブンズが好きで情熱を注いでいる。日本ラグビーの発展を手伝って、子どもたちが刺激を受けてラグビーを始めるようになれば素晴らしい。日本には才能のある選手がたくさんいて、多くの可能性を感じているので、もっと良くなるように手助けをしたい。男子も女子も素晴らしいセブンズチームになれると信じている」と語る。

日本では男子には女子のようなセブンズの常設大会がなく、ほとんどの選手が15人制のチームに所属して活動しており、代表招集の難しさもある。セブンズ・ナショナルチームディレクターの徳永剛氏や日本ラグビー協会とともに対策を図りたいとしている。

「長期的には、いかに選手を揃えていくか。徳永さんやJRFUとともに検討していかなければならない。タレントはいるので、それはセブンズにも15人制にとっても良いことだ」とエイモーTD。

「だが、コンディショニングでは7人制は15人制とはまったく異なるので、選手をフィットさせてチームの調和を持たせることが大事になる。そして同時に、フィジーやニュージーランド、南アフリカやイングランドの真似などではない、日本独自のスタイルを作ることが重要だ」と語った。

 新たなブレインを得た日本のセブンズ強化に注目だ。

 

 

男子セブンズ日本代表スペイン遠征メンバー:

石井勇輝(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安)

石田大河(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安)

植村陽彦(筑波大学)

奥平 湧(関西学院大学)

加納遼大(明治安田生命ホーリーズ)

副島亀里ララボウラティアナラ(JRFU)

津岡翔太郎(JRFU/コカ・コーラボトラーズジャパン)

朝長 駿(日野レッドドルフィンズ)

中川和真(横浜キヤノンイーグルス)

野口宜裕(セコムラガッツ)

林 大成(JRFU)

福祉萌起(日野レッドドルフィンズ)

シタレキタウファ・マキシ(丸和運輸機関Az-MOMOTARO’S)

宮上 廉(東芝ブレイブルーパス東京)

吉澤雅樹(立教大学)