スコットランドでのブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦から一週間後、世界ランキング4位のアイルランドと敵地で対戦した日本代表は、持ち味の速いテンポのラグビーを披露。試合開始早々から後半半ばまでに4度のリードを奪いながらひっくり返されるシーソーゲームを展開した。
前半4分にSO田村優選手のPGで先制。クリス・ファレル選手のトライですぐに逆転されても、11分にはラインアウトのモールで攻め込んでリーチ選手が押さえて10-7に。26分にCTBスチュアート・マクロスキー選手のトライで2点差のリードを奪われても、36分には田村選手のキックパスを左サイドでWTBシオサイア・フィフィタ選手を受けてつなぎ、最後はCTBラファエレティモシー選手がラインを超えた。
アイルランドは前半終了直前にFWで押し込んで19-17と2点差リードでハーフタイムを迎えたが、日本は後半開始早々にフィフィタ選手が田村選手のキックパスに反応してトライ。田村選手のコンバージョンも決まって24-19とリードを奪った。
だが、その後はアイルランドに4分間でトライを2本立て続けに決められて33-24とされ、日本はSH齋藤直人選手のトライと田村選手のコンバージョンで2点差に詰め寄ったものの、後半はペナルティが増え、そのうちの2つを後半半ばにアイルランドに得点に結びつけられて2本のPGで6点を献上し、ホームでの勝率85%を誇る相手に突き放された。
学ぶ姿勢
試合直前に先発予定だったNO8姫野和樹選手が負傷し、後半にはFB松島幸太朗選手を負傷で欠くというアクシデントに見舞われたが、急遽リザーブから先発に入ったNO8テビタ・タタフ選手が対応。2戦連続で先発したフィフィタ選手、初先発の齋藤選手の代表初トライなど、若手も物おじしないプレーを披露した。チームとして10-28で敗れたライオンズ戦から攻撃のテンポを上げ、キックを効果的に使うなど、改善と変化を見せた。
「勝てる試合を落とした」と残念がるリーチ主将は、「約2年間試合の機会がなく、8週間という短い準備とサンウルブズ戦、ライオンズ戦の2試合で臨んだが、アイルランドというティア1のチームとこういう試合をすることができた。チームが前進していると感じてとても誇りに思う」と話した。
今回の遠征でのチームの成長を訊かれて、日本代表キャプテンは「学ぶ姿勢」を挙げ、2019年大会から引き継がれたリーダーグループやコーチ陣がいることで、「前回(のチームで)学んだことと、今回新しく取り入れたことをチームに落とし込むスキルがすごく高い。それでよいトランジションができた」と指摘。さらに、「新しい選手も出てきた」と若手の台頭を歓迎した。
今回の遠征で代表デビューを遂げたフィフィタ選手は、ミスが目立ったライオンズ戦から修正。この試合では落ち着いたプレーを見せた。
「この一週間、たくさん練習を積んで学んできた。ライオンズ戦よりは少しは成長しているのではないかと思う。練習で学んだ細かいスキルをもっと生かしたい。秋のテストマッチへ、もっとたくさん学んで成長したい」と意欲を示した。
一方、ライオンズ戦の途中出場でインパクトを残し、この日は9番で後半27分までプレーした齋藤選手は、自身が犯したペナルティ2つとダイレクトタッチキック1つに言及して、「特にダイレクトタッチのところは自分たちに流れがある中で、その後失点している。あのミスから完全に流れを持っていかれた」として、「1つのミスから流れが変わり、勝敗を左右することを学んだ」と反省しきりだった。
ジョセフHC「正しい方向に向かっている」
ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチは、「アイルランドはホームで84~85%の勝率を誇るチームで、ここで勝つことが簡単なものでないことは承知していた。だが、準備には自信を持てたし、実際に選手たちが見せたプレーを誇りに思う」と話した。
8強入りした2019年ラグビーワールドカップ後、初のテストマッチ2連戦の遠征で勝利を手にすることができなかったが、日本代表指揮官は、「この2年間、ほとんど活動できていなかった我々にとってはいい兆候だ。新しい選手も取り込んで、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズとアイルランドという非常に良いチームを相手に良いプレーができた。レフェリーの判定や細かな部分という、いくつかの重要な瞬間のところで敗れた。修正は必要だが、我々は正しい方向に向かっている」と振り返った。
さらに、「我々にとって重要なのは、我々よりも力が上のチームとより多く対戦して多くを学ぶこと」と話すジョセフヘッドコーチは、「長い間試合ができなかったことを見ても、今回の遠征は良い出発点だ。クオリティの高い2チームと試合することができた。今回の遠征を見直して、次の年終わりの遠征に反映させていきたい」と語った。