来年のワールドカップ出場へ最終予選を控えているスコットランドとの対戦へ、日本は5-23で敗れた先週末のウェールズ戦からこの試合が代表3戦目のSO大塚朱紗選手、エクセター・チーフスでプレーするPR加藤幸子選手とCTB小林花奈子選手の2人の海外組など5人を変更して臨んだ。しかし、前半半ばに退場者を出し、大半を14人で戦う苦しい状況になった。

 前半12分のWTBローナ・ロイド選手の先制で5点を追いかけていた日本は、前半20分にLO佐藤優奈選手が危険なタックルで一発退場。直後にはスコットランドにラインアウトからモールで押し込まれて2トライ目を許した。

 しかし、ワールドカップ出場が決まっているサクラフィフティーンは、そこから粘りとスピード感のある攻撃を展開。前半34分にPKからゴール前まで攻め込み、最後はラックから先週代表デビューしたばかりのHO永田虹歩選手がラックから持ち出してトライをマーク。さらに前半終了間際にはPR加藤幸子選手が抑えて、日本は数的不利になりながらもトライ2本とコンバージョン1本を返し、前半を12-10で折り返した。

 ところが後半に入ると、ギアを入れ直したスコットランドが反撃。左右にワイドな攻撃を展開して開始早々にWTBメーガン・ガフニー選手とFBクロエ・ロリー選手に、それぞれトライを決められて24-12とリードを奪われた。

勢いに乗るスコットランドはその後も多彩な攻撃を展開。後半22分にモールで押し込むと、後方から走り込んだCTBリサ・トムソン選手がSOヘレン・ネルソン選手からパスを受けてインゴールに飛び込んだ。さらにその10分後には、ロイド選手がこの日2本目となるトライを決めて、36-12で勝利を手にした。日本は2019年11月の対戦に続くスコットランド戦連勝とはならなかった。

 

スコットランド、RWC2021最終予選へ向けて好感触

 9月の欧州予選でスペイン、アイルランドに連勝してワールドカップ最終予選を控えて強化に余念がないスコットランドのブライアン・イーソン監督は、前半半ば以降のプレーについて「レッドカード後の対応には課題がある。日本に40分を過ぎても攻め込まれた。前半の最後の20分は気が緩んだところがあったかもしれない。ただ、後半はとても良かった。攻撃のバリエーションが増えている」と振り返った。

 前回の対戦からの日本の変化についても、「日本は良かったと思う。スピードのあるユニークなスタイルで、セットプレーで手を焼いた。ラインアウトやスクラムも前回の対戦から成長していると感じた」と認めた。また、「2年前とは関係なく、今日は勝たなければいけないと位置付けていた。これでスペイン、アイルランド、日本に勝っていい流れを作ることができた」と満足そうな表情を見せた。

 キャプテンのFLレイチェル・マルコム選手も、「うまくいかない時間に崩れることもあったが、練習でやってきたことを出せた。これをいかに継続するかだと思う。テストマッチを続けているので、試合ごとにゲームマネジメントができている。今日の後半のように戦えればと思っている」と手ごたえを口にした。

 

日本代表HC、選手のやり方を貫くプレーを評価

 マルコム選手が指摘したテストマッチの重要性は、日本のレスリー・マッケンジーヘッドコーチも痛感している点だ。コロナ禍の影響を受けて、この2年間は国際試合の機会がなかった。一方、欧州では女子シックスネーションズなど国際舞台への復帰は日本より早かった。

 マッケンジー日本代表ヘッドコーチは、「選手たちは経験を持っていないと感じたので、プレッシャーを受けた中で戦えるように選手を選んだ」とこの日のメンバー構成を説明。先発組で5キャップ未満の選手は8人で、先週のウェールズ戦より2人多い。後半の交代出場組では、この試合で代表デビューを遂げたPR小牧日菜多選手を含め3人だった。

 元カナダ代表FWで活躍した指揮官は、「(退場で)一人少なくなって、選手たちは色を出した。反応は良かったし、激しさややり続けることも出していた。少し苦労したが、スコットランド相手に自分たちのやり方を貫いていた。テストマッチで何が起きるか、選手たちは肌で感じたと思う」と評価した。

 一方で、日本はゴール前まで攻め込んでショットで点差を詰めることができる場面でトライを選択して得点機会を逃し、前半終了間際にはラインブレークからインゴールまで運びながらグラウディングできずトライを逃す場面もあるなど、詰めの甘さも見られた。

「決めていたら、チームにモメンタムを起こしていた」と、そのトライを逃したFL齊藤聖奈選手は悔しがった。

PR南早紀キャプテンも、「後半、相手が就かれている時にさらにテンポを上げてトライを取ることができなかった。重さを活かして前に出てくる相手に対して、受けるのではなく、もっと前へ出続けなければいけない」と課題を挙げた。

マッケンジー指揮官は、「感覚的なものが足りない。試合で学ばないとならない。テストマッチの試合数を増やすことが必要」と説いた。

 サクラフィフティーンは今遠征2連敗となったが、齊藤選手は「今回の遠征で自分たちの成長を感じることができている。アウェイでの戦い方にも慣れてきた。最後のアイルランド戦(20日、ダブリン)で自分たちの存在を証明したい」と話した。

 

 

女子日本代表スコットランド代表戦試合メンバー:

1 南 早紀*(横河武蔵野アルテミスターズ) 18(後半5分)

2 永田虹歩(国際武道大学女子ラグビー部)  17(後半19分)

3 加藤幸子(エクセター・チーフス)

4 玉井希絵(MIE WOMEN’S RFC PEARLS) 19(後半9分)

5 佐藤優奈(東京山九フェニックス)

6 齊藤聖奈(MIE WOMEN’S RFC PEARLS)

7 長田いろは(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA) 20(後半9分)

8 永井彩乃(YOKOHAMA TKM)  16(後半5分)

9 阿部 恵(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA) 21(後半19分)

10 大塚朱紗(RKUグレース)

11 名倉ひなの(横河武蔵野アルテミスターズ)

12 小林花奈子(エクセター・チーフス)

13 古田真菜(東京山九フェニックス)

14 谷口令子(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA) 23(後半16分)

15 平山 愛(自衛隊体育学校)

リザーブ

16 北野和子(RKUグレース)

17 小鍛治 歩(東京山九フェニックス)

18 小牧日菜多(日本値アイク大学ラグビー部女子)

19 櫻井綾乃(横河武蔵野アルテミスターズ) 22(交替、後半17分)

20 鈴木実沙紀(東京山九フェニックス)

21 津久井 萌(横河武蔵野アルテミスターズ)

22 山本 実(ウスター・ウォリアーズ)

23 伊藤優希(MIE WOMEN’S RFC PEARLS)

注:* はキャプテン