11月7日のウェールズ代表、14日のスコットランド代表に連敗して臨んだツアー最終戦で、サクラフィフティーンこと、女子日本代表は世界ランキング7位のアイルランドと対戦。コロナ禍の影響を受けて2年ぶりとなったテストシリーズでの初勝利を目指して臨んだが、RDSアリーナに駆け付けた地元の熱狂的なファンが大声援を送るなか、14人で反撃に出たアイルランドに屈する形となった。

 アイルランドが早々にPGで先制した後、日本は17分にCTB古田真菜選手がトライを決めて5-3と逆転。その後、29分にアイルランドNO8ハンナ・オコナー選手が危険なタックルでレッドカードを受けて退場となり、数的優位を得た日本は37分にもFL齊藤聖奈選手がラックから持ち込んで5点を加えて、前半を12-3で折り返した。

 ところが、ハーフタイムを挟んで流れが変わる。推進力を強めて反撃に出たアイルランドに押し込まれた日本は後半4分、自陣ゴール前からキックで切り抜けようとしたところを相手にチャージされ、インゴールでFLキアラ・グリフィン選手に押さえられてトライを許した。

 これで勢いづいたアイルランドはさらに攻勢を強め、日本は相手のプレッシャーに押されてラインアウトでボールを失い、ペナルティを取られるなど苦しい時間が続いた。そして後半15分には、ラインアウトから押し込まれてグリフィン選手に連続トライを許して逆転され、SOエンヤ・ブリーン選手のコンバージョンも決まって、アイルランドが15-12のリードを奪った。

 日本は苦戦しながらも、終盤ようやく速いテンポの攻撃を仕掛けて敵陣に22メートルライン内に攻め込み、相手のペナルティからフェーズを重ねてゴール前まで攻め込んだ。しかし、粘るアイルランドを前にペナルティを犯してトライチャンスを逃した。その後も諦めずに攻撃を仕掛けて攻め込んだが、アイルランドのハードな守備を前に得点することはできなかった。日本は12-15で試合を終了。今遠征は3戦全敗で終えることになった。

 女子日本代表キャプテンの南早紀選手は、「悔しい。いい試合をしても勝ち切れないのが自分たちの弱さ。最後まで勝ち切ることが必要」と話し、後半のプレーについては「初戦のウェールズ戦から後半リズムに乗り切れない課題があった。それを遠征中に修正できなかった」と、遠征中に続いた傾向が繰り返されたと話した。

 南選手はまた、アイルランド、スコットランド、ウェールズというシックスネーションズに出場しているチームとの対戦で「彼女たちは試合数が多く、経験値が違う」と言及。その差を埋めるために、「(日本)国内でも高いスタンダードでプレーすることが求められている」と話した。

 NO8の永井彩乃選手も、「3試合すべて、相手のスコアから始まっている。試合の入りから相手を圧倒する気持ちや力がまだまだだと思う。スコットランド戦、アイルランド戦は後半の入りで相手に流れを持って行かれた」と悔やんだ。

 

現在地を確認、差を埋める

 チームを率いるレスリー・マッケンジーヘッドコーチも、数的優位の状態で約50分間を戦い、リードを奪いながら相手に押された流れを修正できなかった点について、シックスネーションズで厳しい戦いを繰り返す相手に対して、日本の選手の「経験不足」を指摘した。

 今回の日本チームにはイングランドのプレミア15のエクセター・チーフスでプレーするPR加藤幸子選手とCTB小林花奈子選手、ウスター・ウォリアーズ所属のSO山本実選手を擁したが、日本にはクラブレベルで戦える女子15人制のリーグがなく、ほとんどの選手がセブンズ主体で活動している。その中で、サクラフィフティーンは定期的に合宿を実施して強化を重ねているが、テストマッチの機会は限られており、日常的に15人制の試合中での失敗から学ぶ機会は限られている。

 今回の遠征を通して「選手たちは現在地を確認して差を実感した。その差を埋めるにはハードな試合が必要。テストマッチが増えることを望んでいる」と、女子日本代表指揮官は言う。

 加藤選手は、今回対戦したシックスネーション出場の3か国について「ゲームの進め方とレフェリーとのコミュニケーションの取り方が優れている。ワールドカップまで1年の状況で強豪3か国と試合ができたのは良かった」と話した。

一方で、マッケンジーヘッドコーチは、今回の遠征が来年の本大会のシミュレーションになったことにも触れて、「今回のツアーでは1週ごとに進歩を把握できた。ワールドカップのプール戦を想定して、同じタイムラインで活動できたことはプラスで、チームにとって学びの機会になった」と述べた。

来年10月に開幕するワールドカップまで1年を切って、チームは新たな戦力も確認。今遠征3戦全てに先発したHO永田虹歩選手やアイルランド戦で5番を付けたLO吉村乙華選手らが初キャップを獲得した。

 初戦の交代出場のち2試合に先発してキャップ数を5に伸ばした小林選手は、「テストマッチをすることで、自分たちがどこにいるか知ることができた。種をもらったので花を咲かすのはワールドカップ。各々で課題が見つかったと思うので、それに対して努力をしつづければ、来年のワールドカップではいい結果が出ると思う」と前を向いた。

 

 

女子日本代表アイルランド戦試合メンバー:

1 加藤幸子*(エクセター・チーフス)

2 永田虹歩(国際武道大学女子ラグビー部) 17(後半34分)

3 ラベマイまこと(横河武蔵野アルテミスターズ)19(後半4分)

4 玉井希絵(MIE WOMEN’S RFC PEARLS)

5 吉村乙華(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)18(後半0分)

6 齊藤聖奈(MIE WOMEN’S RFC PEARLS)

7 鈴木実沙紀(東京山九フェニックス) 21(後半19分)

8 永井彩乃(YOKOHAMA TKM) 20(後半10分)

9 津久井 萌(横河武蔵野アルテミスターズ)22(後半0分)

10 大塚朱紗(RKUグレース) 23(後半15分)

11 今釘小町(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

12 小林花奈子(エクセター・チーフス)

13 古田真菜(東京山九フェニックス)

14 名倉ひなの(横河武蔵野アルテミスターズ)

15 庵奥里愛(MIE WOMEN’S RFC PEARLS)

リザーブ

16 小牧日菜多(日本体育大学ラグビー部女子)

17 小鍛治 歩(東京山九フェニックス)

18 北野和子(RKUグレース)

19 南 早紀(横河武蔵野アルテミスターズ)

20 長田いろは(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

21 伊藤優希(MIE WOMEN’S RFC PEARLS)

22 阿部 恵(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

23 山本 実(ウスター・ウォリアーズ)

注:* はゲームキャプテン