今年の1月で、私がラグビーを引退して40年になります。私にとって最後の国際試合となったスコットランド戦のわずか数週間後、チームドクターから、ランカシャーで行われたカウンティ・チャンピオンシップの決勝戦(勝利を飾った)で脳震盪を起こした私に、長期的な健康のためラグビープレーヤーとしてのキャリアに終止符を打つべきだとアドバイスされたのです。現在のゲームは、40年前のそれとは比べ物になりません。プレーヤーの父として、祖父として、そしてファンとして、私はラグビーが進歩していることを歓迎しています。しかし、ラグビーが適応し、進化し続けることの必要性は、これまで以上に重要なことです。
私が引退して以来、ラグビーはプレーヤーの健康・ウェルビーングを守るために大きな進歩を遂げ、常に科学と確固たる証拠に基づいて行動してきました。ラグビーは、エリートやコミュニティーレベルで頭部衝突や脳震盪を特定・管理・予防するために、頭部外傷評価、段階的競技復帰、ウォーミングアップ傷害予防プログラム「Activate」などの新しいプロトコルを導入し、スポーツ界をリードしてきました。ここ数ヶ月間、ワールドラグビーは、ニュージーランドのオタゴ大学と提携し、男女のコミュニティーレベルのゲームや年齢別レベルのゲームにおける脳震盪のリスクについて、過去最大の研究を開始しました。私たちは、プレーヤーウェルフェアの向上を目指し、新しい技術や競技規則の試験的ルール導入に投資しています。しかし、私たちは立ち止まることを許されません。
ワールドラグビーの会長として、私はラグビーが世界中のプレーヤーの人生に素晴らしい恩恵をもたらしていることを目の当たりにしています。ラグビーは、自信をつけ、チームのために献身的に働くことがどういうことかを理解するのに役立ちます。身体的にも精神的にも極めて大きなメリットをもたらしてくれます。そして、生涯にわたる親しい友人関係やラグビーファミリーのコミュニティを作ります。世界的なパンデミック収束後、このようなベネフィットはさらに重要性を増すことでしょう。
他のスポーツと同様、ラグビーはリスクのないゲームではありません。しかし、ラグビーはプレーヤーを大切にし、特に脳震盪や頭部の損傷については優先的に取り組んでいるスポーツです。そうすることにより、親御さんが安心して子供たちをプレーさせることができるようになるからです。
本日、ワールドラグビーは、新たな戦略プランに沿って、私たちが愛するゲームを守り、成長させるためのプレーヤーウェルフェア戦略の次の段階について発表します。この戦略を支えるのは、プレーヤーウェルフェアの問題に取り組む中で、決して立ち止まらないという私自身のコミットメントです。私たちの野心は、ラグビーがプレーヤーウェルフェアにおいて世界で最も革新的なスポーツになるということです。私たちは、6項目行動計画を実行することで、その実現を目指します。
まず、元プレーヤーへのサポートです。最近、プロラグビー引退後の生活に適応するために苦労していることを打ち明けてくれたプレーヤーもいます。私とワールドラグビーの仲間たちは、このような声に耳を傾けてきました。加盟協会や国際ラグビー選手会(IRP)と協力し、元プレーヤーやその家族が心配事を抱えたときに、黙って苦しんだり悩んだりする必要がないようにしたいと考えています。
2つ目は、あらゆるレベルのラグビーにおけるプレーヤーウェルフェア、特に頭部外傷の影響に関する先端科学への投資を継続することです。年間研究予算を2倍に増額し、より多くの科学機関と協力してエビデンスへの理解を深めていきます。また、アイトラッキング技術やスマートマウスガードなど、頭部衝突をリアルタイムで監視するための革新的な技術を導入していきます。
3つ目は、プレーヤーウェルフェアを第一に考え、競技規則の見直しと更新を継続することです。 8月1日からは、グローバルレベルでいくつかの試験的ルール変更を導入します。この中には、国内のパイロットテストで効果を上げている「50:22ルール」などが含まれます。このルール変更は、ピッチ上により多くのスペースを作り、ディフェンスラインのスピードを下げることで、接触の頻度と強度を減らすことを目的としています。
4つ目は、ラグビーの競技人口を増やすための最大のチャンスである、女子ラグビーに特化したアプローチにコミットすることです。私たちのアプローチは、データと科学に基づくものであり、単に男子ラグビーでうまくいっていることを踏襲するのではなく、あらゆるレベルにおいて女性のためのラグビーをスーパーチャージさせるという目標を目指します。
5つ目は、脳の健康とラグビーに関する最新の情報やリソースを提供する専用アプリやウェブサイト、そして予防的な「タックルレディ」や「アクティベート」プログラムなど、頭部損傷や健康に関するコミュニティーやプロゲームでの教育に力を入れていくことです。
最後になりましたが、私たちはラグビーファミリーの声に耳を傾け、関わり続け、そして耳にしたことに対して行動を起こしていきます。私たちは、現役プレーヤーや元プレーヤー、そして「プログレッシブラグビー」のような団体と充実した話し合いを行ってきました。私たちは皆、ラグビーに対する同じ愛情を抱き、ラグビーの将来を担保していくための最良の方法について、皆さんの意見を聞きたいと思っています。私たちのゲームの現在と将来の正当性と成長を確保するため、私たちは耳を傾け続けます。
新たにチーフ・エグゼクティブに任命されたアラン・ギルピン氏と私は、今後数ヶ月間、いただいたご意見を踏まえた一連の決定事項について発表を行う予定です。
最後に、本日、エリートゲームにおける第三者脳震盪コンサルタントのプログラムを支援する大規模な資金援助について発表します。コンサルタントは、脳震盪を起こした後、6段階の段階的競技復帰のプロセスを経てプレーに復帰しようとするプレーヤーのチームドクターが、その適性を評価する際のサポートを行います。この独立した専門家は、エリートプレーヤーがいつ競技に復帰するのが適切かを判断し、個々のプレーヤーに適したケアプロセスを提供することができます。
私はこれまで、プレーヤー、コーチ、管理者、ツアーマネージャー、親、そしてファンとして活動してきました。私の目標は、世界中の親御さんがラグビーを見て、自分の息子や娘にプレーさせたいと思うようになることです。それがこの戦略の焦点です。そして、この会話はここで終わりではありません。
サー・ビル・ボーモントはワールドラグビー会長であり、ブリティッシュ・アンド・アイリッシュライオンズの元キャプテンです。